見出し画像

いろんなお薬の効き方のはなし

これは、医療従事者からのアドバイスではありません。
あくまでも、創作物としてお読みいただけると幸いです。

おくすり、と言うとみなさん思い浮かべるのって飲み薬が一般的かと思います。

しかしですね

実は、いろんなところから投与できるんです…!

注射が一番効く気がする…!って意見が多いですが、それは痛い思いをしているから見返りが欲しいっていう取引の心理がはたらくだけですね。てへっ

どんなおくすりも、症状に合わせて、薬の効果がいかんなく発揮されるよう医師が投与経路を考えて処方しています。注射薬には注射薬の良さが、飲み薬にはまた違った良さがあります。

貼り薬も、そのうちのひとつ。
ですが先日、ハネサエさんが貼り薬に関してなめた発言をしておられたので

今回は、貼り薬を含め、いろんな薬の効き方の話をしようと思います。

なんか効いた気がしない
痛みがとれない
そこからの投与はちょっと…

など、いろいろ心中お察ししますが、たぶん、みなさんが思っているよりもくすりの投与方法ってたくさんあります。

そして、不満や不安、懐疑的なお気持ちもあるでしょうが、その投与経路がベターだとプロが判断しているんです。

そのため、くすりに関する知識。
自分のため、家族のためにも知っておくと、2ミリくらいは人生良くなる気がします(あさみ推定値)


吸い込む薬

なんとなく身体の上からいきたいと思います。
というわけで、まずはこれから。

口や鼻から吸い込む、吸入薬というものです。
喘息の人や手術で使う麻酔薬の中に、こういう類のものが多いかな。

液体から気体になるタイプもあれば、カプセルの中に粉が入っていてそれを吸い込むようなものもあります。くすりの形態はさまざま。


ネブライザーという、もくもくする煙を吸い込むやつもこの類に入ります。(耳鼻科に多いのかしら)

気管や肺にダイレクトアタックできるのがこの薬の利点。
気管を広げたり、痰の分泌を抑えたりすることを狙っています。


貼り薬

痛み止めや高血圧、喘息の人へ処方される気管支拡張剤に多い印象です。

おそらく、ロキソニンパップやモーラステープのイメージが強いと思いますが、高血圧や喘息など重篤な疾患に処方されることもあるので、やっぱり貼り薬はなめちゃいけない。

補足になりますが、がん末期の患者さんに処方されることの多い医療用麻薬もそのスタンダードは貼り薬。どんどん病気が進行し口から飲めなくなっても、血管がぼろぼろで注射が刺せなくなっても、皮膚がなくなることはまずありません。

じわじわと、少ない負荷で投与し続けることができるのが利点。

もうひとつ。

この薬の利点を言うと、原則1日1回でいいこと。
しかも、胸や腕など目に見えるところに貼っておけば、万が一剥がれてしまってもすぐにわかります。

高齢者の患者さんに多いのですが

効き目が切れてきた気がする…!

と言って、1日に何度も湿布やテープを張り替える人がいるんですが、正直あんまり意味ないです。上記の原則、1日1回貼ればいいようにできているので、効きめが薄れたとしたら、それは痛みが増しただけです。薬のせいじゃありません。


それから

飲んだかな?
飲んだっけ?
これで、飲み忘れたり、反対に過剰内服してしまうことを避けることもできます。貼り薬は、貼ってあることが目で見えますからね。

腰痛や外傷の痛みには、ロキソニンパップやモーラステープが効くと言われていますが、神経系の痛みには効果が乏しいと言われています。

湿布やテープでかぶれちゃうという人は、後述しますが塗り薬の痛み止めもあるので、ぜひ。


飲み薬

はい、鉄板の内服薬ですね。
錠剤、散剤(粉薬)、顆粒タイプ、シロップタイプ、液体などいろいろな形態があります。

これは、もう説明するまでもないと思うですが、消化管での消化・吸収によって薬の効果を発揮させるもの。

お水・お茶で飲んでください。
牛乳、コーヒー、サイダーはとてもやめてほしい…

1日1回しか飲まないなら、飲まなくても同じだろ?

という患者さんがたまにいるんですが、その理論、逆ですね。

1日1回しか飲まない薬のほうが、1日3回飲むものよりも大事なので、飲み忘れないようにしてもらいたいな〜っていうかメインの薬だからちゃんと飲めや!というのが本音。

難しい言葉で言うと、代謝されにくいんです。
だから1日1回なの。

最近は、OD錠といって、ボーロみたいに口の中で溶けやすいタイプのおくすりも出ているので、錠剤が苦手とか、粉薬が苦手とか、なんか試してみたい人は薬剤師さんにお尋ねしてみるのも、いいかもしれません。


舌の裏で溶かす薬

どういうこと…?と思う人がほとんどだと思うのですが、舌下錠(ぜっかじょう)といいます。舌の下で(ダジャレの意図はない)溶かす薬。

粘膜からの吸収を目的としているため、効果発揮までの時間がものすごく早いです。内服が約30分なのに比べて、舌下錠は約2分。速攻とはまさにこのこと。

有名なのは、ニトログリセリン錠。
狭心症発作が起こった時に投与します。

心臓の血管がきゅ〜って縮こまってしまうこの病気。ただちに対処しないと、そのままお陀仏になってしまうこともあるので、この舌下という経路がベストなんです。

仮に意識がとんでしまっても、舌の下やほっぺの内側なら他者でも投与可能ですからね。貼り薬は薬の効果が出るまでに時間がかかってしまうので、この場合はNG。

本人ではない誰かでも、速やかに投与できるというのが、この方法最大のメリット。


おしりから入れる薬

いわゆる、座薬ですね。
浣腸も一応ここに入ります。

大人は抵抗があるかもしれませんが、食べれない時&飲めない時に使えるのがこの方法。しかも、内服よりも薬の効果が早く発揮されると言われています。

私も毎回ではないですが、少なくとも週に1回は患者さんのおしりにぶすっといれていますね。それくらい、病院の中では市民権のある座薬。

とりわけ、小児科で解熱剤といえばまず座薬。吐き出されたり大泣きされるくらいなら、わけがわからないうちに一瞬でスッといれてしまえる座薬のほうが、双方とも負担が少ないんです。

ただ、下痢が続いているとか、いれたあとすぐにうんことともに出ちゃうとあんまり意味がないので、そこはケースバイケース。

あと、うんこがすぐそこまで迫ってる便秘だと、粘膜からうまく吸収されないので良くないですね。うんこ出してから座薬をいれます。

それから、めちゃくちゃどうでもいい情報ですが、おしりから何かをいれる趣味がある人にも不向きです。

本来、肛門でくすりがきゅっととどまるはずなんですが、ここがガバガバだと体温でとけた座薬が出てっちゃうんですよね。ふぁ〜って。

補足ですが、体温で溶けるのがこの薬の特徴。
そのため、保管は冷蔵庫がベターです。


膣からいれる薬

女性限定になりますが、こういうものもあります。
こちらも、座薬と一緒で粘膜吸収。

吸入薬と一緒で、膣や子宮頸部にダイレクトアタックできます。
主に、抗生剤や炎症を抑える薬ですね。

うまくいえませんが、タンポンなどで慣れている人もいれば、自分の膣に何か異物をいれるなんてやったことない…!って人もいるので、看護師と一緒に練習することもあります。だって、自分じゃ見えないもんね。

生理中にはNGとなることがあるので、そういう時は医師に相談を。


肌に塗る薬

かゆみ止め、が一般的でしょうか。
製品名だとアズノールもそこそこ知名度がありそう。

皮膚に直接塗布して、効果を発揮させるものです。
そのため、軟膏の風邪薬とか存在しないですね。
あったら私が買い占めたいレベル。

軟膏やクリーム、ローション、ゼリーなど、こちらも様々な形態があります。ステロイド関連は軟膏がほとんどかな。(小児用にはサトウザルべなどで薄めることもありますが…)

貼り薬でかぶれてしまう人は、ゲルタイプもおすすめ。塗って乾いてしまえば、そこまで肌に負担はかからないかなと思います。

そうそう。

こちらも貼り薬と一緒で、1日に何回も塗ったくる人がいるんですが、それだとただの乱用です。

特に、ステロイド薬は微量でも十分効果があるもので、つけすぎると副作用のほうが出てしまうこともあります。十分注意して欲しいです。


肌と筋肉のあいだにいれる薬

はい、ここから自分たちではできないシリーズ。
針を使ったものになります。うふふ。

これは皮下注射といいます。イメージでいうと、ツベルクリン反応をみるのに近いかな?(あれは皮内注射なので厳密には違うんですが…)

皮下注射で一般的なのは、インスリンを打ってる人ですね。
皮下に投与し、じっくりじんわり効かせていくものになります。

うっかり血管の中にいれてしまっては、さあ大変。
インスリンの場合、血糖値がスカイダイビングの勢いで下がっていきます。これはまじでヤバイ。

だから、お腹や太ももなど、皮下組織の豊かなところに打つのが一般的です。


筋肉にいれる薬

筋肉注射、ですね。

これは速攻ダイレクトアタックというよりかは、そこそこ早くまぁまぁ長く効いて欲しい時に使います。辛い症状をできるだけ抑える的なアレです。

上のサムネイルにもありますが、この注射は皮膚に対して直角に刺します。そのため、注射器をえんぴつのように持ってえいっ!て刺す人もいますが、それが正しい方法です。びっくりしないでね。

過去にインフルエンザになった時、いきなりパンツを脱がされおしりに注射され、しかもおしりを揉まれた時はさすがの私も診察室で叫んだらしいですが、そういう注射です。

針を刺される痛さ、薬液を注入される時の痛さ、そして揉まれる痛さの三重痛となっています。Mの世界へようこそ。

大人のみなさん、特に筋トレ民はその豊かな三角筋の中にブスッと刺されるのが通常なので、安心してください。


血管の中にいれる薬

いわゆる、点滴ですね。

今回は、腕からの点滴(抹消血管)に絞ります。
薬の濃度やスピードを変えて、適正量が投与されるように調整しています。

点滴が早い人と遅い人がいると思うのですが、そのスピードも医師の指示によるもの。

早くしたら早く終わるかと思って…

と、早さを調整する部分を勝手にいじる患者さんがいるんですが、危険なのでやめてください。

医師が投与スピードを指定していることがほとんどです。中には、早く投与することでよりリスキーとなる薬が混ざっていることだってあります。



おくすりは魔法のアイテムじゃない

はい、薬の効き方はこんな感じかな。

ハネサエさんともリプでお話しましたが、医師の処方箋が必要な薬は、医療保険適応内のものが多いです。ちゃんと効果があると立証され、国から認められているもの。

ただ、すごく残酷な言い方かもしれませんが、「あなたに100%効くかどうかは置いといて」という文言が隠れています。この世に、万人に100%効くくすりなんてありません。そんなのあったら、私が欲しい。

だから、くすりが効いたらラッキーくらいのマインドくらいが、ちょうどいいのかもしれません。

シナモンや生姜だって身体にいいし、漢方薬として用いられていますが、あくまでも食品由来。

インフルエンザでガタガタ震えている人に、医師からシナモン生姜紅茶を渡されたらパードゥン?ってなりますでしょ。ここはリレンザやタミフルが適していると思います。

(もちろん、シナモン生姜紅茶でインフルエンザを乗り切ってもいいと思う。私はやらないけど)


いろんなくすり、そして投与方法があるので、例えばどうしても座薬が苦痛でもう…って人は、医師や薬剤師に相談してみてくださいね。

もちろん、看護師にも。



貴重な時間を使い、最後まで記事を読んでくださりどうもありがとうございます。頂いたサポートは書籍の購入や食材など勉強代として使わせていただきます。もっとnoteを楽しんでいきます!!