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しごとのはなし その③広報

本業のはなしです。

わたしのキャリアは大きくわけて3つ。

今回は三番目の「広報」について書いていきます。

※大学卒業後すぐテレビコマーシャルをつくる仕事をしていましたが、その後のキャリアに直接的なインパクトがないため割愛しています

③「広報」

わたしにとって「広報」は仕事人生におけるボーナスステージです。その理由はのちほど説明します。そもそものきっかけは自営業時代のクライアントが社会的に意義のある活動をしていたため、必要に応じてメディアや外部との渉外にあたっているうちに「窓口→広報」担当に。31歳でした。

ニュースになった記事をスクラップしてファイルで持ち歩き必要に応じて説明や紹介。コピーをとって媒体各社に配布したりと完全に手探りでしたが社会貢献(CSR)の文脈で扱っていただくケースが多かったせいか、読売・朝日・毎日・日経という新聞媒体さんとお付き合いができました。

事前の確認(撮影の有無、質問のとりまとめ、所要時間、テーマと進行、スケジュール)もペラ一枚で骨子がまとまっており参考になりました。校正は新聞の場合「できない」といわれるため先手をうって「このキーワードはいれていただきたい」「このくくりとはわけていただきたい」等、できうるかぎりのお願いを差し上げたものです。

その後、プロダクトをもつブランドの広報をまかせていただくことになり雑誌やデジタルメディア、個人のインフルエンサーさんとのやりとりが始まりました。取引先の百貨店さんで「お見分け会」と呼ばれる商品説明の場にも立ち合わせていただきました。

通常であればPR会社を頼むところをご依頼いただいたという自負もあり、意気込んで商品を持参し各社をまわってキャラバン(マスコミ関係者にアポイントをとって面会し取材の依頼をする活動)していましたが、行く先々で未熟さと至らなさを思い知ることになりました。

先方からすれば「広報」担当者は自社製品の特性や市場について熟知している存在。メディアであれば、ニュースにする価値がどこにあって、どう時代性とマッチし、どんなインパクトを社会や世間にあたえることができるのか教えてほしい。取引先であれば商品の素材や成分、効果効能、ニュース性のある物語や最新情報、そして「自分たちが取り扱う意味」を知りたい。

ターゲットに対しどこまでリーチするかも含め数値で評価されるため具体的な数字(情報)を所望されることが多く、あやふやな答えに準備が足りずいたことを見抜かれあからさまにがっかりされたこともありました。

インフルエンサーとのお付き合いは苦労の連続でした。

関係性をつくるために御用聞きのような振る舞いをしてしまったり、依頼事項をうまく対応できず右往左往。移動中に携帯へご連絡いただき、近くで遊んでいたよそのお子さんの声がはいってしまった瞬間「子持ちってこれだからいやなのよ!」とイライラをぶつけられたこともあります。自分の子どもではなかったにも関わらず、子どもをもつわたしに投げられた言葉にショックを受けました。この世には仕事の場において子どもの存在を感じたくないひとがいらっしゃるという事実を知りました。

もちろん気持ちよく仕事させてもらったケースのほうが圧倒的に多かったし、今であればもうすこしうまくできただろうとおもいます。

とはいえこのブランドの広報を担当させてもらい、経験の幅が大きく拡がったおかげで外資系メーカーの広報部門(コーポレート・コミュニケーション)の仕事につくチャンスに恵まれました。

グローバル規模での事業展開。新聞や各メディアに担当記者さんがいてPR会社もはいっていました。イノベーティブ(革新的な)プロダクトを各分野で生産・流通させているため、製品リリースを出せば各媒体が必ず話題にしてくださる。大手というだけでなく価値ある商品とはかくありなん、と衝撃をうけました。

クライシス・コミュニケーションと呼ばれる「危機管理」という概念も知りました。広報担当としての受け答えが企業やプロダクトの印象、その後を大きく左右するため、リスク回避の観点から毎月仮想のトラブルとその対応について演習し講評とともに模範例を学ぶのです。余談ながら当時、危機管理室で長を務めておられたかたと娘の中学の入学式で再会しました。退職後に私立校の理事長になられたのです。この事実からも危機管理というスキルは汎用性があることがお分かりいただけるかなとおもいます。

この職場ではいわゆる対外的な広報活動「以外」社内広報を経験させてもらいました。レポート先が外国籍の社長だったため、媒体記事の英訳で毎週ネイティブのチェックをもらい要約力がつきました。新入社員の紹介やインタビューで各部門に出入りし社内掲示やリース商品の受け渡しをしていたら社内の知り合いも増えました。

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振り返って広報時代は自分にとって「ボーナスステージ」でした。「価値ある商品や情報を世界に伝えていく」仕事を通じてたくさんのメディアや取引先、社員とリレーションをつくることができました。この時代に知り合った方々には今でもことあるごとに助けられ、応援してもらっています。

広報というのはとどのつまり究極のコミュニケーションだとおもいます。自分のいいたいことを一方的に発信するのではなく、対話を通して相手や社会がなにを望んでいるのかを理解し、プロダクトやブランドのどの部分とかけあわせると価値が最大限になるかを一緒に設計していく。

良質なコミュニケーションはいい関係性をつくるのに不可欠です。今でも職場の広報担当者をはじめ他部門のスタッフと定期的にランチ会を設け、近況をお互いに話しています。そのことが本来業務でもいきていて、協働するプロジェクトやピンチのときにいちはやくアシストしてもらったり、あうんのコミュニケーションで進行が倍速になったり。広報として働いていた経験はいまでも役にたっています。

また、広報的な視点で自分の仕事やプロダクトをみたときに「ここは強い」という特長をつかみ、競合との差分に焦点をあててアウトプットするくせもつきました。「誤解をうむ表現はないか」「誰かのなにかを著しく損ねてないか」「法令を遵守しているか」とリスク回避することも覚えました。

この先また、なにかの形で広報として働くことがあるなら。最近ふとそんなことを考えるようにもなりました。

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※前々回の ①輸出入実務 についてはこちらからお読みいただけます

※前回の②商品づくり についてはこちらからお読みいただけます

キャリアシリーズはいったん完結ですが、これからはしごとを通して身につけた技術や語学、専門知識についてなど書いていこうとおもいます。

現在進行形で更新中のものもあり。お楽しみに!

トリスと金麦と一人娘(2023 春から大学生になり、巣立ちます)をこよなく愛する48歳。ぜひどこかで一緒に飲みたいですね。