見出し画像

バルゼレッタ barzelletta vol.30

シチリアの不信

シチリア島の最南端シャッカという町の農家民宿。
この農家ももちろん有機栽培のオリーブ農家だ。

どんな料理にもふんだんに
自家製オリーブオイルをたっぷり使うのは当たり前。

ココの前に滞在していた
プーリア州の農家民宿・ニーナさんちでもびっくりしたが
料理に使うオリーブオイルの量は半端ではない。

なべ底にたっぷり、
または材料直にた~っぷりかける。

それはたぶん、私以外の日本人がみても
ぎょっとする量だ。

この農家民宿の奥さんアンジェラも同じく。

私は、ニーナさんが特別じゃない、
イタリア料理はこのようにオリーブオイルをふんだんに使うのが
当たり前なんだ、と思った。

油脂であるオリーブオイルであるが、

『油で調理する』
というより

『調味料で味付けする』
『素材の味を引き出す』

だ。

ゆでたカリフラワーにオリーブオイルをかけただけのシンプル温サラダ。

これはこの時点ではどうしてあのようにおいしいのかはわからない、
それはずっとたってからわかったこと。

その時が来るまでのお楽しみ!

さて滞在してしばらくすると

丁度オリーブの収穫間近だった為
その準備でこの民宿の主人・エンツォは大忙しだった。

周りの農家さんは
オリーブ畑で農薬を噴霧しているのを何度も見た。

オリーブはあともう少しで収穫だってのに、
農薬か!

そういうものなんだ~とも思った。

また私はここで初めて搾油所の存在を知る。

オリーブは収穫してから製油(搾油)工程があるわけだが
自分のところで機械を持ち加工する農家はほとんどいない。

搾油所に摘んだオリーブ果実を持ち込んで油にしてもらうのだ。

エンツォは収穫を前に搾油所に挨拶に行くから
レイコも一緒に来なさいと誘ってくれた。

そして搾油所ってものに初めて足を踏み入れた。

民宿近くのオリーブ農家さんは
誰も収穫を始めている人はいないのに

工場は既に稼動していた。

そして搾られて出てきたオリーブオイルを
私はそこで生まれて初めて見た!

遠心分離の管から流れ出ているのは深緑色なのだが
下の桶に溜まっていくオイルは黒と茶と白のぶくぶく泡であふれている。

どうみてもまずそうな汁だ。

げ~~~何これ!

エンツォは笑いながら

「これは雹(ひょう)でやられて実に傷がついた通常の収穫まで待てないもの。
熟す前に落下しちゃったもの、このオイルはピザ屋に行くんだよ」

だって!

え~~ピザ屋!

「ピザ屋はいいオイルを使ってないからね~」

これがほんとかどうかは定かではないが
今から思えばピザ屋はエキストラバージンは使わない、ってことなのだろう。

(※全てのピザ屋さんがこのようなオイルを使う訳ではありません念のため)

こんなの食べたくないな~と心の中で思う。

ふ~~ん
オリーブオイルってこんなモンなんだな~と
なんか見ちゃいけないモン見てしまったな~

ついでに桶に指を入れて舐めてみたが
まずいなんてモンじゃない!

プーリアで食べた自家製エキストラバージン、
エンツォの自家製エキストラバージンとは雲泥の差だ!

オリーブオイルのかぐわしい香りは全く無し。
焼けたような香りと味。

エンツォはそんなもん食べちゃってレイコったら、
やれやれといったあきれ顔で私を見ていた。

次号に続く


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?