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未完でも魅力的な『バッファロー五人娘』

2016年のことだったと思いますが、池袋で安野モヨコ展なるものが開催されました。小さな展示だったけれど面白かったです。実は私はそこに行くまで、安野モヨコの漫画は『働きマン』しか知らず、それ以前に『働きマン』の作者が安野モヨコであることも知らず(要するに行って知った)、つまり別に彼女のファンではなかったのですが、宣伝ポスターの絵が印象的だったのでふらりと立ち寄ったのでした。

きっかけはそんなでしたが、展示会で彼女の描く世界に何となく惹かれ、後日行った歯医者でたまたま手に取った雑誌に安野モヨコのインタビューが載っているなど、数日の間に運命的な急接近(?)を果たした矢先に古本屋さんで彼女の名前を見つけたとき、買うのはもう即決でしたね。

そんな経緯で購入したのが『バッファロー五人娘』。

実はこれ未完の作品なのだそうで……。確かにこの終わり方はすごく唐突。しかも新展開に突入したところで終わっているので余計に。でも、休載して暫く経ってから『バッファロー五人娘①』ではなく『バッファロー五人娘』でこの単行本が刊行されたということは、もう続編は出ないのでしょうね。少し残念です。

さて、物語の舞台は西部劇を連想させる砂漠の町。主人公キャンディ他、魅力的かつ個性的な五人の女性が登場します。男勝りなスージー、抜群の色気を持つダリア、意地張りのルビー、健気なココ。
いずれも娼婦ですが、娼館を飛び出し追われる身になりながらも逞しく生きていきます。かっこよく走り続ける女たちの物語です。

中でもやはりキャンディのキャラクターが魅力的。彼女の前向きな言動には本当に元気をもらえます。物語は後半どんどんファンタジー的になっていくので、そこは人により好みの分かれるところかと思いますが私は好き。それにキャンディの言葉には、普遍的な力強さがありますからね。
特に私が好きなのは第5章、結局娼婦としてしか生きられない人生を「まっくらやみじゃん」と嘆くルビーに対しての発言。

だからまっくら、それでいいの? 与えられた人生そのまま送るの? あたし達はもっと強い生き物なんだよ

安野モヨコ『バッファロー五人娘』

こう言われるともう、頑張るしかなくなりますね。道は拓けているものではなく拓いていくものだ! と言われている気分。
他にも好きな台詞はたくさんあるのですが、とにかくキャンディが最初から最後まで安定してポジティブなので良いです。あとユーモアもあって可愛いし。おんなのこは可愛く描かれている方が断然いい!

けれども、対照的に男性キャラの描かれ方は少し雑な印象。モンロー、レイジ、ホーク以外の男の描かれ方がちょっとひどすぎます。特に、その他大勢として描かれる男たちは性欲しか頭にないというか、実に単細胞的というか。女を見ればセックスのことしか言わないし、我先にセックスしたいがために躊躇なく殺し合いするし。
ここまではっきり男女を「ヤる・ヤられる」の関係で描かなくてもいいのになぁ、と若干腑に落ちない感じはあります。

ともあれ、前述の違和感と未完であるというのを差し引いても十分魅力的な作品です。
引っ越しや転職の諸々で、私の手元には今はないのですが、久しぶりにまた読みたいな。

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