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夕陽の後にはジンギスカン


来たる週末。

密かに心待ちにしていた週末が訪れた。
一体何があるのかと言うと、それは至ってシンプルなもの。

ジンギスカンの食べ放題に、我はゆくのだ。


ずっと肉が食べたかった。
日々の食事で摂る量の肉では無く、無心でガツガツ食べたかった。
検診が終わってからその日を待ち望んでいたのだがなかなか機会が訪れず、ガツガツ欲を忘れかけていた頃。同じくガツ欲を持った友人と何とか都合をつけ、いよいよその時が来た。
いざゆかん。肉を食らうのだ!生ラムだ!ジンギスカンだー!

肉、野菜、ライスおかわりOK!


お馴染みのジンギスカン鍋がいい感じに熱してきた所に焼き脂(豚なのか羊なのか分からなかった)をくるくる。外側に野菜、内側に肉を焼くと、どんどん美味しい脂を野菜が纏っていく。
さぁ焼けたか、焼けたのか?準備は整った?

「よし!食べるぞー!」

そう言ってる最中から箸は肉と野菜を持ち上げ、タレへどぼん。
塩分キツめのタレが生ラムには最適なのだが、付け過ぎないようにちょっと浮かせて落としたり、サッと引き上げたりして、健康への工夫と書いて悪足掻きも欠かさない。

ジュウジュウ焼けた肉にはビール!と言いたい所だが、何せ自分はアルコール激弱人間。
ほろ酔いを半分だけ飲んで満足して、後はラップした上に輪ゴムをきつく巻いて明日飲もう〜と言いつつ忘れて数日後に捨てるという、どうしようもない激弱人間なのだ。(ほろ酔いに失礼だからもう買うな!)

それに飲んだら帰りはタクシーかと思うと、こちとら地下鉄が無いのでかなり痛い出費に。
お酒への執着が然程無いのならば、飲まなくても良いよね。というヘルシーかつ守銭奴的思考が勝った私達は車移動に決めた。
そして焼けた肉にノンアルコールビールを決めた。本当はお酒が強い友人が「最近のノンアル美味しいわ!」なんて言うもんだから、余計に美味しく感じた。

肉だ!肉だ!野菜も美味い!
ジンギスカン特有の微かな匂いも、肉を欲していた体には堪らないものがあった。

最初に出された食材をあっという間に平らげ、さあ二周目に行きますか。(元を取りたい精神)
が、しかし。
いざ運ばれて来て、焼いて、肉を一口頬張ると、一瞬「……ぐっ…」と何かくるものがあった。やばい。ここに来て若干の獣臭が自分を追い詰め始めたのだ。
それは友人も同じだったようで、同じタイミングで「ライス」と言うワードがでてきた。一周目でライスは全部食べてもう良いかな?と思いきや、何と、“ライスが無いと肉が入りそうに無いや……”という事態に!

とにかくこれはマズイとライスをおかわり。少なめで、と念を押した。
が、ここで更なる刺客来たる。
嘘だろ!最初で出てきたライスと同じボリュームじゃないか!
店員さん、若いお兄さんだったしな。きっとあの店員さんの少なめライス基準がこれなんだろうさ……と声と箸を震わせながら我らは再び食べ始めた。

間違いなく美味しい生ラムだったはずが、後半にもなると少なめライス(1.5杯くらいはある)も追い打ちをかけ、もう一年くらいはラムの顔見たく無いという気持ちに。
生ラムジンギスカンと私の蜜月は1時間も無かった気がする。早。

喋るのもままならないくらいに膨れ上がったお腹を抱えた私達はそそくさと車に戻り、楽な態勢でぼんやりテレビを眺めていた。
ただ、象が映っていた。
静かなナレーションと象。そして茫然とラムに苛まれる中年二人組。静かな時間だった。


そうだ、ジンギスカンを食べに行く前に良い夕景に出逢った。
我が街は夕陽自慢な所があるのだが、悔しいけれどそれは本当だと思うし、この街が好きな理由でもある。


ここはわかる人にはわかるでしょう。


今度はラムしゃぶも食べたいと意気込んでいる。懲りない奴だな、と自分でも思う。

でも結構そんなものじゃないですか。

何かを食べ過ぎて「もう暫くいいわ」とか言いつつ、翌日食べてるなんてこと。

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