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田舎のカフェ事情

「認知症カフェ」という文字を市の広報で見た時、「ああ、もうカフェもダメやな」と思ったのを覚えています。その時、私はまだカフェをやっていたのですが、そろそろやめ時かと、思うひとつのキッカケとなりました。私はカフェを2軒やりました。1軒目は1996年です。喫茶店からカフェへと移行している時代で「カフェをやっている」と言っても、「え?コーヒーとケーキ出してるなら喫茶店でしょ?」と言われるような時代。2軒目は2005年、ランチにシンガポールチキンライスとタイカレーを売りにした店でした。いちおう括りはカフェ。

私が始めた頃、まだ「カフェはちょっとおしゃれ」って感じでした。お客さんも少し尖った人が多かったです。店に専門的なアートの雑誌を置いてると反応してくれたり、昼からワインを飲んでくれるような感じ。やっている側としても、お客さんから刺激をもらうこともしばしば。しかし、周囲にカフェが増え始めた頃から、お客さんの形態が変わって行きました。そもそも、昼間にカフェに行けるような人は限られています。

・仕事をしていない奥さん
・営業の外回り
・年寄り

まあ、この3つなんです。東京ならパソコン持ったノマド系の人がいるかもなんだけど、13万人都市の田舎だと、みんな自分の事務所があるんで、そこで仕事する。カフェで仕事してる人なんかまずおらん。それから、買い物はネットか郊外のショッピングモールでするから、買い物の合間に来る人もおらん。田舎ではカフェにはみんな車で乗り付けてくる。だから基本駐車場が必要。しかも場合によってはひとり1台で来るからな。4人で4台とか、コンビニ並みの駐車場が必要になってくる。まあ、うちは駐車場4台で押し切ってたけど。

で、上記の3種の人たちから刺激を得られるかと言うと、別の意味の刺激はあっても、文化的教養的刺激はほぼ皆無。この3つのお客さんのうち、営業の外回りと年寄りはもともと喫茶店を利用していた人たちです。カフェの台頭で、喫茶が減り、そこから流れてきたのでは、と推測しています。最初はおしゃれでとっつきにくいカフェも、チェーン店カフェが出来てくれば入店しやすくなり、高いと思っていた個人店の敷居も、いったん入ってしまえば、もう楽勝。あとはそれに奥さんが加わった形でカフェのお客さんが形作られました。

もちろん、一番比率が多いのは奥さんです。カフェに入店して、周りがほとんど女。ということは珍しくありません。そういう人たちの多くはそのカフェが好きで行っている、というよりは「気兼ねなくおしゃべりができる空間を提供してくれているお店でできればおしゃれなところ」という感じですので、もし、そのお店がつぶれても、次のお店を探して行くだけです。農業地帯を襲うバッタみたいなもんです。

林さんが何度も飲食店のことを書いてらっしゃいますが、本当に客単価が低いのがカフェです。中にはコーヒー1杯の原価は安いから儲かる。なんて人もいるかも知れませんが、それはUCCやアートコーヒーなど、大手の喫茶店相手のコーヒーメーカーから仕入れていた喫茶店時代の話。アイスコーヒーも今は店で作っていることがほとんどですが、昔はパックから注いでいましたしね。それで回転率が良ければ儲かるでしょう。

でも、今のカフェはどっちかと言うと「空間を提供」しているわけです。雰囲気重視。なのに、その空間代は大抵値段に入ってないですね。入っているとしても、せいぜいほかの店より100円~200円値段が高いくらいと思います。仮にコーヒーが800円だとすると、お客さんというのは、元を取ろうとしますから、より長居をします。まあ、300円でも長居するんですが…。

これがバーだと、同じ滞在時間の中で2杯目、3杯目を飲みますから、断然率がいい。コーヒー1杯800円で2時間滞在されるよりも、800円のお酒を3杯飲んでもらったほうがいい。単純な計算です。800円のコーヒーで2時間居座られたら腹立つじゃないですか。何がいやって、この精神的ストレスですよ。

普通、お客さんだからありがたい。来てもらって嬉しいんです。けど、こういうバッタ系のお客さんが来るようになると、精神を蝕まれます(ちなみに、一人語りのオレ自慢高齢者にも蝕まれる)。バーのお客さんは、一人2500円の人もいれば、一人で2万円つかう人もいる。だから、バランスが取れて、例え単価の低いお客さんでもおおらかな気持ちで接客ができる。けど、カフェでこういう差は出ない。だから、精神的に苦痛になってきます。

さて、冒頭の「認知症カフェ」に戻ります。私の中で「行政がその名称を使うようになったらもうイケてない証拠」というのがあります。例えば「クールジャパン」はNHKがやりだしたころはまだクールだったけど、国が施策として打ち出したらもうクールじゃない。それと同じです。「カフェ」という言葉はすでに使い古されてきてます。今は逆に「喫茶」が浮上していますよね。

今、まだカフェをやりたい人が多いみたいで、それも全然いいのですが、もしカフェを経営していることが「カッコいい」と思っているなら、それはもうちょっと違うんちゃうかな。カフェってもう出尽くして、すごいカフェもとうに登場して、今度はそこからどれだけ残って行くか、成熟していくか(お客さんも含めて)、というフェーズかな、と思います。もちろん、今からそれを目指すのもアリでしょう。

なんか林さんのこの記事を読んで、すごい言いたいことがワーって出てきたので、って言うか、いつも林さんの記事読むと(特に飲食系の記事)それについて私も色々考えちゃう、言いたいこといっぱい出て来ちゃう。なので、いつか最終的にお店に行って色々お話をしてみたい。けど、東京出張はいつも一人で行くわけで、林さんとこは一人の入店は不可(ちなみに、その理由も分かりすぎるほど分かる)。なので、そのうち一緒に行ってくれる人を募集します。そのときはよろしくです。

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