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「たかだかニジュウマンかしたくらいで」

何から話せばいいのだろうか。

これは懺悔であり、言い訳であり、自己嫌悪の吐露であり、反省であり、そして自分に対する諦めで、赦しだ。

前回、「結婚してもいいと思った時のこと」という記事を書いた。これは、「結婚してもいい」という気持ちが失われた経緯と理由の話でもある。

この人となら結婚生活も楽しそうだと思えた人への気持ちが失せてしまった原因は、とても陳腐でつまらないことに、「オカネ」だった。

私は元恋人に、数回にわけて、計20万円ほど貸した。
また、早くお金の問題が解決するように、リゾートバイトやすきまバイトアプリ、農業限定のバイトアプリなど、有効な身分証をまともに持っていない彼でも登録できる仕事を懸命に探してすすめた。

この記事では、彼のことを責めたいわけではなく、いくつかの理由で私の気持ちが冷めた事実について、ただ振り返りたい。
だから彼の名誉のためにもはっきり書き加えておくが、彼はこれまで少しずつ返済してくれているし、働きたがらなかったこともない。別れた今となっては詳しく分からないが、最後に会った時もバイトを複数掛け持ちしていた。

だから、彼は私を困らせたかったわけではなく、私と過ごし続けるために足りない分を一時的に私に求めただけだ。私と離れて、一時的に実家に戻り生活費を貯めてからまた一緒にいる、という選択もあったけど、彼はそれを選ばなかった。

でも、どれだけ彼に悪気はないと分かっていても、返す意思があることも分かっていても、私は自分の中から恋心が少しずつ失われていくのを止めることができなかった。
私が貸したお金で、彼がタバコを買う時。仕事の送り迎えをする時。私のココロから、ぽろぽろと何かが抜け落ちていくのを感じていた。

私は4人姉弟の長女で、いつも弟三人の面倒を見てきた。そのうち二人とは年が離れていたし、親が離婚して生まれ育った北海道から遠く沖縄に引っ越した時なども、心配で心配でたまらなくて、いつも陰に日向に、手を差し伸べてきたつもりだ。

身近な人をつい面倒を見てしまう性格の私は、手とり足とりお金や仕事の世話をしているうち、自然と彼を恋人ではなく、庇護すべき対象として認識するようになってしまったんだと思う。大事なので、助けるけれど、家族のようなもので、異性として恋したり、甘える対象ではなくなった。

私は、そもそも家族になる予定だったのだからと、男として見れなくなっても、家族として思えるなら、このまま関係を続けられるのではないかと甘い想定をしていた。でも、彼はそれを許さなかった。私が、男と女として触れ合うことに、抵抗を見せることを、彼は許さなかった。


かくして、一度は結婚を了解し合った私たちの恋愛関係は、終わった。

私にはどうすることもできなかった、というのが率直な思いだった。
私だって、好きなままでいられるならそうしたかった。結婚したら、誰より喜ぶのは彼自身だとわかっていたし、そうしたかった。


男として好きでいられなくなった要因を作ったのは、彼だ。
私は悪くない。だから前をむいて先に進もう。
そう思って、仕事が決まって引っ越してきた今の場所でひとり暮らしをしている。

でも、この話を人に打ち明けると、時々言われる。
「もともとお金がないことは知っていたでしょ?」
「お金がないことは悪いことじゃないんだよ」
「たかが金のことで嫌わなくても」
「それもかわいいところと許してあげられないの?」


あれ。
あれれれー

やっぱり私がココロの狭い女ってことになるのかー

けっこう多くの人にそう言われるから、きっとそうなんだろう。少なくとも、そういう側面は私に間違いなくあるんだろう。

でも。
でも。

お金にいい加減だったから、という理屈で、見放したわけじゃない。
お金と仕事の世話を焼いたことで、恋心が消えちゃったんだよ。いつのまにか、なくなっちゃったんだよ。

これくらい、たいしたことじゃない。
そう、理性で自分に言い聞かせても、心は失われていった。自然と。
家族としてはそばにいられる。
そう思おうとしたけど、彼にとってもそれではダメだった。


どんな心境を並べても、言い訳だなー
と、感じるくらいには、罪悪感はある。
彼が何をしてもどんなに頼りなくてもどーんとかまえてやさしく笑っていられるマリア様みたいな人だったらよかった。

でも私はそういう人じゃなかったから、さっさと次へ行ってよね
私もそうするから

どれだけ反省したとしても、失われた気持ちは、戻らないんだから。



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