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2021年天皇賞・秋を視座に

 先程の天皇賞秋の結果を受けて思わず久しぶりに筆を取った次第だ。レース前はコントレイルとグランアレグリアの叩き合いになると予想していたが、蓋を開けてみれば直線先頭で抜け出したのは3歳牡馬のエフフォーリア。斤量が多少有利と言えど、このメンバー相手に勝ち切るのは並大抵の馬ではない。

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 エフフォーリアの父はエピファネイア。エピファネイア自身も3歳秋の淀で大輪の菊の花を咲かせてみせたが、競走馬として本格的な完成をみたのは翌年のジャパンカップだと思う。その時の世界最高レーティングを有していたジャスタウェイを完全に抑えての優勝。3歳で天皇賞秋を制した父シンボリクリスエス同様に大物喰らいを成し遂げてみせた。

 エフフォーリアはそんなエピファネイアを父に持ち、更に有馬記念でかのディープインパクトを負かしたハーツクライを母父に持つ。

腰高で、いかにもスペシャルウィークとハーツクライの良い所が存分に馬体に現れている感じを受けるが、そんな晩成タイプと見受けられる血統背景からしても競走馬としての完成は来年以降だと考えていた。しかし、エフフォーリアのポテンシャルは自分の遥か想像以上であった。古馬になってからも未だ成長の余地があるかもしれないエフフォーリアの今後の活躍に益々の期待が高まる。

 さて、レース前にはコントレイルとグランアレグリアの一騎討ちになると考えていた自分。コントレイルは言わずもがな、無敗の三冠馬であり、調教師は理論派で中堅最有力候補の矢作芳人。

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対するグランアレグリアの調教師は、来年2月で引退を迎える名伯楽の藤沢和雄。感覚派と言って差し支えない藤沢調教師と、理論派の矢作調教師の自らの威信を賭けた真っ向勝負をイメージしていた。

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 というのも、藤沢調教師はヨーロッパ型の馬を府中で走らせる天才。グランアレグリアは母父はアメリカ系といえど、牝系はヨーロッパ型。対する矢作調教師は、現在のトレンドであるアメリカ血統を母方に取り込んだコントレイルで見事三冠を成し遂げた調教師。藤沢調教師としても自身最後となる天皇賞秋で、これまでの調教師人生の集大成を飾り、自身がこれまで積み重ねてきたことが正しかったことを証明したいに違いなく、

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感覚派と理論派で、互いにこれまで培ってきたプライドを賭けた、日本競馬に於けるターニングポイント、世代交代の一戦になると見込んでいた。

 

しかし、結果は鹿戸調教師のエフフォーリア。もっとも、ここにもドラマがある。エフフォーリアを鍛えた鹿戸調教師は、藤沢調教師の愛弟子。ヨーロッパ型に位置するロベルト父系であるシンボリクリスエスで天皇賞秋を連覇し、そのシンボリクリスエスを母父に持つレイデオロでダービーを制してみせた、藤沢和雄調教師の愛弟子なのだ。

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 そして、当該鹿戸調教師も、ロベルト父系たるスクリーンヒーローをかつてジャパンカップ勝利へと導いており、今回のエフフォーリアもスクリーンヒーロー同様にロベルト父系であった。

そんな藤沢調教師の愛弟子たる鹿戸調教師の活躍によって、日本"近代"競馬を担ってきた藤沢メソッドが、脈々と後世へと受け継がれていることが今日証明された。


 日本の大主流系統たるサンデー系ではない父系の活躍によって、血の多様性が増すことは日本の生産界にとっては素晴らしいニュースだろう。また、そのような馬を鍛える術が後世へと受け継がれていることも、日本競馬界にとっては朗報だ。

もっとも、コントレイルは我々世代最初の三冠馬。これまでの三冠馬達が辿ってきた軌跡を見てみても、

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三冠馬が現役引退後の生産界で果たす役割は当然大きい。

最早、ディープインパクトとハーツクライが種付けをしていない今、これからのサンデー大父系を担っていくのは、その成績如何に関わらず、間違いなくコントレイルであり、これからのサンデー系はコントレイルを中心に回っていく。

 

 そうは言うものの、古馬になってからG1勝ちが無いというのはやはり寂しいものだ。次なる東京2400mを舞台にした一戦で、再度府中の空に未来へと繋ぐ飛行機雲を掛けて欲しいというのが、

コントレイル"世代"としての想いである。

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 そして、仮にエフフォーリアもジャパンカップに参戦するとなれば、今後の日本競馬の更なる飛躍へ向けてコントレイルと共に鎬を削って欲しいところだ。

日本"現代"競馬の結晶へと続く道程は、まだまだこれから、始まったばかりだ。

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