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バルゼレッタ barzelletta vol.31

はじめての食材

アンジェラは毎食の料理に
違う献立、という約束をちゃんと守り、
あれやこれやといろいろな料理を作ってくれた。

つくる時は材料の調達からほぼ一緒に、
メルカートに行ったり、漁師の営む魚屋だったり、

時には農園の周りの自生のハーブを摘むところからだったり、

料理は必ず工程をきちんと説明してくれた。

雨が数日降り続いた後の晴れ間のある日
散歩しようとバケツを持たされ

ぬれた中、何で散歩?と不思議だったが
庭に出ると
エンツォがバケツ片手に何か探して歩いている。

「レイコもとるんだよ!」と言って見せてくれたものはなんと

バケツの中にはカタツムリが入っている!

カタツムリって、そういえば雨の後に現れるな~
なんて子供の頃を思い出しながら

庭の草むらに目を凝らすと

いるわいるわ!
葉っぱの上にわんさわんさと!

日本にいるカタツムリとあんまり変わりない!(ような気がする)

この方たちはこれを食する!

バケツ一杯にするにはそう時間はかからなかった。
それをどうするのか?と言われるがままにしていると

穴のあっちこっちに空いた段ボールを指さして
「これに入れるんだよ」と

箱を開けるとすでにカタツムリがたくさん!

彼らにこの箱の中で一週間以上断食させて、糞をださせてから料理するんだそうで、

げ~~~~
という顔をした私にエンツォは
「フランスでは高級食材なんだよ」と笑いながらいう。

そりゃ、有名ですがね。
プーリアでもウサギを食べた初めての日本人、と言われましたが
ここでもか!

(野生の)カタツムリを食べる初めての日本人になるのか
と観念しましたわたくし。

アンジェラはミニトマトとイタリアンパセリ、

にんにくと塩少々、白ワイン、
そしてもちろん自家製エキストラバージンオリーブオイルを
カタツムリにた~ぷりかけて蒸し煮。

一個恐る恐る、口に入れ食べてみた。
美味しゅうございましたわよ。

貝の磯臭くない版、
といったらわかりやすいでしょうかね?

悪くない!

また、酒蒸ししただけのものに
にんにく、エキストラバージンオリーブオイル、イタリアンパセリを
が~ってミキシングしたものをソースにして

いただいたり。

こりこりした歯ごたえはサザエのようです。
とても美味しゅうございましたよ!

また別なある日、

エンツォは
頭だけがない羊を一頭持ち帰ってきた(目が・・・点)

一頭を手際よく肉用の独特なナイフを使い丁寧にパーツに分けていく。
手際がとてもいい。慣れている。

さらに部位ごとに小分けに処理。
臓物も全部パーツに分けて、

それぞれをビニール袋に入れて冷凍庫に。

あれ、食べるんじゃないのか?
とほっとしたような少しがっかりだったような。

しかし、バケツの中に真っ黒いものが残ってる。
なにこれ!?

エンツォは
「これをレイコに食べてもらいたいんだよ~」と言う。

「なんですかこれ(この気持ち悪いもんはと心の中で)?」

山で放牧で育ったという羊の真っ黒い臓物。
熱湯をぶっかけ、エンツォ、たわしでごしごしやりだした。

すると
真っ黒がこそげ落ちて白いのがでてきた!

し、白い!なんで?
「これは一体何?」

「胃袋だよ」と。

アンジェラの手に渡り、
ざくざくに切り刻み圧力鍋に入れ、、
トマトとにんにく、イタリアンパセリ、エキストラバージンと共に煮込むこと数十分。

何とも言えない、獣肉のくさ~い嫌なにおいが部屋中に充満。。。

ごほごほっ、

いや~
これは私、いいや(食べなくても)
と思いましたが、

食べないわけいかないじゃないですか!

いただきましたよ!

皿に盛りつけたそれも臭い!

こちらもえいっ!と意を決し口に放り込み噛み噛みしてみると、

ん?え?あれ?

止めていた鼻の息を復活させて良く味わってみると
う、うまい!う、うますぎる!

とろとろとろ~となった羊の胃袋、いわゆるトリッパってやつです
おいしい!

エンツォが作った自家製赤ワインと共にいただくと
また合う!

パクパク、私むさぼり食らいました。
鍋一体あったのを全員でぺろりと平らげ、

エンツォは満足げ。

片田舎のイタリアの果ての果て、
だからこそのおいしさは想像以上だった。

次号に続く


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