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水槽の中の「ごはんですよ」

寒くなってきた関係で起こるめまいに対して、回転している方向の逆に頭をヘッドバンキングさせることで事なきを得ています。浅井です。
※真似しないでください。

生物として最弱

最近とある山を歩いたとき、長時間誰ともすれ違うこともなく、1人で熊鈴を鳴らしながら道を歩いていました。

山がお洒落しはじめる最高の時期

明るい間は景色も良く楽しかったのですが、見晴らしが悪くなり空が曇って薄暗くなると不安が襲ってきたのです。
まだ全然明るい時間のはずなのに、鬱蒼とした木々の影は暗く、私の不安を煽ります。
人間のいる音がせず、たまにざわざわと木々が喋るのみです。
そこにこだまするのは私の熊鈴だけ…。

低山で熊が出るような山ではないのですが、もしかしたら…と考えたら急に心細くなり、鳥がガサガサ動いている音にも過敏に反応してしまう始末でした。

急にサバイバル番組へ

一度「なにかこちらを見ている生き物がいるのではないか」と考えだしたら止まらず、黒い木の影が恐ろしい獣に見えるのです。
獣たちは私を見たら「なんか小さい生き物がポテポテ歩いてきたぞ、殺せ」と思うに決まっています。

人間は知らない人に話しかける時、無意識に「戦っても自分が勝てる相手」を選んでいるそうです。
私は街中で道を尋ねられることが多いですし、小型犬には吠えられまくるので、きっと地球上の生き物すべてからゲロ弱うんちと思われているのです。

心だけでも勝とうと不動明王を意識した表情でもくもくと足を進めました。

煩悩を断ち切れ

山を降りる手前の地点になるころには、頭の中は家の温かいご飯とお風呂のことでいっぱいになり、周りの植物を観察する余裕はありませんでした。
たまに顔を出してくる大きな渡り鳥にガチびびりつつ、私という小さな生き物は大きな自然の中で生物としての負けを感じ取ったのです。

帰りの電車で人込みの中に飛び込んだとき、心の底からホッとしました。
自分が人間の大きな群れの中にいることに安心したのです。

思わず笑顔

家で温かいお風呂に入り、温かいご飯を食べ、ゆっくりと布団に横になったとき、なんだか急に寂しくなって涙が出ました。
自然が人間に優しい顔をすることはないと思いつつ、どこかで優しくしてくれるのでは?と期待している自分がいたのだと思います。
それでも美しいな~と思ってしまうのは生物の性でしょうか。

熊がほぼ出ない山にしか登っていないので、私がとんでもなくビビりなだけなのですが昨今のニュースを見ていると熊祭りですからね。
気を付けて悪いことはないはずです。
それでも一度噴出した恐怖を抑えるのがこれほど困難なことだとは…。

マタギの方に何度か会ったことがあるのですが、冷静さの中にどこか凄みがありました。
並大抵の精神力では続けてはいけないことだなと再認識。
将来的に鶏を外で飼いたいので罠免許は取得したいのですが、やはり猟銃を持てる精神力はありません。

山に人間の社会はないです。あれは魑魅魍魎のいる世界です。

すっかりしょげてしまったので今期の山歩きは辞めて街道歩きかB級スポット散策をしようと思います。
人間社会は素晴らしいです。小さき生き物も安心してポテポテ歩けます。

老魚ホーム開設

年を経たメダカは人間と同じく、肌ツヤがなくなり、背骨も曲がり、泳ぎがゆっくりになります。
泳ぎに支障が出る子も出てくるので、今年の夏ごろメダカ老人ホーム水槽を立ち上げました。

上しか見ない上昇志向の生き物。KAWAII

水流の小さな水槽で現在は2匹います。
寂しくないように水草を入れたり休めるお家をいくつか配置しています。
老魚になってからも長い子は1年以上元気に泳いでくれたりするので、こういうホームがあると私も安心です。

泳ぎがヨボヨボしたり、底にお腹をつけて休んでいることが多くなるのですが、それはそれでかわいいです。
おじいちゃんおばあちゃんメダカになると、休みながらも身体と目は私の方を向けていることが多いのも面白いところです。
食べることへの興味が減って、テレビ感覚で私を見ているのでしょう。

しかし、その水槽を立ち上げてすぐにトラブルが発生しました。

シアノバクテリアです。

コケっぽいけどなんかヒゲが底から生えてるみたいな感じ

シアノバクテリアは、太古の昔からこの地球上に存在している藻類みたいな植物プランクトンです。ぬめぬめしたコケみたいな集合体です。
現在の地球環境を作ってくれた素晴らしい存在なのですが、増殖すると水槽内が「ごはんですよ」に侵食されるのです。
シアノバクテリアはどんな水槽にもいるのですが、水のバランスが崩れない限りは増殖しません。

メダカと暮らしてきて今まで一度も増殖したことがなかったのですが、一瞬で爆増し水槽の底に貼りつきだしたのです。

シアノバクテリア自体はメダカなどの生体に影響はないので放置しようかなと思ったのですが、こやつ臭いのです!アンモニアの匂いを発生させるのです。
ああもうとにかくなんかツーンとしてくせえのです!ウウゥー!!!
一瞬でも「ナウシカの腐海の森みたいになったら面白いな~」なんて思って様子見をしていた自分が憎いです。

こちらは美味しくて良いにおいの方

何がここまで水質に影響を与えたのか分からず1ヶ月ほど水替えを多くして対処していました。

それでも消えることはなく、簡単に薬剤を使おうかなとも思ったのですが、高齢のメダカの水槽なのでそれは最終手段にしました。

いろんな文献を漁ってみたところ、今の老魚ホーム水槽は「水槽の水に溶け込んでいる栄養素を、植物が吸収できていない」状態なのではないかという結論に至りました。

残り餌やメダカの糞尿で、窒素やリン酸が少しずつ蓄積し、富栄養化してしまっている状態…つまり水の成分に偏りがあって、バランスが崩れているということです。

植物が窒素やリン酸を自らの身体に栄養素として吸収するとき、「窒素5:リン酸3:カリウム2…」など決まった割合があります。
「カリウムだけ10吸おう」とか「窒素2にしてリン酸は5くらい吸おう」とか「カリウムいらないから他のだけ吸おう」とかできません。
人間も吸ったりはいたりするときの成分に決まった割合があるのと同じです。

窒素とリン酸は10あるのにカリウムが0の状態ならば、どんなにリン酸や窒素があっても植物が栄養を取り込むことはできません。

原始的な生物であるシアノバクテリアは今の栄養素が偏った老魚水槽の水も吸収・分解できるが、他の植物は栄養を取り込めない状態になっているのではないかと考えました。

そう考えると、足りないのはカリウムです。
窒素やリン酸は餌の残りやフンなどから生成されますが、カリウムは生成されないのです。
カリウムは水替えのとき加えていたのですが、少なかったのかもしれません。

とりあえず植物の水質浄化能力に頼ろうと、シアノバクテリアを手作業で除去しつつ、水溶性カリウムと鉄分を毎日ごく少量ずつ水槽へ添加し続けました。
その結果、約一ヶ月半でほとんど消えていきました。
水質を浄化させる植物としてポトスとアロマティカス・水菜を追加で植えたのですが、どれもツヤが出て大きく育ちました。

今現在、老魚メダカは綺麗な水槽でのんびり泳いでいます。

結論として、老魚ホームにシアノバクテリアが発生した原因は、水槽内の「窒素・リン酸・カリウム…」など成分のバランスが悪くなっていたことが大きな理由のひとつだと思います。
あくまで推測でしかなく、もしかしたら温度や他の理由も複雑に絡んでいると思います。
シアノバクテリアは水流に弱いところがあるらしいので、それも一因でしょう。

水槽は小さな地球です。
地球はとんでもなく大きいから、カリウムを一滴垂らしたとしても影響はほぼ0だけど、水槽内だと大きな変化です。
貝類にも影響がなかったのでホッとしましたが、本当にちょっとしたことで生態系は崩れるんだなあと緊張しました。

シアノバクテリアは見た目が悪いので、アクアリウム好きからは嫌われていますが、富栄養化した水を浄化してくれる良いヤツでもあることを忘れないようにしたいです。

地球はロマンに溢れていますね。