死を迎える人間が、どういう心境になるのかは、
そばで見ていても想像がつかなかった。
ただ一つわかったことは、
母の場合は信仰が強い力になり、
「イエス様がずっとそばにいてくださる」ということが、
そうとうの救いになっていたようだった。
死の前夜、母はわりと元気に、集まった家族と会話した。
これならもう少し大丈夫そうだと思った。
帰り際に、「明日もまた会えるよね?」と尋ねると、
母は首をかしげて、「バイバイ」と言った。
それが母との最後の会話だった。
夜が降りて来る
王女様
呼吸
聖なる夜
扉3
12月27日AM6:05
epilogue
人は死んだら雲になる。
どの宗教の教えでもないかもしれないが、私はそんな風に考えている。
母親を亡くした人はよく
「いつも母がそばにいてくれる気がします」
と言うが、うちの親に限ってはまるでそんな気配はない。
まるで肉体を離れた自由を謳歌するように空をかけまわり、
こちらのことは素知らぬ顔。
ただし、いざという時にだけ何かしらのメッセージを送ってくれる。
光の場所へ 2012年1月5日