weekly report 4/29 - 5/5
僕たちはなんとなく、尊敬できる立派な人って遠くにいると思っている。
困った時、どうすればいいか知恵を授かりたい時、おそらく友人や家族みたいに身近にいる人の言うことよりも、本に書かれているような専門家や大学教授の言葉のほうを参考にするんじゃないか。
実際のところ、そうしておいた方がいいだろう。周りにいる人がみんな、何かのプロフェッショナルだ、なんて境遇にいる人は稀だろうから、広く一般的に認められている人の言うことを聞いておく方が賢明である。
でも、そういうステータス的にも距離的にも遠い人だけじゃなくて、身近なところにも尊敬できる人はいる。そういうことをつい先日、改めて思った。
思いつきでパーマをあてようと思い、友達がやっている美容院へ行った。
彼女は高校時代からの友達で、専門学校を卒業してからずっと美容師をしている。しばらくはお店に雇われていたんだけど、何年か前に独立して自分のお店を出した。他に美容師は雇わず、彼女一人でプライベートサロンをやっている。
正直なところ、学生時代の友達とはいえ異性だし、自分も話し上手なわけではないし、お客さんとして髪を切ってもらう気恥ずかしさもあるしで、いつもちょっと緊張しながら席に座っている。
それでもちょくちょく行くのは、応援したいとか、腕がいいとか、そういうことに加えてやっぱり、彼女が人としておもしろいからなんだろうなぁ。
もうかれこれ知り合って15年ほどになる。共通の友達もいるし、そのあいだどういうふうに暮らしてきたか、さすがになんでも知ってるとは言えないけど、ぼんやりとはお互いに認識してる。いつも髪を切ってもらっているあいだ、そういう事柄について話すことが多いんだけど、その時は彼女の仕事への想いを聞く機会があった。
「人が会って話をするのって、とても大事なことだと思う。それができるから、美容師の仕事を選んで続けてる。長い付き合いのお客さんもいて、人の浮き沈みを知ることもあるけど、それがとても勉強になるし、髪を切ることでリフレッシュできることもあると思うから、自分には何にもないけど、そういうことで喜んでもらえるのが嬉しい。」
彼女が“自分には何もない”と言った時、ドキッとした。美容師というキャリアをしっかり築いているし、自分のお店も持っているのに、“何もない”。
斜に構えずに、真正面から自分の仕事、それを含んでいる一日一日に向き合っていると、こんなにも謙虚でいられるんだなぁと思った。
話がひと段落してから「もし美容師になってなかったら、何になってたと思う?」と尋ねると、「美容師じゃなかったら、パティシエが良かったかな。」と答えてくれた。
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