心だって壊れても、また作り直せる

私は今、整形外科と内科の混合病棟で働いている。

以前ほど、がんの患者さんとは関わらないのだけど、最近1人だけがんの患者さんがいた。

その人はがんの痛みを抱えたまま、家族の希望でがん未告知のまま
退院の運びとなる。


帰り際、患者さんから

どうしてこんなに痛くてつらいのに、退院しなきゃいけないの?

と聞かれて

もう、手術不適応のがんで痛みのコントロールくらいしかできることがないからだよ。それなら病院にいても、おうちにいても一緒なの。これからどんどん悪くなっていくから、せめて今だけでもおうちで過ごして欲しいという先生と家族の意向なんだよ…

なんて言えるはずもなく

先生が退院をOKしてるから大丈夫よ。しんどくなったら、また戻ってきて下さいね。

と、当たり障りのない範囲で返答した。


この、がん告知問題。

家族の希望で最も多いのは、患者本人の精神的ショックを軽減したいから最期まで告知したくないという意見だ。

でも、考えてみて欲しい。

どんどん具合が悪くなるのに
大丈夫ですよ、と言われ退院させられる。

もしかしたら、がん…かも?

でも、家族は何も言わない。
先生も何も言わない。

みんな本当のことを言ってくれない。
誰も信じられない。

こういう思考回路を辿っても全然おかしくないのだ。他の身体的・精神的要因も含むけれど、疑心暗鬼から抑うつ状態になってしまう患者さんも少なくない。

つまり、がん未告知の場合でも、それなりの精神的負担を抱えることには変わりないのだ。

それなら、ちゃんと患者本人に現状や起こりうる未来を伝えて、残りの時間を有意義に過ごして欲しいと思う。


がんと告知されたら、一瞬お先真っ暗になるかもしれないけど、必ず光はある。夜が来てもまた朝が来るのと同じように。

どんなに弱い人でも、心はちゃんと立て直せる。壊れたら、また作り直せばいい。

立て直せないと思い込んでるのは、周りの人たちだけだ。壊れた患者を、家族を直視する覚悟がないから。


だから医療者こそ、患者さんを信じることを怠ってはいけない。患者本人の中にある希望を信じることもケアのひとつ。

こういう非科学的なことも、医療の要素の一部だと私は信じている。

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