2年前、突然会社を辞めた理由

2年前、それまで約5年間正社員として勤めていた会社を退職した。

その会社は、アパレルの販売代行運営をしていて、大手アパレルメーカーで長い販売経験をもつわたしは、入社後すぐに店長職を任された。

取引先のメーカーは多岐に渡り、いくつかのショップを任されたが、売上の基盤はチームワークにあると思っているわたしは、慣れればこそどのショップでも売上を伸ばすことができ、会社の上の人たちからの信頼は厚かったと思う。

結婚の予定はまったくなく、とにかく仕事は楽しくてやりがいもあったので、仕事の優先順位は高かった。店長という立場上、我慢したり犠牲にするものも決して少なくはなかった。

毎日変わりばえのしない日常の中、突然の父の訃報。

本社が他県にあったため、部長にメールで、「父が亡くなったので、忌引き休暇をいただけないでしょうか」と伝えると、快諾してくれた。
お店にある忌引き休暇申請書を記入し、総務宛にFAX。もうすぐ桜の咲きそうな3月の初めに、わたしは1週間ほど仕事を休ませてもらった。

それから半年ほど経ったある日。
一緒に働いているショップのスタッフが有給の残日数を総務に確認したりしていたので、わたしも有給があとどれくらい残っているのかを何気なく総務に問い合わせてみた。
数日後に総務から来た返事は、「有給の残日数は0です」

1年に10日ほど付与される有給休暇を、0になるまで使いきった記憶がまったくなかった。
それなら、いつ有給を消化したのか調べてもらうと、その答えは、父が亡くなった3月に消化しているという。
総務の言い分では、会社の忌引き休暇制度がスタートしたのはその翌4月からなので、わたしが1週間休んだ3月は、忌引き休暇制度はなかったので、有給消化になるという。

自分の知らないところで勝手に有給が消化されているうえ、忌引き休暇申請書を書いてFAXした時点で伝えるべきことではないのか?
忌引き休暇制度がないのに、なぜ申請書があるのか?
まったく納得のいく回答は得られなかった。
会社にだまされていたような気になって、総務との電話のやりとりでケンカ腰になった。
向こうから申し訳ないのひとことでもあれば、わたしの中にいるモンスターは収まっていたかもしれない。
でも、謝るどころか、まるで開きなおったような総務の態度に怒り狂った。会社の利益を出しているのはわたしたちショップにいる現場の人間。総務の人間が売上を取れるものなら取ってみろと思った。

その電話の翌日、退職届を本社にFAXした。
再就職先がすぐに見つかるかどうかという不安よりも、こんな信用できない会社は1日も早く去りたいと思った。

退職届をFAXしたあと、会社の上司がわたしのところへ飛んできた。今年の冬はボーナスを支給する話もあるとかなんとか、とにかく引き止めたかったのかもしれない。
でももう、わたしにとってはすべてが今更だったし、ますます気持ちは冷めていって、退職届に記入した通りの日に、会社とはサヨナラした。


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