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【僕たちのディベート甲子園2018】ツイッターで見るジャッジの頭の中~2018年ディベート甲子園中学決勝編~出水中学VS開成中(2018/8/9追記)

先日閉幕した第23回ディベート甲子園。ディベートの醍醐味の1つに同じ試合を見ていても人によって判定で異なるところがある。というのがあります。不平等じゃないかと思う人もいるかもしれませんが、教育としてはまさにここがポイントでして、どこで判定が割れる要素があったのかを知る事でより次のステージに上がっていけるというのがあります。

ネット上では様々なディベーターが中高の決勝についてご自身の感想や反応を書いておられます。しかし、ツイッターなどはどうしてもTLで流れてしまいます。それは勿体ないので、Art of Argumentでは、ツイッターで流れた現役ジャッジ達の中高決勝に関する判定や感想などを取り上げてみました。

まず、まだ試合を見ていないよという人は下記よりご覧になる事ができますので、解説を見る前にぜひご覧いただき、まずはご自身で判定を出してみてください。

第23回ディベート甲子園 中学の部 決勝
第23回ディベート甲子園 中学決勝 結果発表

なお、はじめてディベートをご覧になるという方は、下記の記事をご参照の上でご覧になることをお勧めします。

ディベート観戦のススメ~試合に出ずにディベート甲子園を楽しむには~

ディベート甲子園中学決勝について
肯定側:熊本県立出水中 VS 否定側:開成中学

No.1 うに丼県2018村さん
公開アカウントとなります。試合を見終わった後に丁寧に判定をまとめてくれているので、試合後の判定を聞くようなツイートになります。

総論
・もしこの試合の判定を出すとすれば個人的には否定側に投票します。ただ、肯定側に投票する理由も十分にあるので実際の結果は妥当。 判断のポイントは、①メリットへのTA成立有無、と②DAの発生量。「M<TAとは評価せず」かつ、「DAを小さい」と評価した方は肯定側に投票するように思います。

デメリットへの評価
・デメリットはわかりやすい。結論としては「売上が減って困る店もあるのかな」程度で、残りはするが当初よりは削られている。 否定側は現状でも利益が上がる店は禁煙に変えていく、とは言うが、そもそもデメリットで対象にしているお店がそうした行動に取り組んでいるとまでは観察の資料で言えてない。

・そうすると1ARの、「結局営業形態を変えるので、倒産までは至らない」という主張は一定認められ、対する否定側からの再反駁も上記以外にないので、否定側の発生過程1の資料ほどにガタガタになるとは想定し辛い。ただ、1ARの資料中でも、客数が減ったお店があることも否定してないので残る部分はある

・発生過程2の議論は、そもそもお酒だって20歳未満の人には提供できないなどのルールがすでにある中で、営業での実害も大きくなさそうなタバコの全面禁煙で営業の自由を強調すべき特段の理由付けも無いように思われ、無条件で優先すべきものではなく、メリットとの比較で判断すべきもの、との評価

・メリットへの評価
・結論から言えば、ターンアラウンドが成立すると評価し、また被害を受ける可能性の高い子供を優先的に保護するべき、という否定側の主張を採用しています。概ね否定側第二反駁の主張に沿った評価です。

・1ARでスコットランドの例が提出され、また2ARはオーソリティ比較があるものの、結局1NRの2枚めとしか比較しておらず、①2NRが主張した、日本の特殊性(屋外禁煙の厳しさ)を直接否定してない、②アメリカで幼児の被害が増えた的なファクトにも触れてない、という2点で2NRの主張を上回らないと判断。

・ということで日本では、全面禁煙でかえって子どもが被害を受ける可能性が高まると判断され、避ける手段が存在する(が実行しないこともある)大人よりも優先して保護すべき、という2NRの主張を採用。2ARも「お客を守るべき」と主張していたが、否定側が主張した子供と比較した優位性づけはできていない

・ということで薄く残ったDAと、M=<TAと評価して否定側に入れる、というのが自身の投票理由構成です。

・ただ、DAがそもそものMを上回っている感じは全くなかったので、TAの評価が低い・不成立と判断すれば肯定側に投票できるように思います。 実は試合の中で、そのように判断してもらいやすい説明を行うための材料もあった気がします。

試合への総合的なコメント
・結局、TAの1枚目をどう攻略するかだと思いますが、必要な材料は肯定側からも出ていたように見えます。 ただ、それは1つ2つのダウトで済むようなものでもないので、それこそ2NRがここにかけたのと同じくらい時間をかけて対応しないと、TA全体の評価はややジャッジ任せになってしまうかなと。

・互いの全力を尽くした議論の結果、不確定要素が残るのは、仕方がない面もあります。 ただこの試合、双方から「このように解釈すべき」などの考え方が提示され、自分たちに投票してもらえるよう説明を尽くそうとする姿勢が強く印象に残りました。 その結果の接戦というのは、非常に納得感があります。

・重要な争点となった議論について、どのような理由付けでの解釈を提示するかは、双方にさらなる工夫の余地があったかもしれません。また、否定側はデメリットをもう少し強くすることもできそうでした。ただ、そのくらいの(細かい)コメントくらいしかありません。とても良い試合でした


No.2 鍵垢のため匿名(ライブ中継的判定)
鍵垢のため匿名となります。映像を見ながらのライブ解説となりますので、リアルタイムでジャッジがどんな事を考えているのかが臨場感あふれる感じです。

No.1.鍵垢のため匿名(ライブ中継的判定)
・噂の中学決勝についていけるコンディションかは微妙だが、昨日から気になってたし見よう。
・村中は何の意味があって読まれるんだろう
・なんで小売市場?
・重要性2、面白いけれどやっぱり、前提にあるのは喫煙行為が国家のパターナリスティックな介入が必要なほど害の大きい行為であって、無制限に売っている今がおかしいくらいのスタンスがあるんだろうな
・T/Aとるか、とらんか
・とる
・いい試合だった
・日本は屋外の規制厳しいが押し所やね!って押されたらとる。
・決勝でベストパフォーマンスに近いものを実現できるのは霊格が主人公。
・affについては重要性2枚目の前提となる価値観を示しつつ、解決性2枚目から無理くり喫煙率低下を蘇らせてアルゼンチンを叩きに行き、T/Aの評価を下げるチャレンジをするくらいしか思い付かない……
・シガーバー経営することが生きがいのオーナーの証言とかを探してこないとダメな気がするわけだが、時間的制約も大きく、見つけても立論に組み込むのはなかなか難しかろうな。
・味わい深い試合だった。中3でこの議論が回せるというのは末恐ろしいな。
・凄いテクニカルな投票理由構成させるタイプの劇薬ディベーターって言うより、しっかりかゆいところに手の届くプレパをやって、それを十全にまわしきる堅実タイプとみた。


No.3匿名アカウントさん
こちらも鍵垢なので、匿名となります。端的に一言で述べられている点が特徴です。

匿名アカウントさん
ディベート甲子園中高の決勝を今更聞いたけど、自分ならどちらもNeg投票。中学の肯定側は解決性やアタックの議論が相手をどう上回っているか丁寧に説明できれば勝機がありそうな試合でした。


NO.4 いちご姫さん
こちらも公開アカウントです。試合に関しての詳細な解説は、いちご姫さんの知り合いの方がblogで書くそうですので、ここでは質問箱で中学決勝に関して、いちご姫さんに寄せられた質問とその回答を一問一答形式で紹介します。
※さっそく、知り合いの方が中学決勝についてblog記事を書かれたので紹介します。(2018/8/9追記)
愚留米の入院日記:第23回ディベート甲子園の感想(1.中学決勝)

中学決勝について
Q:否定側第一反駁について、どう思いますか?
A:破壊力があって素晴らしい反駁でした。変に内因性に触れないところとか、よく分かってますよね。

Q:肯定側第一反駁について、どう思いますか?
A:1NRのプレッシャーに負けじとよく議論できていたと思います。ただ、バランス的にはもう少しデメリットにアタックを打っても良かったかもですね。レベルに高い悩みです。

補足すると、あの試合はターンの試合は成否が問題になっていて、それはそうなのですが、実は、ケースのメタアナリシスを伸ばして、子どもの効果や喫煙以降の影響もここに含まれてるとか言っておけば、そんなに簡単にターンは決まらないと思うのですね(だからやっておけばという話でもある)。

そこで、まぁなんだかんだ言ってもケースがゼロではなく、否定側も認めている危険なタバコについて、禁煙の方向が健康に望ましいという話にしておけば、あとはDAだけで、そこが完全に切れていると、肯定側に入れやすいのではないかなと思った次第です。

No.5 はぐれひさりん純情派さん
公開アカウントです。非常にコンパクトかつ濃密にまとめてくれている講評となります。

はぐれひさりん純情派さん
中学1)自分なら否定側に投票。まずメリットについて、発生は認められる。一方で、解決性へのT/Aについては2NRの比較が上回っており、受動喫煙の量はプラン後の方が減るが、より深刻な子供の受動喫煙増が増えるだろうという主張をとってこの時点で投票が確定。

中学2)デメリットは業態転換などもあり、売上が下がる店はあったとしても深刻な自体に陥る店は少数であろうと判断。営業の自由関連の話については、立論段階からなぜ重要かという説明が薄く、これだけで投票理由は構成しないと評価。

中学3)2ARの泣き所はやはり子供T/Aで、優先的に処理したかったところ。解決性の1,2のエビデンスを丁寧に説明し、「子供についは確実なことは分からないならば、他が確実に救える方をとるべき」というストーリーには持っていけたかも?デメリットが実質的にほぼゼロ、という指摘は素晴らしかったです。


まとめ

毎年素晴らしい試合が行われますが、今年の中学決勝はここ数年の中でも屈指の名試合だったとの声が多くあがっています。ツイッターからでも興奮が感じ取れますね。ぜひ、各判定の違いに着目していただき、ディベートの練習に、教育にご活用いただければと思います。

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