墓と坂道、糞漏らしの平穏② 宗教

我が家は、とある宗教団体に属していた。
私はその宗教団体に対してここで肯定も否定もする意図は全く無いのだが、実名にすべきか仮名にすべきかで迷っている。

木村文洋さんの映画『息衝く』では、確か「種子の会」という名前で出ていた。実にうまいネーミングだと思った。

仮名にしよう。
「種子の会」というネーミングを拝借したいが、許可を得ている訳ではないし、わざわざこんな個人noteの為に許可を頂きに行く事も申し訳ないので、今、考えるとする。

考えた。

我が家は、「草木の会(くさきのかい)」という宗教団体に所属していた。
鎌倉時代の僧侶である、日蓮(ここは実名で構わないだろう)の教えを基にした宗教団体で、戦後熱狂的な布教活動…折伏(しゃくぶく)と呼ばれる…を展開し、日本最大の会員数を誇る団体であった。

私は、生後1ヶ月足らずで、草木の会の会員となった。

日蔭町のほど近くの寺で、母・稲子に抱かれた赤ん坊の私の写真が残っている。とても平穏で幸福そうな、どこにでもある母子の姿が写っている。
両親は、草木の会の会員として生きる事が我が子の幸福と信じ、入会をさせるのだ。

私の「孝(たかし)」という名前も、姉の「和子」という名前も、「草木の会」の指導者…山田先生に命名していただいた、との事だ。
もちろん、当時の私にはそんな事はわからない。
兎にも角にも、ごく一般的な、普通の宗教団体に所属している家庭で、私は生まれたのだった。


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