「リタイアして農業」のトラップ

料理人になるために、コンロの横にゴミ箱を置き、何度も何度もオムライスを作って、失敗すれば横のゴミ箱にどんどん入れていく。という話を聞いたことがあります。いわゆる洋食のキレイなオムライスの形にするための修行ですね。失敗すればまたボールに入った卵液をフライパンに入れればいいのです。1日に何回も、成功するまで、上手になるまで挑戦することができます。

あの時の手首の返しがまずかったな、もうちょっと角度を変えて…火加減もちょっとキツかったしな。よし、次は失敗しないぞ!と、思った時。次に作れるのが来年だったらどうでしょう。まさに、それが農作物を作る、ということなのです。

失敗したときは原因がありますから、それを探求しないといけません。でも、それが自分のせいだけとも限らないのがこれまた農業。

天候、肥料の効き具合、土質、害虫や鳥などの外敵、種まきの時期、植え替えを朝にしたか、夕方にしたか、水のあげすぎ、あげなさすぎ、支柱の立て方、誘引の仕方、剪定の位置、摘芯のタイミング。もしかしてアレ?それともコレ?
原因がひとつとは限りません。これとコレが重なるとダメ、コレがだめだった、でもアレが効いて助かった。生物、化学、気象、地質、隣の畑のおっさんの助言、向かいの家のばあさんの知恵、使えるものはみんな総動員。パズルのように組み合わせて気がつけばそのことばかり考えています。

オムレツなら火が強ければ焦げます、塩が多かったら食べてすぐに分かります。でも、農作物の場合、原因から結果まで1ヶ月や2ヶ月は普通、まあ、4ヶ月くらいはありますから、何が原因だったのか特定するのは素人には難しいです。

ようやく原因が分かったとしても、次に試せるのは1年後。翌年また失敗すればその次の年に試します。オムレツを1日に10回作ることは簡単ですが、農作物の場合は10回作るのに10年かかるのです。農業に触れたことのない人は、まずは、その時間の感覚を知っておくといいと思います。

失敗するのが嫌い。10年すべて上手く作りたい人もいるでしょう。そういう人は、農薬や化学肥料を使う慣行農法が向いていると思います。失敗しないように工夫されて発達してきたものだからです。もちろん、それだけで成功するわけではありません。とは言え、オーガニックな農法と比べれば、はるかに失敗しにくいとは思います。

失敗するのが平気、あるいは好きな人、自分で考えるのが好きな人は無農薬、無肥料や有機栽培に向いていると思います。色々試すといいと思います。そのために、なるべく早い時期に農業を始めるのがいいでしょう。なにしろ1年に1回しか作れません。例えば「定年してからゆっくり農園でも始めるか」と思っても、60歳でスタートしてちょっとものになった頃はもう70歳。

私は、それを考えた時に、45歳でワインバーをやめて、夜の生活から朝型の生活へ切り替えました。じゃあ、もっと早く、40歳のときすればよかったかと言うと、それはできなかったと思います。何ていうか、ちょっと華やかな世界にまだ身を置いていたかったんですね。それが、いつの間にかそういう世界に対する執着がなくなった。だから45歳でちょうどよかったのかな、と思います。10年やって55歳。まあまあ、いい年齢でやめることができたと思ってます。20代で始める人もいるでしょうし、やっぱり60歳くらいで始める人もいると思います。人それぞれとは思いますが、自分なりに取り組めばなかなか楽しい世界です。

※写真はネコブセンチュウに侵されたキュウリの根っこ。これを見て「わー、キュウリにも根粒菌があるんや!」と喜んでいた私…。何事も体験して覚えるのが信条です。

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Yuki

おなごがひとりで始める小さな田んぼ

自給の中でも難しい稲作を女がやったらどうなるか、と、写真中心に紹介していきます。
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