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水田皮膚病を知ってるかい(7)

恐怖の源泉はなんだと思いますか?それは「分からないこと」「知らないこと」ではないでしょうか。これまで散々田んぼにおける寄生虫感染の話をしてきました。ただ「ヤダ!田んぼの水に手を入れると寄生虫に感染するみたい!怖い!」って思ってる方も、まだ多いと思います。

それでは、どういった条件で感染するのでしょうか。今回、私は感染しましたが、私と同じくらい田植えをしていた母はまったく症状が出ませんでした。つまり同じ条件下にいたにもかかわらず、セルカリアに寄生されなかったのです。また、他の参加者の話を聞いても、全員が等しく同じ症状になるのではなく、ごく軽症の人もいました。

1.「無農薬の田んぼに入って手で田植え」をした人たちの中にセルカリア皮膚炎になった者がいる。

2.「セルカリア皮膚炎」になった者は全員「無農薬の田んぼに入って手で田植え」をしていた。

1と2。これどちらも正しいんですね。けど、2.だけ見ると「無農薬の田んぼに入って手で田植え」をした者、全員が感染するような錯覚に囚われます。こういうの、ホントに注意が必要と思います。これに限らず、日常的な報道や情報にありがちな構図です。必要絶対条件?絶対必要条件?なんかそういうのです。

さて、この問題児セルカリアくん、年中水の上に浮いていると思いますか?自然界にはそれ相応の時期というのが存在します。サクラが夏に咲いたり、セミが冬に鳴きだしたり、紅葉が春先に散ったりしませんね。セルカリアが中間宿主から水中に放出されるのはまず間違いなく5月~6月の初夏です。これはちょうど田植えの時期と重なり、そこで感染例が報告されています。ちなみに、田んぼの水に手を浸す仕事、というのは

・田植え
・差し苗(機械で植えられなかったところを手で補植すること)
・雑草取り

概ねこの3つです。そして、この3つの作業は5月~7月くらいまでで終わり、あとの時期はほとんど田んぼの中に手を入れる仕事はありません。つまり、この時期に感染が多いのも当然。この時期にしか田んぼの中に手を入れないからなのです。では、他の季節は大丈夫なの?と、言われると、それが分からない。こういう短命の寄生虫のサイクルは季節とは関係ないかも知れない。もしかすると他の季節も水面に浮いているかも知れませんよね。ただ、中間宿主であるモノアラガイの活動時期とは重なりますから、厳寒の時期ではないように思います。冬場は貝も冬眠しますから。

一方で、この症状が「無農薬の田んぼ」でしか発生していない。というのは本当なのでしょうか。国内の田んぼのほぼ全てで農薬が使われています。農薬を使わない田んぼももちろんありますが、全体から言えばごくわずか。手植えをしている田んぼというのはさらに少なく、人材確保や労働量を考えるととても流通向けとは言えません。

1. 石油エネルギーを使わないことなど、こだわった農法を選択している
2. 市民田んぼなど、田んぼに興味をもってもらうためのイベント
3. 棚田など、機械の入らない田んぼ

このような場合に手植えが行われていることがほとんどです。また、1の農法の場合、当然無農薬です。2の場合も食育や自然栽培などと関連していることが多く、無農薬が多い。3の場合は、棚田のオーナー制度を取ることで、管理を地元農家がしている。そのため、労働削減のため農薬を使っていることが多いです。(自分の田の場合は無農薬のことも)

そもそも、市場に流通する米を作っているような田んぼは無農薬がどうか以前に手で植えることはしません。ですから、セルカリアに感染することもないのです。つまり、

・手植えで田植えをする

これがセルカリアに寄生される絶対的第一条件です。とにかく、生の手をセルカリアの浮いた水中に出し入れする。これが原因で感染します。無農薬だろうが、農薬を使っていようが、手を入れなければ感染しないのですから。

※これらは熊野にある丸山千枚田です。このように各田んぼにオーナーが割り当てられ、地元の人が管理をしています。

私は「農薬」とにいいましたが、これは「食べ物」というのを同じくらい大雑把なくくりです。以前にこのような記事も書いています。

田んぼで使われる農薬の筆頭は「除草剤」。雑草を抑制するためのもので、減農薬や低農薬を謳っている農家さんでも最低限使っています。他にも、カメムシを防除するための薬なんかもあります。それら、農薬のどれかがもしかすると、中間宿主であるモノアラガイに作用して、死滅させている可能性があります。ちなみに、日本住血吸虫の中間宿主であるミヤイリガイは生石灰によって駆逐が劇的に進みました。中間宿主が死滅した場合、当然セルカリアは発生しません。ですので、農薬を使っている田んぼよりも、なんにも使ってない無農薬の田んぼのほうがセルカリアに感染する確率は高いと言えます。ただ、どの農薬がどのようなタイミングでモノアラガイに作用するのかは分かりません。死ぬかどうかも分かりません。農薬を使っているからと言って、確実に感染しない。という保証もありません。ですので、

・農薬を使用した田んぼよりも、農薬不使用の田んぼのほうがより確率が高い。

と、言えるでしょう。では、どうしてもこういう状況下で田植えをすることになった場合、どのように防除すればよいのでしょうか。

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Yuki

結婚を20年で卒業。伊勢河崎で「中谷武司協会」を経営。クッキー「サトナカ」、民泊「たらちね」「パライソ ウメダ」を運営管理。元夫とこれまでリノベーションした家や蔵は8軒。すべて自分たちの使用に供しました。実家で無農薬米と豆を栽培。尊敬する生き物は虫で趣味…続きはtwitterへ!

おなごがひとりで始める小さな田んぼ

自給の中でも難しい稲作を女がやったらどうなるか、と、写真中心に紹介していきます。
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