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あさはなノート in Hokkaido

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北海道で2018年までに書いたエッセイ的なものを、ブログから転載。
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記事一覧

桜は「春の訪れ」なんかじゃない

桜は「春の訪れ」なんかじゃない

ツイッターの中が桜の写真でにぎわっている。
テレビでも、代々木公園にお花見をしに来た人たちの姿を映したりしていて、世間はすっかり春の訪れを祝っている。それもとても華やかに、晴れ晴れしく、盛大に。

けれど…北海道の春は遅い。
今桜の開花を喜んでいる人たちよりも長いこと冬を耐えてきた。しかも気温は氷点下20度台に達するほどの厳しい冬だ。
今年は北海道すらも春の訪れがいつもより早めとはいえ、田んぼにも

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気候と生活コスト~沖縄と北海道の移動に思うこと

気候と生活コスト~沖縄と北海道の移動に思うこと

身軽であることや、生活コストを下げることを考えている最近の私にとって、まだ春とは言えない北海道という北国と、初夏の陽気に満ちた沖縄という南国を行き来したこの一週間はとても貴重な体験になった。たとえ初めてではない体験だとしても(北海道⇔沖縄の移動はこれで6回目だ)、その時の心境によっては、全く新しい体験になりうるのだ。

気候と生活コストのこともっとも考えたのは、北国で暮らすことの、コスト面のデメリ

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旅から帰れば、秋 (知床・十勝旅レポ)

旅から帰れば、秋 (知床・十勝旅レポ)

*2017年8月30日に書いたものです

念願の知床に行ってきた。総走行距離、約1,000キロ。そして帰って来て、疲れ果てて眠って、目が覚めた月曜日、上川には秋がきていた。

私は本当に雨女で、前から決まっていた予定の日は天気が悪い事が多いのに、今回は、地元は天気が悪く、旅先の道東は真夏のような陽気だった。空の青と、豊かな森の緑と、海の青を心の底から楽しみにしていた私には、これ以上ないお天気で、神

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田んぼのお花畑とお気楽な百姓の話

田んぼのお花畑とお気楽な百姓の話

*2017年8月14日に書いたものです

この写真はちょっと、専業農家の人が見たら笑っちゃうよね。

田んぼの一部が、こんなに雑草に覆われ、鮮やかなまでに花を咲かせている図なんて(だいたい、オモダカとコナギ)。

私も通りかかるたび、ついクスッと笑ってしまう。それは雑草を退治しきれなかった父をバカにしているのではなく、単純に面白いと思うからだ。こんな田んぼ、他に見たことないもの(これは、苗が足りな

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田んぼとクラシック

田んぼとクラシック

*2017年6月7日に書いたものです

恩田陸の「蜜蜂と遠雷」、それから赤石路代の「あるとのあ」を読み直してから、クラシックのピアノの曲をいろいろ聴いているのだけど

うちの畑、ことに田んぼは、なんてピアノが合うんでしょう

除草剤を使わないうちの田んぼでは、手押しの除草機と素手でひたすら雑草をとる。

今年田んぼとして新しく使い始めたところは、森のすぐ手前なので夕方になると部分的に木の陰になるけ

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哀れむのは自分だけでいい

哀れむのは自分だけでいい

*2016年7月9日に書いたものです

「地域の進学校を出て、国公立大学を出たにもかかわらず、就職に役立つ資格も取らず、興味のあった保育士という職に就き、ものすごく安いお給料で、将来結婚もして女性を養っていかなければならないのに、自分が暮らしてくのに精いっぱいなんてかわいそう、男の子なのに」

とあるイベントである50歳前後の女性が、同じ職場の若者の事をそんなふうに言っていて、

(ええ、まさに私

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絶望を教える先生、希望を教える先生

絶望を教える先生、希望を教える先生

*2015年6月29日に書いたものです

私はすでに教育大をドロップアウトした身なので、ある意味無責任で、「じゃあおまえが学校業界に入って体質を変えろよ」とか言われるとすみませんとしか言えないんですが、学校の先生や教育に携わる人に求めることのひとつに「多様な働き方があることを示せる存在でいてほしい」ということがあります。

『お茶の水女子大の文学部はどう?』

尊敬する母校の現在の進路指導の先生と

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農家の娘だけど本当は何も知らない

農家の娘だけど本当は何も知らない

私の両親は当麻町で(私が当麻小に入学するころ)新規就農しました。20年ほど前のことです。

物心ついたころから両親は毎日外で畑仕事をして、とれた作物を配達したり、作物を加工して販売したりしていました。

幼いころから、我が家で使っている調味料はほぼ無添加で国産のものだと知っていたし、加工品も、例えば豆腐はここの、納豆はここの、と、決まっていました。

お米やお肉や卵は決まった知り合いの農家さんから

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初夏、母への手紙

初夏、母への手紙

やぁ、元気ですか?

今では母さんとすらLINE*ができるようになったけど、私が女子寮*の頃、「あなたは手紙を書くことを忘れなくてエライ!」と母さんに言われたことがあるので、たまには手紙を書きます(笑)キョリがあるからこそ、メールだけにならずに済んでいるのかも。

○○くん(弟の名)に本送ります。私は読んでないけど^ ^;

最近小説はあまり読まないけど、千早茜*という作家が好きで時々読みます。私

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いつかがらがらと崩れおちる夢の国

いつかがらがらと崩れおちる夢の国

旭川駅の裏、開発されたばかりの北彩都ガーデンやガーデンセンターの周りを、最近よくひとりで歩く。

整然とした、近未来的で都会的な美しい河川敷。

カモが水面に弧線を描く池は、一面ガラス張りの旭川駅の夜の明かりを写し込んで鏡のよう。

夕闇は、曇り空ですら青く白く幻想的な色合いに染め上げ、そこには点在する「橋のまち」の控えめな街灯がまたたく。

私はうっとりとした気持ちで池のほとりを歩きながら、その

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私は不自然な存在だから、雑草のように死にたい [エッセイ]

私は不自然な存在だから、雑草のように死にたい [エッセイ]

日曜日、晴天。

私は菜っ葉のハウスで、ナスやピーマンの横で、20~30センチほどに伸びた草たちをむしっていた。

久々に陽ざしをたっぷり浴びた草たちはいきいきしていて、再びどんどん空へ伸びていこうとしていたので、むしるのはかわいそうな気がしたけど、しょうがない。

むしってもむしっても伸びていくから、とりあえず今だけ通路をスッキリさせさせておくれ、という気持ちでむしっていた。

でもむしっている

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いい風の日は、くるくるまわる [エッセイ]

いい風の日は、くるくるまわる [エッセイ]

日曜日。

私は当麻町の実家の畑でくるくる回っていた。

真夏のように暑い日が続いた後、急に11度くらいまでしか上がらない雨とくもりの日が続いて(北海道の一部では雪も降ったそうな…)、寒いとたくさん着込んで体も丸まっちゃうし、しゃきっとしない。

だから土曜日の畑仕事、どうもノらなくて。

(暑いのはしんどいけど、やっぱりハウスはくもってドヨーンとしているより、汗が噴き出して止まらないくらいの方が

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