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結婚したあと親戚づきあいがラクになる方法

いつものように「ふんふんふん~」とtwitterを見ていたら、知り合いのOさんが野本響子さんの記事をシェアしていました。で、読んだときに「これって、結婚にも当てはまらん?」と思いましたので、ちょっと書いてみます。

人には2つの種類があると言います。

1、周りと同じことをすることで安心する人たち
2、周りと同じことをするのが嫌な人たち

例えば、出始めた頃タピオカを買った人は2の人たち。今、タピオカの列に並んでいるのは1の人たち。で、2の人たちはもうタピオカに興味がない。最初から「タピオカ何それ?」と言っているのも2の人。

1日に3000個売れるような人気商品です!と言われて「え!じゃあ私も買わなきゃ!」と買うのが1の人で、「なんや、売れてるんやったらいらんわ」というのが2の人。

まあ、私は2の人間なんですが、別に2の人間がすごいとか、エライとかいうつもりはないんです。

私の場合「ほかの人とは違うことで突出しようとする長女の性(さが)」なんです。鼓笛隊では笛ではなくピアニカやリラベルをやって大きな顔をする。大して上手くもないのに合唱コンクールでピアノを引き受け本番で失敗する。みんながやめとけと言った人と付き合って貸したお金が返ってこない。親の反対を押し切って駆け落ちする。

そんな感じで「わしゃあ、人とは違うんやで」という生き方をあえて選んできました。結婚相手も人並みじゃありませんでした。

親に反対され、駆け落ちして結婚したのはいいけど「二度と家の敷居はまたぐな!」と言われ、親とも断絶。しかし、息子が生まれたらあっけなく親と和解。子どもの威力ってすごい。

そんなある日、祖父の法事があるから予定を開けておくように、と連絡が。当然、旦那であるタケシくんも頭数に入ってます。N.Y.に8年住んでいた絵描きの武司くん「ええよ、オレも行ったらええんやろ」と快諾。しかし、この人、法事というものを分かってない。アメリカ帰りやからな。「Yukiさんと結婚させてください」って言わずに「Yukiさんは僕と結婚します」って言うた人やからな。それにそもそも、法事に適した服や靴というのがない。どうしよう…。かと言って、「洋服の青山」で、このためだけに喪服を買うのもバカバカしい。そう思っていたところに、タケシくんが

「おれ、これで行くわ」

と、出してきたのがオズワルド・ボーテングの紺色のスーツ(ちなみに裏地は蛍光黄緑色)。絵の売り上げを1円も家に入れることなく、売上のすべてをオレ様のためだけに使っていたタケシくんが買った「オレの自慢のスーツ」です。

「そんで靴はこれにするわ」

と出したのが同じくオズワルドのピカピカのオレンジ色の靴。ちょっと待って、いやいや、これじゃなくても、もっと茶色とかそういうのあるやん。

「アホやな。このスーツにはこの色なんや」

マジですか。法事には作法にうるさい横浜のマキコおばちゃんも来るんやけど。「あなた、出産祝いのお返しが遅いわよ!」って、息子を産んでまだ暗い部屋で半分横になって養生していた私に、怒りの電話をしてきた、あのマキコおばちゃんやで。しかし、タケシくんは自分の色合わせにむしろウキウキしている。小心者で保守的なところも大いにある私は、不安でいっぱい。面倒なことになるんじゃないかな?ええいままよ!もう知らん!と、半分ヤケになって法事へと向かいました。もちろん、私はうるさいマキコおばちゃんに用心して上から下まで黒づくめ。

さて、ひととおり法事も終わり、会食の会場へ向かっていた時。マキコおばちゃんがツカツカとタケシくんのところへ。ああ、言われる。おばちゃんに言われるで。もちろん、オレンジ色の靴がひときわ目立っていたのは言うまでもありません。マキコおばちゃんは言いました。

「あなたのその靴!ステキね」

え?え?なんですか?

「あ!ホントですか?ありがとうございます!」

とタケシくん。

「さすがだわ~。センスが違うわねぇ」
「いや~、そうっすか?」

ご意見番的なマキコおばちゃんが褒めたもんだから、他の周りのおじさんたちも

「ほうほう、ホントだねー。いい靴だね」

と褒めだす。え、なんなの?そういうアンタら全員黒づくめやん。タケシくんだけ異端やん。けど褒めてるん?なんで?なあ、なんで?と困惑する私。

結局、タケシくんの靴は咎められるどころかベタ褒めされ、なぜか株が上昇。このことがあって以来彼は、たいていの場面において「いや~、タケちゃんやからね~」で、許される立場となりました。これ、もし「法事なんだからちゃんと周りと合わせて、黒い服で行かないと!青山で買ったヤツを着て行かないと…」って、やってたら、こうはならなかったと思うんです。

「オレはオレ流」をタケシくんが貫き通したおかげで「この人はしゃーない枠」に入った。「法事」という、一族感満載の行事で「オレ流」を公表したことで、おのずと親戚全般にも行きわたった。これ、地味にすごくないですか?いちいち口で言わなくても、オレンジの靴だけで「この人はしゃーない枠」に入れたんですよ。しかも、私の親も「な、この人こういう人なんですよ、Yukiの旦那はもうしゃーないんですわ、はっはっは」というエクスキューズにもなった。素晴らしい!全員がハッピー!

それまでは、法事に限らず、正月やお盆の集まりと言った家族的イベントは「武司も来て当然だろ」という態度だった親も、それ以後「どうかな?タケシくんは来れるんかな?」というお訊ねに変りました。何しろ予定調和をぶっ飛ばせ的な人ですから、何かと面倒なわけです。だけど、私としてはすごい楽になった。だって、タケシくんが自分を表明してくれたおかげで、いちいち親に合わせたり、顔色を窺わなくてもよくなった。もし、タケシくんが一般的にうちの親や親せきに気遣って、相手に合わせていたら、これからもずっと合わせなくちゃいけなかったと思うんです。けど、最初に「バーーン!これがオレ!」ってやってくれたから、もうあと全然ラク!

野本さんが書いてらした「変わり者枠」の結婚版って、これのことなのです。親兄弟、親戚の中に「変わり者枠」に入れてもらったら、もうあとの親戚づきあいめっちゃラクです。そして、子どもが生まれたらそのあとも「変わり者枠」で行きましょう。

結婚した当初は「もう!めんどくさい人だなー。大人しくうちの親に受けのいいようにしてよ」と思っていた私ですが、大間違いです。大人しく親の受けのいいようにしていたら、その後、ずっと受けのいいようにしなくちゃいけない。よかったんです。オレンジの靴で。よかったんです。駆け落ちで。それに、多分全体的なバランスを見た時「変わり者」って必要なんです。「変わり者」がいることで「よかった、俺たち普通だ」って思ってもらえる。ウィンウィンなんです。

とにかく、親の期待にはことごとく応えるな。やりたいようにやれ。結果、23歳で家を捨てて駆け落ちしたけど、52歳の今、実家に戻って農業を継いでいる私。人生っておもしろいなー、と思いますし、親もそう思ってると思います。そもそも等身大だったタケシくんは、うちの親の期待に何も応えてない。それだけに、ちょっといいことすると逆にめちゃ株が上がる。この、「この人しゃーない枠」、ぜひおすすめします。

※私とタケシくんは二人でこういう仕事をしています。


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