岡田麻沙

助詞を間違えたらすごい速さで関節を折りにくるタイプのライター。 略してタイプライター。

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  • 会話体験設計

    • 9本

    会話体験の設計方法について、フレーム・キャラクター・シナリオの視点から事例を交えて書いていきます。

  • 物語の作り方と、プランニングにまつわるあれこれ。

    • 1本

    プランニングに役立つかもしれないし、役立たないかもしれないシナリオ分析、小説の構造などなど。

  • わかりやすい文章のためのあれこれ

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  • 感性デザイン部

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    感性デザイン関係のあれこれ

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みんなの「み」の穴の中

心は言葉でできている、と言ったのはジャック・ラカンだ。 それで最近は、「み」のことが気になっている。 「わかりみ」の「み」は「みんな」の「み」だって思うから。 でも、みんなって一体、誰だ? わかりみが深い、優しみがある、うれしみ、よさみ……。この数年のうちに、たくさんの「み」が周囲に溢れた。いずれの「み」も新鮮な響きをたたえている。使うと楽しく、小気味が良い。けれども、どうしてだろう。「み」が増えれば増えるほど、自分自身から遠ざかってゆく気がする。 「わかりみが深い」と口

    • まもなくやってくる消滅のために|UXライターより

      ChatGPTの普及が進むなか、UXライターの存在意義はいつ消滅するともしれない。直近の知見を放出しておこうと思う。かつてUXライターと呼ばれるものたちが存在したことを覚えておいてほしい。 ここでは、①トーン&ボイス(プロダクトとしてユーザーに語りかける際の文体)、②品詞の使い分け、③機能名の決めかた、の3点について記しておく。 トーン&ボイス|マトリクスで検討するトーン&ボイスについては、「Material's Communication Principles」で言われ

      • 系譜

         曽祖母の代からクマール家に伝わる爪は、おどろくほど軽くて笑ってしまうくらいに丈夫だ。二センチと少し。ゆるいカーブを描くステンレスの表面には無数の細かな傷があって、シルバーというよりはくすんだ白に見える。三世代にわたりこの山の木々を引っ掻いてきた爪が纏う、栄誉の白だ。紙のように薄いのに、大木の表皮をすばやく抉り取ることができる。  ペリヤール国立公園の奥深くで陸上選手を営んでいる叔母は、目下のところ三人の生徒を抱えている。今年十六になる姪っ子のアニータと、同い年の友人ナイラ。

        • UXライターとはなにか

          UXライターです、というと「それはなに」と訊かれることが多い。「どうやったらなれるの」と相談されることも。概論的な日本語の資料は少ないし、自分のためにも書き留めておくことにした。 UXライターはどこにいるのか? UXライターという職業の人は、日本ではまだそんなに多くない。協会とかもない。公式の資格もない。野良だ。みんな野生のUXライターだ。 デザインの現場と、ゲーム制作現場、スマートスピーカーの会社なんかに生息している。あと事業会社にも。多分。 UXライターになるために

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        記事

          「とりとひとひと」

          ブンゲイファイトクラブ4応募作

          「とりとひとひと」

          質的に異なる二つのものが触れ合うときに生じる環状の流線について

          かぐやプラネット公募「果樹園SF」応募作  はじめは止めていたものの結局は絆されたということになるのか、どうしてもジヤくんに会いに行くと言い切った八重の声、その切実な感じにやられてしまい、大学のある方角にハンドルを切った。夜道に人影はない。隣で小さく息を呑んだ八重はきっと次の瞬間には笑いだす、そんなのはもう見なくてもわかる。  十年前、わたしと八重がまだ高校生だったころ、木は言葉になった。  植物ゲノムに文章生成アルゴリズムを書き込むことで誕生したこの言葉樹は、演算装

          質的に異なる二つのものが触れ合うときに生じる環状の流線について

          ライティングをひらく

          私の職業はライターだ。 記事を書いたり、サービスのコンセプトやステートメントをこしらえたりしている。個人で請け負うのは、いわゆる「記事を書く仕事」。ひとりで作業をする時間がとても多い。 いっぽう、Goodpatch Anywhereのメンバーとして試みているライティングは、もう少し賑やかだ。多様なユーザーを想定したデザインをおこなうとき、そのプロセスはすでに、いろんな人たちに向けて開かれている。文章も同じだ。私たちライターは参加型のデザインワークにおいて、「たった一人の書き

          ライティングをひらく

          物語の作り方

          根がライターなので、ものごとを言葉で始めることしかできない。 企画を立てる際も「物語の作り方」をベースにしている。 この記事では、わたしがプランニングに使ったり使わなかったりしている物語の作り方に関するあれこれを紹介したい。 決まった進め方はない知り合いの作家さんたちに、「書き始め方」や「作り方」を聞いてみたことがある。彼らの答えは素晴らしくバラバラだった。 こんな風に。 構造から考える 最初の書き出しから取り掛かる 断片を寄せ集める 自我を手放す ……とはいえ、共通

          物語の作り方