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本心を隠すための「本心らしきもの」 | 「進撃の巨人」のエレンと「ブレイキング・バッド」のウォルターの類似点

進撃の巨人も後半に差し掛かり、エレンの行動・真意が徐々に分かってきましたね。

彼の行動原理を探るに当たって、参考になるのは、アメリカで超人気のドラマ「ブレイキング・バッド」の主人公ウォルターです。

ポイントはズバリ「本心を隠すための、本心らしきもの」です。


進撃の巨人と合わせて見たい「ブレイキング・バッド」

高校の科学の先生であるウォルター。

彼の余命が「数ヶ月しかない」と言われるところから、物語が始まります。

彼の家は、控えめに言っても裕福ではない。

さらには障害を持った子供も生まれ「お金が必要な時期」なんですよね。


彼は家族にお金を残すための方法を考えて、最終的に「メス(麻薬)」を作ることを決意。

冴えないただの先生ですが、化学の知識は一流だったため、純度の高い「メス」を作ることができます(主人公補正)。


で、メスの流通を牛耳り、一気にお金持ちになります。

その引き換えに、彼は裏の顔(麻薬の製造人)を持ち、麻薬で多くの人々に害を与えることとなります。

※ここから結末のネタバレです


ブレイキング・バッドのラスト。ウォルターの言葉に見る「信念」

彼はお金を作るのと引き換えに「麻薬作り、殺人」を犯してしまいます。

あれだけ善人というか、普通の人だった彼が、ダークサイドに落ちていく、裏社会の帝王になっていく。

これまで浴びたことがないほどの「賞賛」と「結果」を裏の世界では得られた。


しかし、彼の考えは一貫して、

「自分はあくまでも家族にお金を残すためにメスを作る」

というもの。

あくまでも自分のためじゃないと言っているんですね。


彼のした悪行は当然ながら、家族に理解されません。

「麻薬の売人」ということも家族にバレてしまいます。

最愛の妻に対して「私のやったことはすべて、家族のためだ」と何度も、何度も言ってきましたが、理解されません。

そして、彼は妻との別れ際にこんな会話を交わします

ウォルター「分かってくれ、私のしたことはすべて…」
妻「あなたはどうせまた、家族のためだったと言うんでしょ」
ウォルター「自分のためだった」
ウォルター「好きでやった、私には才能があった。それに心から実感できた。生きていると」

ここで彼は「あくまでも自分のためにやっていた」ことを語るんですね。

彼は表社会では得られない評価を裏社会で得たし、成功した同級生にコンプレックスを感じていたから自分がお金を得て凄いことを誇示したかった。

そんな見方ももちろんあります。

しかし、それってウォルターの「本心」というか、いちばん大事なものではないんですよね


本心を隠すための「本心らしきもの」

ウォルターの一番の本心は「家族のためになりたい」。

彼が作ったメスのごとく、混じりけのない思いがそこにはあります。

彼が語る「自分のためにやった、好きだったからやった」というのは、彼の心の表面に過ぎない。

外から見た人も、我々視聴者も、それが「本心」だなとつい感じてしまうんですが、実は「本心らしきもの」でしかないのです。


というのも、彼が最後に行った行動を冷静に振り返ると

 ・家族の為にお金を残した(自分から渡さない形で)

 ・家族に嫌われるようなことをあえて行った

の2つだから。


前者は当然ながら、障害を持った子供と家族のために「お金を残す」という目的を達成するためです。

そして、後者は「死に行く犯罪者である自分を憎むことで、家族が団結するようにしたかった」から。

自分自身がどう思われても良い。

今後生きる家族が生きやすくなるように、自分を徹底的に憎むように仕向ける。

「家族のためになりたい(本心)」という目的を達成するための手段として、

「自分のために行動した(本心らしきもの)」と発言したのです。


つまり、ハイコンテキストなエンタメ作品においては、作品のキャラの発言をそのまま受け入れてはいけない場面が存在します。

そして、進撃の巨人もそんな作品のひとつなのです。

※以下、進撃の巨人29巻までのネタバレややあり


エレンの本心と本心らしき発言

進撃の巨人の結末はどうなるかまだわかりません。


しかしエレンのした行動を見ると、そこに「本心」と「本心っぽい発言」が汲み取れます。

 ・マーレを襲撃し、世界中から「一番の悪」と思われるようにした

 ・ミカサやアルミンたちから「嫌われる」ように仕向けた

マーレ編以降で見せるエレンの発言は常に「本心らしきもの」です。

ミカサやアルミンを傷つける発言は衝撃的でしたが、あれは「言いたくていった」わけじゃなくて「言うこと」が手段だったのです。


「本心」は何か?

彼にとっていちばん大事なのは「同期の仲間たち」であり「島に暮らした人々」です。

彼が知る未来ではおそらく、それらの人々は悲惨な結末を迎えているのです。

そして、それを避けるために、エレンは一人で

「エルディア人が迫害されない世界」

「生まれて来た子供が自由に暮らせる世界」

「ヒストリア含めた仲間が犠牲にならない世界」

を作ろうとしているように思えます。


エレンは「理解(自分が周囲からどう思われるか)」を捨て、「大事なもの以外の犠牲」を受け入れる覚悟をしました。

ブレイキング・バッドのウォルターが「家族からの理解」を捨てて、「麻薬製造による犠牲」を受け入れたように。


ということでエレンの「本心らしき発言」に隠された「本心」は何か?

に着目して進撃の巨人を見守りましょう。

今後の展開も最高に楽しみです。


以上、エンタメ解説屋のパカログでした。

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タキ@パカログ

漫画・アニメ・映画などの解説ブログを運営しています。 https://www.arupakano.com/ ハンターハンター、ジョジョ、シュタゲ、進撃の巨人など考察が捗る作品が好み。
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