ミシェル・ルグランの回想録『ミシェル・ルグラン自伝』（2015）と『君に捧げるメロディ』（2021）の２冊に登場する楽曲を中心に、監修者・濱田髙志が全30曲のプレイリストに選んだ曲目の解説をこちらに用意しました。本の詳細はこちらをどうぞ　→　https://artespublishing.com/shop/books/86559-237-5/

◉各曲についての覚え書き　　text by 濱田髙志

01. A Paris / Michel Legrand and His Orchestra：from Album『I Love Paris』（1954)
＊ミシェルの出世作からの１曲。曲中の口笛は作曲者フランシス・ルマルクによるもの。

02. In the Still of the Night / Michel Legrand and His Orchestra ：from Album『Cole Porter』（1957)
＊コール・ポーターの楽曲で構成したオーケストラ・アルバムから。曲中、ステファン・グラッペリのヴァイオリンとミシェルの実姉クリスチャンヌらによるコーラスをフィーチャーしている。

03. Round Midnight / Michel Legrand：from Album『Legrand Jazz』（1958)
　ジョン・コルトレーンやハービー・マン、フィル・ウッズらが参加したミシェルの代表作から、マイルス・デイヴィスが参加した楽曲。

04. Sans toi / Corinne Marchand：from EP『Cléo de 5 à 7』（1961)
＊アニエス・ヴァルダ監督作『５時から7時までのクレオ』劇中歌。作詞は監督自身、主人公クレオを演じたコリンヌ・マルシャンによる歌唱曲。彼女はのちに舞台版『シェルブールの雨傘』（1980）でマダム・エミリーを演じている。

05. Chansons D'Angela / Anna Karina：from Album『Une femme est une femme』（1961)
＊ジャン＝リュック・ゴダール監督作『女は女である』劇中歌。ヒロインのアンジェラを演じたアンナ・カリーナによる歌唱。

06. Main Theme / Michel Legrand：from EP『EVA』（1962)
＊ジョセフ・ロージー監督作『エヴァの匂い』のオリジナル・サウンドトラックより、メインテーマ。

07. Di-gue-ding-ding / Michel Legrand and His Orchestra：from Album『Arch-Cords』（1964)
＊ミシェルがフィリップスで録音したオーケストラ・アレンジものの企画盤より。曲中で「Di-gue-ding-ding」と歌っているのはスウィングル・シンガーズのリーダー、ウォード・スウィングル。

08. Le recit de Cassard / Michel Legrand and His Orchestra：from Album『Legrand Cinema』（1967)
＊ジャック・ドゥミ監督作『ローラ』のために書かれ、映画『シェルブールの雨傘』でも流用された楽曲。これは後年ミシェルが自作を中心に録音した映画音楽集からの選曲。

09. I Will Wait for You / Michel Legrand and His Orchestra：from Album『Twenty Songs of the Century』（1974)
＊映画『シェルブールの雨傘』主題曲のセルフ・カヴァー・ヴァージョン。20世紀を代表するポピュラーソングで編んだ企画盤において、敢えて自作をからこの曲を選んだあたりに自信がうかがえる。

10. La vie de Château / Michel Legrand：from Album『Legrand Cinema』（1967)
＊ジャン＝ポール・ラプノー監督作『城の生活』主題曲。こちらは「Le recit de Cassard」同様、ミシェルの映画音楽集からの選曲。

11. Arrivée des Camionneurs / Michel Legrand：from Album『Les Demoiselles de Rochefort』（1967)
＊ジャック・ドゥミ監督作『ロシュフォールの恋人たち』のオリジナル・サウンドトラック盤より国産車のCMでも使用された「キャラバンの到着」。

12. Chanson de Jumelles / Michel Legrand ：from Album『Les Demoiselles de Rochefort』（1967)
＊映画『ロシュフォールの恋人たち』のオリジナル・サウンドトラック盤より「双子姉妹の歌」。映像ではカトリーヌ・ドヌーヴとフランソワーズ・ドルレアックが歌っているように見えるが、実際に歌った吹き替え歌手はアン・ジェルマンとクロード・パラン。

13. Winds of Change / Michel Legrand ：from Album『How to Save a Marriage and Ruin Your Life 』（1968)
*ミシェルが渡米した際に手がけた最初の映画がフィールダー・クック監督によるロマンティック・コメディ『恋はカクテル』のオリジナル・サウンドトラック盤よりレイ・コニフ・シンガーズの歌唱による主題歌。

14. Les Moulins De Mon Coeur / Michel Legrand ：from Album『The Thomas Crown Affair』（1968)
＊ノーマン・ジュイソン監督『華麗なる賭け』のオリジナル・サウンドトラック盤より主題曲「風のささやき」。ノエル・ハリソンのよる歌唱はアカデミー歌曲賞受賞曲。

15. The Summer Knows / Michel Legrand：from Album『Michel Legrand Plays Michel Legrand』（2002)
＊ロバート・マリガン監督作『おもいでの夏」の主題曲で、アカデミー作曲賞を受賞した楽曲。これはミシェルの自作自演集よりセルフ・カヴァー・ヴァージョン。

16. F.For Fake / Michel Legrand：from Album『Le Cinema De Michel Legrand』（2005)
＊オーソン・ウェルズ監督作品『オーソン・ウェルズのフェイク』劇中曲で、「Orson's Theme」の別名でも知られれている。公開時に音盤化されなかったが、後年になって編まれたミシェルの映画音楽集成に収録されたオリジナル・サウンドトラック音源。

17. The Grand Brown Man / Michel Legrand ：from Album『At Shelly's Manne-Hole』（1967)
＊ミシェルが作曲活動の息抜きにと出演したシェリーズ・マン・ホールでの様子を収録したライヴ盤より。シェリー・マン（Dr)、レイ・ブラウン（Ba)とのセッションから生まれた楽曲。

18. La Pasionaria / Michel Legrand：from Album『Le Jazz Grand』（1978)
*『Legrand Jazz』以来、フィル・ウッズ（A.Sax）ロン・カーター（Ba）、ジェリー・マリガン（B.Sax）ら辣腕ミュージシャンを率いて久々に取り組んだジャズ・アルバムより。

19. The Hunter / Michel Legrand：from Album『Le Mans-Le Chasseur』（2007 )
＊バズ・キューザック監督作『ハンター』主題曲。公開時、一部の地域ではミシェルが手がけた音楽は採用されず、チャールズ・バーンスタインによる音楽が使用された。これは後年『栄光のル・マン』とのカップリングで発売されたオリジナル・サウンドトラック盤から。

20. Martina / Barbra Streisand：from Album『Je M'appelle Barbra』（1966)
＊バーブラ・ストライサンドとミシェルがはじめてタッグを組んだアルバムより。1965年にエディ・マルネが作詞したシャンソンとして書かれ「Les Enfants Qui Pleurent」のタイトルで発表されたが、のちにハル・シェイパーによって「Martina」という英題が付けられた。

21. Papa Can You Hear Me? / Barbra Streisand：from Album『Yentl』（1983)
＊バーブラ・ストライサンド監督作『愛のイエントル』のためにミシェルが提供した楽曲は8曲あるが、アカデミー主題歌賞候補となったのがこの「PapaCan You Here Me?」と「The Way He Makes Me Feel」の2曲。

22. La Sortie De L'Ombre（Ouverture) / Michel Legrand：from Album『La Rançon de la gloire』（2015)
＊グザヴィエ・ボーヴォワ監督作『チャップリンからの贈り物』のオリジナル・サウンドトラックより主題曲。もとになったのはジャック・ドゥミ監督作『天使の入り江』の主題曲である。

23. Overture / Original Cast Recording：from Album『Amour』（2003)
＊舞台『壁抜け男』のアメリカ版『Amour』オリジナル・キャスト盤より序曲のコーラス・ヴァージョン。

24. Les "Don Juan" / Michel Legrand：from Album『Legrand Nougaro』（2005)
＊盟友クロード・ヌガロの没後に制作されたトリビュート・アルバムより。生前のクロードの歌声と共にミシェルが歌った楽曲で、オリジナルは1962年に書かれたもの。

25. Something New in My Life / Melissa Errico：from Album『Legrand Affair』（2011)
＊舞台『壁抜け男』のアメリカ版『Amour』でヒロインを演じたのがメリッサ・エリコ。これはミシェルが全面的に関わった彼女のアルバムより、映画『結婚ダブルス／ミッキー＆モード』でスティーヴン・ビショップが歌った主題歌のカヴァー。

26. Chanson De Delphine à Lancien / Natalie Dessay et Michel Legrand：from Album『Entre elle et lui』（2013)
＊ナタリー・ドゥセのラブコールで制作された全曲ミシェルの楽曲で構成されたアルバムより、映画『ロシュフォールの恋人たち』劇中歌のカヴァー。ピアノ、編曲はミシェル自身によるもの。

27. Can You Tell the Moment? / Natalie Dessay et Michel Legrand：from Album『Between Yesterday and Tomorrow』（2017)
＊1970年代にミシェルとバーグマン夫妻がバーブラ・ストライサンドと組んで企画したコンセプト・アルバム『Life Cycle of a Woman』。幻に終わった同企画を再編して完成させたアルバムからの1曲。

28. Concerto Pour Piano Et Orchestre / Michel Legrand：from Album『Concerto pour piano pour Violoncelle』（2017)
＊恩師ナディア・ブーランジェとの約束だった念願のコンチェルトを収録したアルバムより。

29. Chapter 1 / Michel Legrand：from Album『The Other Side of The Wind』（2019)
＊オーソン・ウェルズ幻の企画をピーター・ボグダノヴィッチらが完成させた映画『風の向こうへ』のオリジナル・サウンドトラックより。
これがミシェルにとって最後の映画音楽になった。

30. Recette pour un cake d'amour / Marie Oppert：from Album『Peau D'Ane: Feerie Musicale』（2018)
＊ミシェルがジャック・ドゥミと組んだ映画『ロバと王女』の舞台版オリジナル・キャスト盤より、ヒロインを演じるマリー・オペールの歌唱。彼は最後の力を振り絞って、全ての楽曲を新たに編曲、これがミシェルの遺作となった。