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大人になってからの語学学習

今日はわたしのやる気が暴走してフランス語を習得したはなしをします。

大人になってからの語学学習を成功させるポイントはいちもにもなく「時間確保」なんですけど。もうひとつ大事なのは。

モチベーションの維持。

です。

仕事で必要、とか、留学したい!とか資格試験というのはある意味わかりやすい。転職するのにTOEICであと何点が必須、とか、入学するのにTOEFLここまであげないと、とかはもう最強ですね。やる気しか起きない。

社内ルールで課長職以上は何点以上、部長なら、とあったら責務も収入もなんなら社内評価も変わるから必死になるし追い込める。

問題なのは。

誰からも求められてないし、現状で必要でもないのに。

やりたくなっちゃった場合、です。

モチベーションコントロールと、時間確保、その後のことなど書ける範囲で赤裸々にしていきますのでお付き合いくださいませ。

・きっかけは「暇」だったから

以前のnoteにも書いたことがありますが、わたしは27歳で離婚しています。離婚前の1年間はほぼ家庭内別居状態で、引っ越し資金をためるために週末に三宿の交差点にあった某・牛丼チェーン店で週末の朝8時から夜6時まで働いていました(平日は副業OKのフルタイム勤務)。

離婚成立し週末のバイトをやめたものの。仕事が終わってもやることもなく、まわりの友人たちは現役の恋愛モードでキラキラまぶしすぎて気後れし、バツイチになってしまった自分がなんだかみすぼらしく感じられて自宅にひきこもっていました。暇で暇で、自由を完全にこじらせていました。

週末がっつりバイトいれていたから可処分時間があまりまくり。

仕方がないから近所のスポーツクラブに入会し毎日、通いました。スタジオレッスンもジムもヨガもダンスもマシンもお風呂もプールもやりました。完全に月謝分以上、使い倒していた自信があります。

帰宅しても、週末も、話す相手も会いたい人もいない。

さびしかったんだとおもいます。

のめり込んだ。しゃべらなくて済んだ。身体をくたくたになるまでつかったらぐっすり毎日、ねむるだけ。

さらに職場まで毎日、マウンテンバイクで通い(駅4つ分)完全に身体を動かすことでなにもかもをうめながら過ごした4か月。

おもしろいもので体力がついてくると何かをやる元気がわいてくる。

そのときに「フランス語でも習うか」とおもいたったのです。

自分の人生は、自分でデザインする。そんな体験ができた国がフランスだったから、もういっぺん行ってみようとおもい。

そうと決めれば話ははやい。さっそく調べて当時、六本木にあったフランス語専門の語学学校に申し込みをしました。2002年の5月のことです。

・このフレーズをつかうことはあるのか

入門コースということで、簡単なあいさつや1から100までの数、動詞の活用をフランス人の先生から毎週2回、仕事の後に習いました。少人数制で、同級生のなかにはフランス語を第二外国語で選択する学生さんや外資系企業勤務でスイス人の上司とのコミュニケーションとして勉強にきている会社員もいるなか。

みんなはアウトプットする機会や話す相手が学校のそとにある。

今の生活でまったくフランス語をつかう必要がない、いくら習ってもつかう場所がないのだと気が付きました。

自分は習ったさきに、なにをしたいのか。

はじめるときの勢いがみるみるうちにしぼみそうになりました。そんなある日、テキストで「あなたは色鉛筆をもっていますか?」という構文をならったときに。

この先の人生で、この構文を使うチャンスはくるんだろうか。

習ったフレーズをつかうことはあるのか。

そう自問した先に、光のようなものがみえました。

授業終了後に自宅からフランスに住む友人にメールを送り、7月から渡仏すること、3か月間の観光ビザでいれるだけいようとおもっていること、大学の夏期講座に申し込む予定であること、を伝えました。

自分の行動だけが意味をつくったり必然に変えてくれる。

フランス語をせっかくはじめたんだから、自分もみんなみたいに「使える」環境にいけばいい。そんな簡単なことにようやく気が付きました。

・手加減ゼロ、いきた語学テキスト

渡仏直前に最低限の単語(数字)と自己紹介、トイレの場所や「ビール下さい」「お替りお願いします」「会計お願いします」含めた日常的に使えそうなフレーズだけたたきこんでおきました。が、夏期講座のレベルチェックのための試験で己の甘さにぶちあたりました。

・何言ってるかわからない早口のフランス語の書き取り
・条件法過去や接続法半過去など日本語でも難解な文法

こりゃダメだとおもいつつ、面接試験では持ち前の度胸と一夜漬けの自己紹介と熱意(?)をフランス語で伝え、レベル別に3つわかれたクラス編成でまんなかのクラスになんとか潜り込めました。

指定テキストをジベール・ジュンヌ(学生御用達の書店)で購入し、さっそくひらいた瞬間に「自習2時間コースだ、、、」と愕然としたページはこちらです(現物)。

(表紙。ボロボロ。17年経った今でも大事につかっています)

連続モノで男女含めたグループの青春ストーリー。イラストみてもわかるように、医師である青年をめぐる女性二人のバトルのシーン。授業二日目にしてわたしは嫉妬まみれた女性登場人物の「なにそれいったい(怒)?」「まじでありえないんだけど!」というフランス語を学びました。いやあ、ためになる!

これぞ生きた語学テキストです。使えるフレーズしかなかった。毎日、単語を調べながら笑ったり、何度も練習した。

登場人物でモテモテのカメラマン女性、マンションでうっかり住民の噂話のターゲットになる瞬間。「彼女の彼ってあの若いお医者さんでしょ、たしか3階(日本で言う2階)に住んでる」等々、人を評するときに確実に使うであろうフレーズを学びつつ。

みんなでレストランでおもいおもいの注文をするシーン。お目当てのものがみつからず「残念!」と嘆いたり、シードル(林檎酒)を瓶で頼むかグラスで飲むか?と質問され登場人物よりも先にわたしが「瓶で!」と脳内で注文したり。実際につかえる場面、用語、フレーズのオンパレードでした。

午前中はテキスト1単元(見開き2ページの会話と2ページの文法)、午後は発音(音声学)。ちょうどフランスがEUに加盟し、経済的に強かった時期だったことも手伝い「フランスで働きたい」と隣国でもあるイタリアやスペインはもちろん、アメリカ、ロシア、イギリス、オランダ、など各国の留学生が真剣に勉強にきていました。

授業中はフランス語しかつかってはいけなかったので、休み時間に仲良くなった友人たちと英語ではなして息抜きしたものです。大学の夏期講座終了後は私立の語学学校にも通い、人生で一番勉強しました。

・なぜ、そこまでやれたのか

特に仕事になる保証があったわけでもなく、職場も留学前にやめたので帰国後のあてもない。でも結果からいうと帰国して仕事もみつかったし、フランス語をつかう仕事も経験できたし、フランスに関わる企画にいま参加しています。

とことん一定期間に集中する、やりこむ。それだけが未来のチャンスを運んできてくれるんじゃないかなとおもっています。

必要な「環境」や「時間」を捻出できればもうあとは動くだけ。

モチベーションの保ちかたやあげる方法は自分でみつけるしかない。

そのためにはとにかくいろいろ試してみること。

「愛はどこへ?」と銘打たれた章、別れを決意した女性カメラマンを何とか翻意させようと言葉をつくす青年医師。この単元までくると生徒のわたしたちも完全に物語の虜となっていました。のちにフランス人にこのテキストをみせたときに「若いね」とつぶやいていたのを今でも覚えています。

そう。愛は刹那的。そして移ろいやすいもの。

通行人のムッシューが「愛だね、愛。人生はいいね」とつぶやくラストシーン。このテキストのおかげでわたしのフランス語学習および恋愛へのモチベーションは爆上がりしました。かけがえのないテキストです。

***

職場のヤングのひとりが、月末に退職し夢にまで見たオーストラリア留学に旅立つことに。ずっといきたかったけど勇気がでなかった。まだ遅くないですよね、行ってきます!と笑顔で報告をもらった。

そう。いくつになっても遅くない。

7月14日の今日は「パリ祭」と呼ばれるバスティーユ牢獄襲撃に由来するフランス革命を記念した建国記念日です。吉日。せっかくだから今日からフランス語のやり直し学習をはじめます。まだまだやれる。楽しみます!

トリスと金麦と一人娘(2023 春から大学生になり、巣立ちます)をこよなく愛する48歳。ぜひどこかで一緒に飲みたいですね。