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『No cognizance』 その4 (未映像化台本)

 隊長「フン・・・。(銃を持ったままの右手で、中指、薬指、小指を三本立てて)三度目の解説は無いぞ。忘れるなよ。いいな」
 隊長、主人公に歩み寄りながら、「まず第一に機械的処理を肉体に施し、通常人以上の身体機能をもたらし、次いでそれを細胞レベルで安定化させた。その後に洗脳を行ない、更に並行して戦闘術のレクチャープログラムをと・・・。もはや人間の進化は神だけが司るものではないのさ」
 主人公「目的は・・・・!? 何を目的にそんな・・・う・・・・・・」
 隊長「単純だ。強固な兵器を作り売り込む。殺人やコマンドの術を擦り込まれ、従順で恐れを感じず、且つ判断力も持ち合わせた自由度の高い兵器をだな。或る国家の需要と、或る財団の行使力が、人を・・・貴様たちを作り替えた。それから洗脳システムも個別に需要が見込まれるだろうよなぁ」
 主人公「貴様等・・・!」
 主人公「うぉっ・・!」ガクッとなり「ぐうぅ・・・」
 隊長「ほぉらほら、段々ひどくなってきているんじゃあないのか? 無理するな。抵抗し続けても苦しいだけだぞ。それに、まぁ無駄な事だ」
 主人公「くぅ・・・っ」と、動かぬ体に身悶える。
 隊長「ここは赤道に近い密林地帯で、外部との接触は困難だ。財団も追い続ける。貴様にしたって誰にしたって逃げ切れやしないのさ」
 主人公「殺すのか・・・・・!」
 隊長「これだけ戦えるお前をか? 馬鹿言うな。そんな無駄なことは出来ないねぇ。コントロールを復帰させてやるさ。必ずな」
 主人公、「ギッ」と歯を鳴らし、カッと睨み付ける。
 隊長「実を言うと、我々は困惑しているんだ。やはりソルジャーの行動能力には、人格・・・と言うより自意識の有無によってこんなにも違いが出てしまうのかということにな。システムの見直しを図る為にも貴様は必要だ。さぁ施設に戻るんだ」
 主人公、相変わらず表情は苦悶のものである。
 主人公、「・・・俺は・・・俺は・・・誰なんだ」
 隊長「面白いもんだな。貴様の場合は記憶にまで影響したか。財団は様々な方法でサンプル素材を集めたからなぁ。犯罪者か浮浪者か旅行者か怪我人か、それとも軍属だったか・・・・。俺はお前等のレクチャー管理責任者に過ぎん。お前が誰なのかなんぞ知らんし、知りたくもない」
 主人公、尚も自由を得ようと力を込める。「ううう・・・・・」
 隊長「ただな・・・・・」
 主人公、聞いているのかいないのか、尚も踏ん張る。
 隊長「貴様には家族がいたことは知っているぞ」と言い、不意に「ハハハ! クックックック」と笑い出す。
 隊長「記憶が無いってのは、悪いことばかりではないな」
 主人公「・・・・・」
 隊長、ギラギラとした笑みを浮かべ、追手Gに向かって顎をしゃくり、「そこに転がっているのは、貴様の・・・・・」
 主人公「!?」(怯え?)
 隊長の声「姉・・・・・」に、目を見開く主人公。
 愕然とした表情の主人公。
 目をやる。追手Gの死に顔。
 主人公の目の周りにクローズアップ。汗。
 追手Gの死に顔。
 主人公の目「(嘆く)ああ・・・・・」震える。
 グッと力を込める主人公の手もブルブル震える。
 主人公「うううううううう」震えは広がり、体は仰け反る。全身に血が駆け巡る。
 一瞬、まっとうな人間だった頃の自分と姉の記憶が脳裏に浮かぶ。姉の穏やかな顔が・・・・・。
 主人公「ううううおおおおお」全身の血管が浮き出て、体が紅潮し、やがて震えは異様な力へと化していく。
 ブチ! ブチ! ブチ! と妙な音を体が発する。
 ハッとする隊長。身構え、後じさり。
 主人公「わああああああああああ」
 ブチィ! 体の自由が解き放たれた。

(続く)

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