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6/29 中間管理録ふぃりかす

 この日も遊図オーナー澤田さんからスクショと共に連絡が入りました。

「これ見てください。ひどくないですか?」

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 こんな風にいきなり指令が来ることは珍しくありません。そしてオーナーとあさちゃんの間で板挟みの形になります。時にはあさちゃんのほうからクレームが飛んできて、それを翻訳して澤田さんに伝えるケースもあります。遊図の緊急対策特命係として任命され特別手当が支給されてしかるべきだと思っています。

 こうした影響で、中間管理録トネガワを読みながら自らを投影して涙を流すことも一度や二度ではありません。最近ではカイジに登場した帝愛No.2の黒川出演回でもその苦労が見えました。大変な職務が降りかかるたびに黒川や利根川を思い出し、彼らも頑張ってるんだから自分も頑張ろうと奮起しています。

 それでは今回の相談内容を意訳してみましょう。

 会話の中にある「借金終わったんだから勤務する意味ないやん」というニュアンスの発言が澤田さんのひんしゅくを買ってしまったと言うことがメインだと思われます。

 続けて澤田さんから送られてきた「たぶん、あさじんくんからすぐに相談がきます」の文字を見て、これはまた時間がかかりそうだなと遠い目をしていると、澤田さんの予告通り1分であさちゃんからメッセージが届きます。

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 あさちゃんの主張をまとめると

「ポルージンという名称は使ってほしくない」
「たとえ安井くんのことであっても使わないと約束した」
「それでも勤務するたびにポルージンと呼ばれたら不快に感じるのは当然だ」

 不思議なことに、あさちゃんは澤田さんが相手だとわりと論理的な主張を展開しはじめます。彼と交流する上でのオモシロポイントの1つです。

 ちなみにポルージンという名称はもとは「ペルージン」でした。これは全国民がわかるように「アスペルガー」+「あさじん」から成り立っています。

 「ペルージンは蔑称じゃないか!」と当然の抗議を迫るあさちゃんに対応する形で、ペルージンはポルージンへとほんのお気持ち程度だけ進化しました。ポケモンでいうところのルリリからマリルへの進化のようにほとんど変化がないと思います。

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 というわけでポルージンはもともとあさちゃんに対する呼び名でした。その後、遊図で働いていた安井くんがそれを気に入り、自身をポルージンと呼んでほしいと言いだしたために使われ始めました。あさちゃんが勤務していないときも日常的に使われているワードですが、あさちゃんが発声するなというのでできるだけ言わないようにしてきました。

 しかし澤田さんの脳内ではあさちゃん=ポルージンの期間が長かったこと、安井くんの話題が出るときも普段はポルージンと呼んでいることから、我慢していてもうっかり口を滑らしてしまうこともあり、それに対してあさちゃんはキレています。

 これらの主張をまとめ、澤田さんにレポートという形で送信するのが私の第一の仕事です。レポートに目を通したらしい澤田さんからすぐに返事が来ました。

「でもさ、遊図メンバーのほとんどがポルジンとかペルジンと言っている中、あさじんくんが呼ばれるのが嫌だというから、僕は並々ならぬ努力をしているんだよ。勤務に出る出ないについてどうこう言っているわけではないんだよ。借金返済以外に勤務する理由がないだろという捨て台詞に対して、それは違うだろと」

 私が「ごもっとも」「おっしゃるとおりです」とイエスマンに徹しますが、それでも澤田さんの主張は止まりません。

「そもそも彼が家がないというからマンションを無償提供して、カネがないというから金利も催促もゼロで貸していたんだよ。それで借金返済以外に働いていた意味がないって言われて不快にならない人いないでしょ」

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 澤田さんの主張をまとめると

「ポルージンと発言しないように努力している」
「20回我慢して1回くらいしか漏らしていないことを評価してほしい」
「今回の捨て台詞は許せない」
「従業員みんなであさじんくんをフォローしながらやってきた。それなのに突然なにも言わずに辞め、それを確認した店主への返答としてはひどすぎる」


 二人の主張を考えてみると、不幸にも互いの欠点が全面に出てしまった結果、齟齬が生じてしまったのだろうと思いました。

 あさちゃんの欠点 :話の要点を伝える能力が著しく欠落している。思い込みが強い。
 澤田さんの欠点  :要点を追求するあまり、その要点を修飾するべき具体的な話が抜け落ちすぎている。思い込みが強い。

 ということでこれらのポイントを抑えつつ、齟齬が生じた部分を突き詰めてみます。まずは最初の「借金を返すために勤務に入っていたのだから、返し終わったのなら勤務に入る理由がない」という部分です。

 結論から書くと、あさちゃんとしては、もう二度と勤務しないという意図はなく、とりあえず澤田さんへの借金を返済できたので7月の勤務に緊急性はないということでした。最初からそう書いてほしいと思いました。

 これを突き詰めるために頭が痛くなるほど長いキャッチボールを重ねました。流し見くらいに抑えることをおすすめします。

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 私の質問は完全スルーされたまま彼の連獄は続きます。あさちゃんと澤田さんに共通する悪い癖は、相手の質問をまったく受け止めずに自分の言いたいことだけ書き殴ってしまうところです。これではオナニーと一緒、SNS公然わいせつ罪に該当すること必至です。


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 こちらの言葉は無線連絡のごとく届きません。


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 スマホの電波が悪くて送信できていないのではと心配しつつも、意識を取り戻してくれるような文章を送ってみます。
 「澤田さんから現在進行形で文句が来ているのだろう」という彼の推測を打ち砕くことで、彼はようやく我に返りました。


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 途中まったくキャッチボールになっていません。無我夢中で自身の意見を吐き出しています。

 真意を聞いたところ、「借金返済が1番の目的だったため、それが解消された今では勤務の緊急性がなくなった。他の人にシフトを譲ってもらうのも悪いので、しばらく入る予定はない」ということがわかってきました。

 あさちゃんとのやりとりをさらに咀嚼し、ASA-GSOMIAに送信。これが私の第二の仕事です。待機していた澤田さんからすぐにレスポンスが来ます。

「『借金を返すために勤務に入っていたのだから、返し終わったのなら勤務に入る理由がないでしょう』 ←これのどこに緊急性が無くなったというように読める要素がありますか?通常の会話として読むならそんなことわからないでしょう。気が狂ってる部分を考慮しないでしょ」


    気が狂っている相手は気が狂っていると見なして対応しないといけません。これは澤田さんの悪い癖です。


「同じ文章貼るけど、『これを返すために勤務に入っていたのだから、返し終わったのなら勤務に入る理由がないでしょう』 ←これって澤田さん、なに言ってるの?バカじゃない?っていうニュアンスの言い方でしょ。これじゃリアルだったら手が出るレベルですよ」

 あさちゃんのように要点を言わずに迂回したり、大事な部分を伝え忘れたりする人は世の中にたくさんいます。そういう方に一般的な能力を求めるのは酷ですし、余計なトラブルが発生するだけでしょう。

 相手への怒りや失望というのは、必要以上に求めるから起こってしまいます。森くんや私のようにあらかじめ「この人は絶対になにか伝え忘れる。何かしら足りない言葉が必ずある」と身構えていれば、いざというときに問題を最小限に抑えられますし、精神的にイライラすることもまったくなくなります。

 これが身についているかどうかはその人の思考法、育った環境などにも影響されるのですが、残念ながらあさちゃんと澤田さんには備わらなかった能力です。


 今回の場合、たしかに「借金返済以外に勤務する理由がない」という言い方はよくありません。従業員やオーナーとはお互いにフォローしあってきたわけですし、この言い方では同僚への感謝の欠如がこの言い方に表れていると言っても過言ではないでしょう。

 とはいえ、あさちゃんの言い分である「勤務するたびにポルージンと呼ばれるから嫌だ」という点は理解できます。私と森くんが遊図へ遊びにいったときも脈絡なく「ポルージンくん!」と叫んでいたのをよく覚えています。嫌な職場では働かない。これは国民の権利です。

 澤田さんの「この捨て台詞はひどい」という主張も正しいですが、ポルージン呼びであったり普段からオモチャとして扱っていることを考えれば、これくらい嫌味を言われるのは仕方ないところではあります。なにしろスーパー減点法がありますから。


 結果的には、

あさちゃんの真意 :もともと不定期で勤務しており日雇いのような形だったため、しばらく勤務しないことに対してあえて「辞めます」と明言する必要性は感じなかった。今後も不定期で入る気持ちはある。
澤田さんの真意 :正規従業員として認識していたため、挨拶もなく「借金完済したら働く意味ない」と言われて腹が立った。

 というコミュニケーション不足による通常ありえない齟齬が原因というわけでした。


 中間管理職としては「あさちゃんのほうは言葉が足りなかった」「澤田さんは普段からポルージン呼びしているのだから、あさちゃんの嫌がる気持ちをもっと受け止めるべき」と、このように結論付け、お互いに理解してもらうしかありません。
 最終的には発狂がおさまり冷静になったあさちゃんが一歩引く形で一応は決着が着きました

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 客観的に見て、あさちゃん80% VS 澤田さん20%くらいの評価値であさちゃんが勝勢です。


 それでも三鷹の王 澤田さんの激昂はなかなかおさまりません。

 このように意思が通じなくなったとき、解決する方法は一つ。


 それはもちろん



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 「なんでもありの喧嘩」でございます。







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