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ミニシアター・コンプレックスの時代到来!

映画館について取材を受ける事が多いがミニシアターという概念が曖昧過ぎる。普通は小さくてメジャーではない作品をかける映画館というところだろうか。ちょっとその考え古すぎない⁈   歴史を紐解くと日本最初のミニシアターは、新宿のシネマスクエアとうきゅうは、81年オープンでキャパは224席。広い!224席だよ!

2016年に閉館したシネマライズは3館の時は303席、220席、38席だった。今のユーロスペースは145席、92席。そして、昨年オープンしたTOHO シネマズ日比谷は11スクリーン中98席が5スクリーンある。ユーロより小さいのが5つである。TOHOは日比谷にミニシアターを5つ作ったと言ってもいいのではなかろうか。

というようにミニシアターは客席が100席前後というのは間違っている。60席くらいのスクリーンは多くのシネコンにあるし。未確認情報だが、丸の内ピカデリーをリニューアルにあたって、2階席を改装し、50席ほどのスクリーンを2つ作るらしいという話も聞いた。

ミニシアターってそこでしかやってない推しの作品を上映してるところでしょと思っている人も多いと思う。でも、ロブ・ライナー監督の『記者たち』はTOHOシネマズシャンテだけで上映中、片山慎三監督の『岬の兄妹』はイオンシネマ板橋が当初は一番回数を多く上映。5月31日公開の奥山大史監督のインディーズ映画『僕はイエス様が嫌い』はTOHO日比谷でだけで上映予定。

というように、シネコンはアート系映画とかインディーズはかけないでしょという思い込みも間違っている。逆のパターンで東映配給の水谷豊監督の『轢き逃げ 最高の最悪な日』は渋谷は渋谷東映でなくユーロスペースで、そしてアップリンク吉祥寺で上映する。

90年代シネコンが出来始めてからは(歴史上は84年にできたキネカ大森が日本初のシネコンと言われている)そこはメジャー作品をかける場だった。でも今は98席のTOHO のシネコンでインディーズがかかる時代だ。ではなぜメディアの人はミニシアターがなくなっていく大変な時代という思い込みがあるのか。

確かに、吉祥寺バウスシアターは2014年に閉館した。客席数は218,105,50の3スクリーンだった。ただ、閉館まで勤めていた現場スタッフの証言によれば、客足は伸びていたということだ。では、なぜ閉館したのか、吉祥寺独特の借地権の更新とか閉館した理由は色々あると思う。その辺りをメディアは正確な事実を取材せずに映画館閉館をニューシネマパラダイスになぞらえてセンチメンタルに取り上げる。

かつてのミニシアタービジネスは大変だ。今では、都心部でも100席を満員にするのは限られた作品だ。観客の観たい映画はより多様になっている。日本での劇場公開本数は増えているが、1本あたりの興収は減っている。1スクリーンのミニシアターでは観客の観たい映画の多様性に答えることは難しい。大企業は資本があるので観客の嗜好の多様性に応じてシネコンをミニシアター化した。しかし80年代以降にできたミニシアターは時代の変化に施設を作り変えれなかった。なぜならば、改装資金を工面するのが大変だからだ。

そこで、アップリンクは「マイクロミニシアター」というコンセプトでキャパ40席前後の3スクリーンの映画館をできる範囲の予算で作った。100席のミニシアターでも大きすぎるので、58、 45、41というマイクロミニサイズだ。映画の上映がフィルムからデジタルになったのも大きかった。映写室がいらなくなった。既存のビルで天井が低くてもなんとか映画を上映するスペースを確保した。そしてデジタルのおかげで番組編成も多様に組むことができるようになった。サーバーに映画のデータをインジェストすればいいだけになったので可能になったからである。

アップリンクとパルコと共同で作った「アップリンク吉祥寺」のコンセプトは、「ミニシアター・コンプレックス」である。98、63、58、52、29席という5つのミニシアターをシネコンのように設計している。アップリンク渋谷と違い億単位のお金がかかった。吉祥寺の成功を聞きつけいくつものデベロッパーから話だけは来るようになった。お金を用意してくれるのなら、運営は任せてください。僕らは3スクリーン以上の映画館の運営を黒字にするノウハウ築いてきたので。

でも、そんな大きな規模の映画館作りではなく「新しい地図」のメンバーがアップリンク渋谷で阪本順治監督の『半世界』を観て、これなら自分でも映画館を作れると感じたように、カジュアルな映画館を東京にも地方にも作りたい。日本は少子高齢化である。ミニシアター・コンプレックスのコンセプトが通用するのは都市部だけでしか通用しないだろう。もっと低コストで映画館を作る方法はないのだろうかと考える。先日、山口市に映画館を作る可能性はないかという依頼がありリサーチに行った。商店街はシャッター通りではなくそこそこ活気があったが、ところどころボコッと土地が空いていた。

地方はまず都市部と比較して土地が安い。既存のビルの中に映画館を作るのは様々な法規制があり、空調などの設備の取り回しでかなりコストが莫大にかかる。それならば、モジュール型の安いコストの映画館を作り、更地に置く方法はないだろうか。コンテナを利用してもいいと思う。更地に平屋の映画館であれば、建築基準法の興行所にかかってくる前面空地の問題や、避難経路の問題はクリアできることが多い。そして映画館は地方のコミュニティーの文化のハブとなる場所である。モジュール型にして、カフェやヨガ教室や書店を併設してもいい。

モジュール型の映画館のプロトタイプを作るため大学の建築家の研究室など協力してくれところはないだろうか。

さて、実は、この「ミニシアター・コンプレックス」というコンセプトの映画館がこの4月から次々とオープンする。4月12日に横浜と名古屋で『キノシネマ横浜みなとみらい』、『伏見ミリオン座』がオープンする、6月には『キノシネマ立川』、夏オープンする『京都みなみ会館』、そしてオープン日は未定だが『キノシネマ福岡』も発表されている。これらは3スクリーン以上あり従来のミニシアターとは違う「ミニシアター・コンプレックス」の時代がやってきたと言えるだろう。

メディアはアップリンク、キノシネマ、ミリオン座、みなみ会館の動きを「ミニシアター・コンプレックス」の時代として従来のミニシアターの概念をアップデートする取材してほしい。読者が読みたい、いい記事になると思いますよ!

取材歓迎です! asai@uplink.co.jp


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