自業自得なのはわかっているけど、苛立ってしまうのは仕方ないことなのだと思う

「俺はこんな感じに書いたんだけどさ。難しくて、一時間半くらいかかった。
めっちゃ調べてやったんよ。」

そう言って彼は、スマホで撮った課題レポート用紙の写真を見せてくる。
そうだ、そういえばこんなレポートだった。先週の授業でレポートの目を通した時の光景が、記憶の奥からはっきりと蘇ってくる。同時に、ああ、僕は今彼に少し見下されている。優劣を感じさせられている。そう思って、苛立つ。好きな授業の課題をすっかり忘れていた自分に対しても腹が立つ。でも、悪いのは自分だ。課題を提出した彼と、忘れていた僕。うん、劣っていたのは僕だ。

「やばい、すっかり忘れてた。うわ、どうしよう。」

苛立ちを抑えて、僕はそう言った。
すると彼は、また僕の気持ちを煽るような言葉を、どんどん放つ。

「マジ?これ難しくてさーーー」
「ってか、あの〇〇先輩ですら提出してたぞ。」etc…

イライラが増すが、曖昧に笑って誤魔化す。
このままやり過ごせる、大丈夫だ。

「こんな感じで良かったのかな、レポート。どう思う?」

無理だった。
思わず怒りを含んだ言葉を放ってしまう。
悪いのは自分だから、今そんなことをしたら、八つ当たりと取られるのは
明白だった。それを理解しながら、それでも僕は言ってしまう。

「あのさ、やってないんだって!
 んなこと言われて、俺にどう答えろってよ!」

ああ、なんて恥ずかしい口撃なんだろう。
課題をやっていないことを、こんなにも激しい口調で言うなんて。
本当にマヌケ、間が抜けている。

「なんで怒ってんの?ごめんイライラせんで。」

彼は素直にそう言ってくる。
本当に悪気なく話していたかのように見える。
と言うより、多分本当に、本人は悪気がない可能性が高い。
正直、タチが悪い。そう思っている。
無意識のうちに、人の神経を逆撫でしている。
あんたは修学旅行に行けなかった同級生に、修学旅行の話を嬉々としてするのか。
第一志望校が不合格だった人に、自分が志望校に受かったからって、喜びハッピーテンションでダラダラ絡むのか。大体お前もこの間、勉強のことで少し下に見られるようなことを言われていた時、ムッとして無口になって怒っていたじゃないか。自分がされて嫌なことを、お前は他人にはするのか。
そう叫びたくなる。でも多分彼には刺さらない言葉だから、無駄だ。
そして何より、提出を忘れた僕が悪いのだから、怒りを外に向ける資格は、
やっぱり僕には無かった。


ショックだ。
前回の小テスト、全体で約20人しか正解していなかったという小テスト。
僕はしっかりと正答をかけていた。今回のレポートも、内容はちゃんと
理解していて、書けるものだった。
レポートの提出箱の前を、僕は今日、通りすぎていたじゃないか。
なんで、なんでなんだ。
考えれば考えるほど、落ち込む。

課題レポートは、評価の30%だったはずだから、残りの試験とレポートで
取り戻せるかもという気持ちと、過ぎたことは仕方ないという気持ち、
この、最近身についてきた精神力を発揮し、僕は30分かけて立ち直る。

嫌な週初めだ。
もうすぐ夏休みで、地元に帰れることに浮かれてしまっていたことは
間違いない。こんなことでは、いけない。


とりあえず、提出はできないがレポートを書いた。


やらないよりはいい。


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