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ヒットを打つことで「つまらない。」と言われる男の強さ

とある日の17時40分
あわててタクシーに飛び乗った私が向かった先は、

「札幌ドームまで!!!」

この日はナイターの試合があり朝から仕事をものすごい集中力で終わらせて球場へ向かったのです。飛び乗ったタクシーの運転手さんはたまたまファイターズファンの方で、過去にはあの野球の申し子大谷翔平選手を乗せたこともあるとか。

その車中、誰のファンなのか?という話から私が応援している中島選手の話題になった時、突然「つまらない」と言われた私が、あの時真剣に説明をしていたらタクシーの運転手さんは納得してくれたのだろうか?なぜ彼の目にはそう映ったのか?等要因が気になってきたため、データから追ってみることとします୨୧*。

2015年(143試合出場)599ファウル 相手に投げさせた球数 2665球
2016年(143試合出場)759ファウル 相手に投げさせた球数 2716球

これらは2年連続で12球団一のファウル数を記録した北海道日本ハムファイターズ(以下ファイターズ)遊撃手の中島卓也選手の記録です。

今では『粘り=中島』という印象的なバッティング技術は野球に関心がある方なら大概が持っている事でしょう。
私が中島選手を応援し始めた2016年は、忘れもしない11.5ゲーム差をひっくり返すというとんでもない歴史を築き上げ、リーグ優勝さらには日本一という偉業を成し遂げたファイターズですが、中島選手も目標のひとつでもあった143試合フルイニング出場を果たし日本一に貢献しました。

野球といえば、ヒットを打っては出塁しチャンスをつくり走ってホームインが一般的であって、その中でそれぞれの技を競いレギュラーを勝ち取ってチームに貢献していくものだとそれまでの人生で野球に触れてこなかった私は思っていました。

でもそれは大きな間違いでした。

実は、もっともーーーーーっと奥が深いスポーツで、頭の良さや人間力が試されるスポーツだったのです。

それに気づけたのは、やはり中島選手の存在であり印象的なバッティング方法が気になって夜な夜なスコアを付けたり素人分析等で野球を勉強するようになってからのことでした。

若手の台頭

2018年シーズンから選手会長も務める中島選手は現在27歳(2018年11月時点)

まだまだ若い存在でありながらもチームの中では中堅にあたり、それまで《ショートは中島》が当たり前だったところに石井一成選手や太田賢吾選手、平沼翔太選手など若手たちが存在をアピールする試合も少しずつ増えていきました。

ここ2年は怪我による離脱もあり、フルイニング出場が叶わないこともありました。その間に若手たちが出場機会を掴む事で中島選手にも良い緊張感を与え、バッティングフォームの改革にチャレンジするきっかけにもなっていたのかもしれません。

生き抜くための進化

昨日よりも今日、今日よりも明日…

奥の深い野球には生き抜くすべが選手の数だけあると私は考えます。
私の職場でもそうですが、新人さんなどが入って来ることで自分の積み重ねた経験値により役割が変わっていくこともありますよね。

2017年 (91試合出場)396ファウル・内2ストライク以降/222ファウル
2018年 (132試合出場)492ファウル・内2ストライク以降/264ファウル

この数字から中島選手にも同じことが言えて、出場試合数は違えど1試合当たりの粘りが2017年より2018年シーズンの方が明らかに減少し意識的にヒットゾーンへ飛ばす意図が伺えます。

それはきっと、レギュラー争いに頭一つ出るためであり危機感を持ってして初めて成立するプロの世界を垣間見た様な気がしてなりませんでした。

新たなバッティングが馴染む時

2018年シーズン中島選手は、自己最高の打率に次ぐ.261を記録しました。
すごくわかりやすい分析データを提供してくださるデータスタジアムさんの記事がこちら( ˊᵕˋ )☟

追込まれても粘って出塁出来る技と早めのカウントで勝負する意識、体力強化による長打も増えてきた中島選手の柔軟なバッティングスタイルはきっと相手ピッチャーにとって今までと違った意味で「怖い存在」になっていくのではないでしょうか。

2016年の終盤からライト方向へ引っ張る強い打球が増えてきた印象があり、実際に2016年9月13日の試合では今までの中島選手にはあまりイメージができなかったライトオーバーの意表をつくバッティングでチームを勝利に導いたことも。そして、球界史を塗り替えたあのホームラン記録もまたライト方向でした。

photo by tatsuya020403

2016年オフから打撃フォーム改革を徐々に行い、途中怪我に悩まされながらもフォームと感覚が合致してきた今シーズンは、見事実を結び今の中島選手ならではの生き方が見えてきたのではないでしょうか。
来シーズンもどんな活躍をしてくれるのか今から楽しみで仕方ありません!!!

ひとつに固執しないことの強さ

冒頭にお話したタクシーの運転手さんはきっと、ファンであるからこそ中島選手の特徴でもある粘りをもっとエンターテインメントとして魅せて欲しい!という意見だったと思うんです。

たまにお笑い芸人さんを見た時に思う「あのネタやって欲しい」欲は、あえて粘らなくなってきた中島選手に「粘って欲しい」と願うようなもの。

人は誰しも成功例を振り返ってはその頃を継続したくなりますが、環境は常に変化し観る目も変わっていくものなのです。

腑に落ちなかった私も、飽きられない為の工夫や生き抜く為の技磨きを通じて様々なシーンで”戦っている側の表現”と”観ている側のニーズ”の合致は案外しない方がより良い結果が出るのかも?と、あの時「つまらない」と言われた衝撃の一言から、ひとつに固執しない強さを学ぶこととなったのでした。

ありがとう、タクシーの運転手さん。

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