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私の「むしろ」愛を聞いてくれ

「針のむしろ」とはどういう意味ですか?と、yahooの知恵袋にありました。「針」は当然分かりますよね。わからないのは「むしろ」のほうです。実は、うちの店で販売している「日干番茶」はこう書いてあります。

「ちゃんとむしろで天日干し」

ちなみに「むしろ」の3文字には「・」を打って強調してあります。それを見たお客さん、不思議そうな顔をしていたんです。で、私が「今どきむしろで干したお茶を売ってるところなんてないですよ~」って、ちょっと自慢気に言ったら、お客さん、まだ「???」って顔。30代半ばくらいのカップルです。「あ!もしかして…むしろが分かんない?」と聞いたら、やっぱりそう。

えーーーー!!!

って。まあ、言われてみればそうか。そうだよね。日々の暮らしにむしろなんて、誰も使ってないしね。それで、お客さんを店の外に連れてって見てもらいました。むしろを。

これがむしろですよー。しかも!国産ですよ。中国産じゃないの。だから厚みもしっかりあって、フカフカなのよ。…って、私が熱く語っても「ええ!そりゃすごい!中国産なんてペラッペラですもんね!これは本当に厚くて上物ですね。いや、マジでもうこんなもの手に入らないですよね」なんて言うわけもありませんわ。それどころか「へー…(どうやって、何に使うんだろう…)」という顔をしていらっしゃるわけです。

わたくし、昔の道具を集めるのが大好きで、地元の粗大ごみのときなんかに、農家を辞めた人が大量に昔の農具なんかを持ってくるの「わー!これ捨てるの?くださいください!」ってもらってくるんですね。なんでかと言うと、将来化石燃料が高騰しすぎて手に入らなくなったとき、電気とか使えなくなった時に必要じゃん、って思ってるんです。この話すると「なにそれ!ウケる!」なんて、笑われるんだけど、マジです。

だってね、今ガソリンがないと田んぼ耕せないんです、収穫できない。お米が作れないんですよ。電気がないと脱穀もできないんです。個人で自分の分のお米作るだけでも必要です。で、現在私はそういったものに頼ってお米作ってるけど、もし、世界情勢が変わって、そういったものがね、使えなくなる。可能性はゼロじゃないでしょ。そうなっても自分たちが食べる分だけは作れるように、リスクヘッジとして、昔の農具集めてんのよ。

不耕起栽培学んでるにもそういう理由です。耕さなくても作れる方法知っていたら、生き残れるな、と。まあ、私が生きてる間にそんなことが起こるかどうか分からないけど。

今、すごい便利な世の中で、S&Bのちゃちゃっと作れるミックス調味料も最近使うようになったし、麻婆豆腐の素も使うし、だしの素も使うわけです。忙しいし、とっても助かってる。けど、じゃあそれらがなければ料理ができないかと言うと、全然できる。だしも取るし、麻婆豆腐も豆板醤とドウチ使って1から作れる。農業もそういうことと一緒と思ってるんです。

もちろん、昔が不便で大変だったから、今のやり方になって助かってる部分も大きい。けど、農業政策でそうなってる部分も大きい。つまり、今の農業のやり方が崩壊する可能性は少なからずある。農協も問題視されてるし、大規模農家に集約されてきてる。小規模農家や自家栽培用の農家は今どんどん淘汰されてってますね。経済的に回らないのと、後継者不在で。大変な時代です。

で、冒頭のむしろ、粗大ごみの時に近所のTさんが持ってきたのを「わー、それ全部私にちょうだいー」と言って、大量にもらってきたものです。Tさんのお母さんが織った国産の上等のむしろ。ペラペラじゃない。本当に素晴らしいむしろです。

ほどよく蒸気を逃がしてくれて、お茶も気持ちよさそうじゃありませんか。

ほら、こんな風にカリカリに乾いて。度会町産の無農薬、無肥料の番茶ですよ。

ちなみに、これは藁で作ったバスケットみたいなの。昔はこれで運んでたんですよ。すごい技術。これももらったヤツです。

籾だねを干すのにもちょうどいい。

あぁ、ここまで書いて、私気づいたんですが、要は「美しい」んですよ。水色のビニールシートもね、便利だよ。私も使うよ。けどそこに機能はあっても「美」は皆無ですからね、皆無!!見てください。むしろ、断然美しいじゃないですか。うっとりしませんか?私はします。だから私、むしろが好きなの。だれか私とむしろについて、または昔の農具について語りませんか。また昔の農具いらない人がいたら言ってください。取りに行きますんでヨロ。

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