あんかけ焼きそばの話し
※茶番劇仕立ての回
ある日、母が突然こう言った。
「あんた知ってた?あんかけ焼きそば食べてると最後の方シャバシャバになるの、あれって人によるらしいよ!」
は?そんな話し聞いた事無いし、そもそもあんかけ焼きそばってそういうものじゃないの?
全く朝から何を言い出すのかと思えば……。
「人による?そんなわけ」
そう笑いながらも、体内からじわじわと暗雲が立ち込めてくるのがわかった。(想像すると怖い)
待てよ、もし母が言うように人によるならば、あのあんかけが最後まで“あん”としての姿を保てる人間が存在すると言うことなのか?
「友達がそう言うんだわ!私のは最後水みたいになってるのに!確かにあの人のは最後まで“あんかけ”だったんだよ……!」
ううむ、誠の話しなのか。
しかしそれが誠の話しならば「最後あんかけ水になる族」と「最後まであんかけとろみ族」の二手に別れるという事になる。
となると、「水になる族」が少々恥ずかしい気持ちになるのは何故なのだ!?
「アミラーゼってやつなんだと。その人の唾液にいるアミラーゼってやつがあんかけを水にするんだとさ!」
嘘だ……嘘だと言ってくれ!
だってこれまで何人もの友達とあんかけ焼きそば食べたけど、みんな大体最後は水状になってたし!そうだ!日本人は皆そうなのでは!?
「違うんだよ。さっきも言った通りT子(友人)は最後まで麺にあんがしっかり絡んでたんだよ……そろそろ認めなさい」
くっ……。
そんなやり取りをしてから数日後。
「最後あんかけ水になる族」の親子は中華料理屋へと向かった。性懲りも無くあんかけ焼きそばが名物の店へと。
先日の記憶が残っていた私はあんかけを回避しようと、今日は麻婆豆腐のハーフとライスにしようと決めていた。(あんかけ 検索)
だが、いざ注文する時に咄嗟に出て来た言葉は「あんかけ焼きそば」だった。
やはりこの店の“あんかけ焼きそば”という強力な磁力には勝てなかった。
アミラーゼを気にして若干早めに食べたので、今回はそこまで水にはならなかった気がする。
そもそも酸っぱいもの好きな私は、途中から赤酢を豪快にかけるのでそれで更にシャバシャバなのでは?と都合の良い理由を付けた。
今回もこの店のあんかけ焼きそばは美味しかった。
美味しかったらそれで良いじゃないか。
ちなみにこの時、母はスープご飯を頼んでいた。
きっとアミラーゼに怯んで「最初から水状」を選んだに違いない。
そして「やっぱあんかけ焼きそばって美味しいよね」と、ぼそっと呟く母であった。
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