墓と坂道、糞漏らしの平穏⑤ 信心

「草木の会」には「本部」と「総本山」があった。
本部は東京の某所にあるが、総本山は富士山麓にあり、所謂寺であった。
今考えると不思議な体制だったと思うのだが、本部と総本山は別の宗教法人となっていた。
総本山は出家団体、本部を中心とした「草木の会」は在家の集団として認識されていたように思う。

清くんは、総本山のお坊さんになるらしい。
お医者さんやパイロットになるのは、凄い事はわかる。
お医者さんは体の悪いところを直してくれる。
我が家の近くにも、カッコいい車を持って見せてくれる「ブーブせんせい」がいて、私が熱を出す度に診てくれていたものだった。
パイロットは、飛行機を運転できる。飛行機は私は乗った事がなかったが、沢山の人を乗せて空を飛ぶのだ。

母は、お坊様になることは凄いこと、と言った。
お坊様になる、ということの凄さは、幼い僕にはわからなかった。
私は金本清と、「信心」を比較されていた。
どうやら、母は僕に、お坊さんになるまではいかなくても、「信心」の強い人になって欲しいと思っているらしかった。

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