カードゲームの上達方法-初級者から中級者になるために-

少し昔の話になるが、SloRが良い文章書いてたので、それにあやかってカードがうまくなるためにはどうしたらいいのかというのを自分の経験を元に書いてみる。


上手いプレイヤーとそれ以外の考え方の違い

SloRの文章は相変わらずありえんレベルで読みにくいので、まずは簡単に要約すると

  • カードゲームの上手さは乗り物の乗り方に例えられる

  • カードゲームが上手い人は自転車→バイク→車→飛行機とどんどん速い乗り物の乗り方を覚えていく

  • 一方、カードゲームが上達しない人は一生自転車の乗り方を突き詰めている

  • 完璧な自転車の乗り手と未熟な飛行機の乗り手でレースをしたら、圧倒的に未熟な飛行機の乗り手が勝ってしまう

といったようにカードゲームの上達の過程を「乗り物の乗り方」という比喩で表現している。
少し前に話題になった潜在的ミスと顕在的ミスの違いもこれに似た比喩になるだろう。
要は、一生自転車の乗り方だけを突き詰める(=顕在的ミスの修正)プレイヤーは乗り方という狭い考え方にとらわれていて、そもそももっと速い乗り物がある(=潜在的ミスの存在)ということにすら気付いていない。

少し揶揄を含めると、よく大会に負けたプレイヤーがする「ミスはなかった」という発言は"自転車の乗り方は完璧だった"という場合が多いし、「相手がミスをしたのに運で負けた」と発言するプレイヤーは"自分が自転車に乗っていたのに対して、相手は飛行機に乗っていただけ"という場合が非常に多い。

比喩から現実の問題に戻すが、上級者と中級者以下では練習の時に考えるポイントがそもそも違うという場面によく遭遇する。
中級者以下と練習をすると
・自分のプレイは正しかったか・間違っていたか
・ミスをしたので本番ではしないように気をつける
といったような点を意識して練習しているように感じる。これがいわゆる自転車の乗り方の探求である。
では、上級者の練習ではどういったことを意識するのか。もちろん多くの要素があるが、いついかなる時でも欠かさないことが"勝利するルート・パターンを模索する"ことである。
例えばやったことの無いプレイをしてみてそのルートが勝ちにつながるか確かめてみたり、ある程度パターンが見つかったらそれらにつなげるためにはどういった条件が必要か、これを意識してプレイや構築を思いつく限りすべて試してみる。その結果が正しくても間違っていても関係ない。考え尽くして新しい考え方を生み出す。これが新しい乗り物を探すという行為である。

しかし、この練習を遂行するための非常にハードルは高く、初級者・中級者に"今から速い乗り物を探す練習をしてください"と言っても困惑するだけだ。
そこでまずは速い乗り物に乗り換えるということがどういうことかを体感する必要があると考えている。
そのための簡単な方法の1つは"すでに速い乗り物に乗っている人を真似ぶ"ということだ。
この方法について、実際に自分が過去に実践した方法を紹介する。

上手いプレイヤーを真似する上達方法

この方法を実践した時期

自分がShadowverseで本格的に競技プレイを始めたいと思った時期。
それまでカードゲームをカジュアルでしかプレイした経験が無く、その当時はShadowverse歴4ヶ月(STD~DRK期)程度で、Masterランク到達直前にJCG1st Season(当時週2回開催されていた256人規模のオンライントーナメント)でBest4に入賞し、競技プレイに興味を持ち始めた時期だった。
当時、好んで使っていたのはミッドレンジロイヤルと超越ウィッチで、前者でアドバンテージやトレードの概念を学び、後者でコンボデッキにおける手札の整え方を学んで、カードゲームの大枠を理解したつもりになっていた。
その思い込みは、新弾リリースと共に現れた新しいアーキタイプであるドロシーウィッチの登場で完全にひっくり返される。
ドロシーウィッチはいわゆるバーンデッキだったがそれだけでなく、バーン以外にもマナレシオを無視した展開力やドロシーのリソース補充と多くの要素を持っており一瞬にしてTier1に昇りつめたのだが、このデッキの回し方は今まで自分が経験したいずれのデッキとも回し方が違い、自分でも明確に意識できるほど下手だった
しかし、圧倒的Tier1であったドロシーウィッチを使わずに、競技シーンを勝つことは不可能であると確信し、どうすれば短期間でこのデッキを上手く回せるかを考えた。
そこで最終的に上手くいった方法が、上手いプレイヤーの回し方を完全に真似るということだった。

この方法を試してほしい人たち

この記事のタイトルの通り、競技プレイに臨みたいという意志はあるが中級者にまだなれないという初級者の方々にはぜひ実践してほしい。
中級者の定義は難しく人それぞれによって解釈が異なるところではあるが、自分は、一人で練習して上手くなっている実感が持てるレベルが競技プレイヤーにおける中級者だと認識している。
実力的にはポケモンカードならば運が悪くなければ2回に1回シティリーグでトーナメントに残れるレベル、ShadowverseならばRatings for Shadowverseでの年間勝率が53%~55%ならば十分に中級者と名乗って良いと考えている。

上手いプレイヤーを完全に真似る

本題。
といっても、見出しの通り上手い人を完全に真似るというだけである。
では完全に真似るとはどういうことか。
それは根拠や考え方は違っても良いが、1試合を通して上手いプレイヤーと全く同じ選択肢を取れる状態になることである。
例えば誰か上手いと思うプレイヤーを一人選択し、その人が特定のデッキを配信で回しているアーカイブを題材に選ぶとよい。
そのアーカイブを視聴し、以下の作業を行う。

  • ターンの開始時に一時停止。自分ならこのターンどういう択を取るかとその根拠をすべて言語化したら、アーカイブを再生の再開する

  • もしプレイヤーが選んだ選択肢が自分と違った場合、その選択肢を選ぶためにはどういった根拠を持てば良かったかを自分で納得するまで考える

  • 再度ターンの初めに戻り、自分でその根拠を言いながらプレイヤーと同じ選択肢を取れるようになるか確認する

  • これを各ターン行ったら、1試合を通して全く同じ選択肢を取れるようになるまで繰り返す

  • 1試合を通してできるようになったら次の試合に移行し、同じ作業を繰り返す

  • アーカイブ中のすべての試合において、この作業が完了したら、アーカイブ中の試合すべてを通して選択肢が一致するようになるまでアーカイブを周回する

  • 複数のアーカイブにおいて作業が完了したら、複数のアーカイブを通して完全に正解できるようになるまでまた周回する

この作業を行う時の注意点は以下の通りである。

1. 自分の意志を主張しない
自分ならこういう択を取るとか、こっちの方が良さそうという考え方は一度すべて捨てる。なぜなら、自分より上位のプレイヤーが不正解だと思ったなら、その選択肢が正解である確率は極めて低いためである。ごく少ない確率でそちらが正解の可能性もあるが、それだけのためにそれが正解である根拠を考えるより、その選択肢が不正解であるための根拠を挙げられるようになる方がよっぽど効率が良い。もちろん上位プレイヤーがすべて正しいわけでは無いが、一定レベルまでの上達の過程においては余計なことを考えないほうが良い。

2. 根拠を常に更新する
選択肢をすべて正解するために周回していくうちに、正解のための根拠を変更した方が一貫して正解できるようになるならば、その都度変更してもかまわない。これは選択肢を真似ていくうちに効率の良い考え方をひらめいたり、そのプレイヤーの考え方の癖などを理解できている兆候であることが多い。
したがって、あくまですべて選択肢が一致できるようになるのが最優先な今回の手法においては都度更新することは良いことである。

3. 情報の優先順位を考える
選択肢を選ぶためにはいくつもの根拠(情報)をたよりにする必要がある。
根拠にはその状況に置ける重要さにランキングがあり、そのランキングを正しくつけることにより選択肢を正解できる可能性が高くなる。

4. リスクとリターンのどちらが重要か考える
前項の続きであるが、そのターンにおいてリスクを犯してでも報酬が得たいのか、あるいは絶対にリスクを取りたくないのか、というのはそのターンの選択肢を選ぶ上で重要な要素である。
これを判断するためには自分が今、優勢なのか劣勢なのかを正しく把握する必要があるのでこれを常に意識できるようになるとなお良い。

上記の4つを意識しながら、まずは軽く100時間程度この手法を行うだけでも、かなり上達を実感できると思う。
1つのアーカイブ毎にかける時間の目安としては1試合あたり10~20周、1アーカイブ毎に5周程度だろうか。
もちろん完全に真似できなければもっと周回するほうが良いので、あくまでも自分のペースでゆっくり進めるのが良い。

どうしても行き詰まったら

どうしても行き詰まったら、プレイヤーに質問してみるのも手である。
しかし、ただ質問するだけではなんの意味もない。質問する上ではまず自分の理解度を伝えることを怠ってはいけない
例えばあなたが、近所の子供に”2次関数の解き方”を教えてほしいと言われたとする。
その子供が「因数分解による解法を理解している」か「1次関数は理解している」かによって、教えるべき内容は変わってくるし、実は「まだ四則演算しか理解していない小学生」だったなら、全くもって話す内容が違うだろう。
見ず知らずのプレイヤーに「このターンなぜその選択肢を取ったのか教えてください」と言われるのはこの状況とほぼ同じであり、質問したプレイヤーのレベルがわからない限り、上位プレイヤーであろうと求めていた回答を導き出せる可能性は高くない。
理想的には以下のテンプレートのレベル感で質問すれば(少なくとも自分は)非常に回答しやすいと思うし、自分のプレイの振り返りにもなり、回答する価値があると思うだろう。

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<例>
x月x日の配信のアーカイブのn試合目のmターン目(yy:yy:yy~)について質問です。
◯◯さんはXという選択肢を取りましたが、自分はYという選択肢の方が良いと思いました。なぜなら、このターンの要素として自分が重要だと考えたのはAとBという要素の2つであり、自分はよりAの方が重要だと考えたのでYの方が良いと判断しました。もし、Bの方が重要な場合Xの方が良い選択肢だと思うのですが、◯◯さんはBの方が重要だとお考えですか?もしくは別の要素が重要でXを選択されたのでしょうか。
また、別日の配信ですが、z月z日のアーカイブのn'試合目のm'ターン目(ww:ww:ww~)では、同じような状況で〇〇さんはY'という選択をされています。自分の考えでは、この2試合で重要な要素は変わらずA'>B'>その他という考え方なのですがこの2試合で選択肢が変わってきたのはどういう差異によるものでしょうか。
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上記のような粒度で質問をすれば回答する側としても、明確に答えを用意できる可能性が非常に高くなるだろう。
実際、自分が当時参考にしていた配信者にはこのようなかたちで質問して有益な回答をもらった覚えがある。

幸いにも現在はサブスクライブという制度が流行しており、Discordサーバーなどで配信者に質問しやすい環境になっている。
ポケモンカードであれば、よしゆきサニチャンなどのサブスクライブに入会し、適切な質問を投げかければあなたの成長を手助けしてくれるのは間違いないだろう。

あとがき

今回は、カードゲーム競技プレイ初級者が中級者になるための上達方法の1つを紹介した。
もちろん、これ以外にも上達の方法はたくさんあるし、どんな方法を使ってもいつかは中級者にはなれるだろう。その中で今回紹介した方法は、自分の知る限りでは最も効率の良い方法であり、もし行き詰まっていて悩んでいるプレイヤーがいるならぜひ試してみてほしい。

そして中級者になったプレイヤーたちには、より上達するために考え抜くという癖をやめないで欲しい
中級者になったプレイヤーはより上達するために、実戦による練習を重ねていくことだろう。その過程において1ターン1ターンしっかりと考えてプレイすることは何より重要である。よく一緒に練習している自分が最も上手いと思うあるプレイヤーは、1ターンに10分以上かけることも多く、最長で30分以上微動だにせず考え抜いていたこともあった(その間にご飯を食べたりトイレに行けるというのは身内でよくある笑い話である)
1人でこの境地に辿り着くのはよっぽど難しい境地であるが、複数人で1ターンについて10分以上議論することは特別難しいことではないだろう。
そのためには、4人で練習するからといって練習卓を2卓必ず立てるといったような愚行を今すぐやめるべきであると個人的には考えている。
試合をこなすだけで上達できるのは1%以下の上級者だけであるし、ボリュームゾーンである初級者・中級者が上達するためには試合数をこなすことは重要ではない。
もちろん、練習であっても試合をするだけで楽しいのがカードゲームであるし、その楽しみを奪ったり文句を言うつもりはまったくない
ただ、本気で上達したいのであれば、試合を観て考えて議論するということの重要性をもう少し考えてみるべきだろう。

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