恥ずかしさを分担した話

歩いているとき、わたしはあんまり前を見ていない。見ているようで、見ていない。

思春期、人の顔を見るのが嫌で、なるべく下を向いて歩くようにしていたら、前を見ているような見ていないような、そういう歩き方がクセになってしまった。
別に誰もわたしのことなんて見ちゃいないと今はわかっているのだけど、歩き方のクセはそのまま。

前、といえば言えるけど、下を向いているような、「前」と「下」の中間を見ている。であるので、前から人が歩いてきているのはわかるけど、その人がどんな顔かまでは見えない状態で歩いている。

昨日も、改札を出てすぐ、前から男の人が歩いてくるのがわかった。

それなりの距離があったものの、このまま行ったらぶつかる。

それはそれとして、後ろから、男の人2人組が歩いてきていた。
このまままっすぐ歩いたら、前から来る人にぶつかるけど、うしろのひとも来るから、止まるわけにはゆかない。

と、いうように、私はどんくさいので、こういう状況に滅法弱い。人や自転車を避けるのが一向にうまくならない。前からも人、後ろからも人で、私のキャパシティはすぐにオーバーしてしまった。とにかく、とにかく前からの人を避けねばなるまい!

避けるとなると、みんなはどっちに曲がるんだろう。私は、とにかく左に行ってしまう。
避ける=左だ。とにかく左に向かって歩こう、そうしよう。

私は左に向かって歩いた。すると、前から来る男の人も、右に向かって歩いた。
ならばと更に左に向かうと、男の人はさらに右へ。ええいなにくそ、と、更にさらに左に向かうと、男の人も頑なに右へ歩く。
そして、後ろからの2人組は歩幅を緩めない。

結局、前から歩いてきた男の人と私、及び後ろからの男の人2人組がだんごになった。だんごになってわちゃわちゃして、「すみません、すみません」と謝り合うも、尚も上手く避けあえない。なんじゃこりゃ。

時間にしたらほんの一瞬のできごとなのに、だんご状態でわちゃわちゃしている瞬間が永遠に感じた。こんなに人を避けるのが不得意な面々が出会うのもなかなかの確率だと思う。

いくら「人を避けるのが不得意な会」の我々であっても、いつまでも改札前でだんごになっているわけにはいかない。なんとかだんごから各々が抜け出し、それぞれの方向へ歩き出したのだけど、久しぶりに顔から火が出るかと思った。

でも、はたと思い直す。

この恥ずかしさ、私だけのものではないですね。

わちゃわちゃしあったあの人たちも、顔こそ見ていないけれど、きっと今頃、同じように顔から火が出て歩いているに違いない。そうでなければ相当の胆力であって、そんな人は「人を避けるのが不得意な会」のメンバーではないのではないか。

わちゃわちゃした面々と恥ずかしさを分担していると思うと、羞恥心はちいさくなって、かえって面白くなってしまった。

わちゃわちゃしたみなさん、どうか今日もお元気で!

さえぐさ

#日記 #エッセイ


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コメント1件

思わずにやにやしてしまった「人を避けるのが不得意な会」の会員です。加えて「自転車を避けるのが不得意な会」の会員でもあります。・・・ん?単に「どんくさい奴の会」の会長かもしれません。
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