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『No cognizance』 その11 (未映像化台本)

 主人公、ハッとする。
 主人公「・・・・・実戦って・・・・・」
 マービン、両肘を立て、両指を組んだ上に顎を乗せる。間を測って「君が知る由もないが、HMの実戦投入は既に行なわれている。試験的、段階的にだけどね」

30.モザンビークのテロ戦、スーダンの内戦、アフガニスタン、パレスチナのテロ戦などの風景。
 HM5名編成の一分隊が戦場を巡る、駆ける、戦闘する様子。
 主人公(M)「こんなおかしな・・・異質な軍隊が、そんなにも容易に受け入れられるものなのか?」
 マービン(M)「そこは我々の実績が物を言うのさぁ。これまで傭兵が戦場の命運を左右した実例が幾らあると思ってるんだ」

31.戦場から多少離れたところに大型バン。

32.その内部では限られたスペースに押し込められた機材とオペレーターが5人。HMを監督、指示を出している。
 マービン(M)「自前の軍隊の損耗無しで勝てるのなら取引先はウェルカム。手段はどーだって良いって訳さ」

33.27と同。
 主人公「しかし、世論が黙っているとも思えないが」
 ペリー「CIAもSVR(ロシア対外諜報庁)もEuropol(欧州刑事警察機構)も、とっくに我々のことを把握済みだ。むしろこちらから或る程度までは情報をリークしている」
 主人公「?」
 マービン「彼らは彼らの情報下に置かれていない事物に対しては過敏に反応を示すが、認知下にあると思わさせておけば・・・いつでもその気になれば対処可能だと思わせておきさえすれば問題は無いんだよ」
 主人公「(溜息混じり)ふうん・・・・・」
 ペリー「君を分隊長に任官する」
 主人公「? ・・・なんにですって?」
 ペリー「今回の作戦はテストだ。洗脳状態にないHMが分隊長となり指揮する軍隊は、果たしてどこまで優位性を示すのか、というな」
 ペリー、ふと気を回し「気を悪くしたかね?」
 主人公「いや」と、目を落とす。
 ペリー「それは実に助かる。・・・・・さて、そこでだ。この施設を出立するに当たり、君には一つの事実を知ってもらう必要がある」
 主人公、訝しげにペリーを見る。
 ペリーは、マービンに目を遣っている。
 主人公、今度はマービンを見やる。
 マービン、意を決して「・・・・・君は、自分が今何歳になっていると思う?」
 主人公、不意を突かれて「え」
 マービン「今は西暦2045年。君が蘇るまでにざっと25年間程が経っているんだ」
 主人公、困惑。
 マービン、しっかりとまなじりを据え「君の父上はここに居ないのではなく、もうどこにも居ない。既にこの世の者ではないんだ」

34.夜。大空。ブオオ〜と夜空を行く四基プロペラ大型輸送機。

35.輸送機の中。中央辺りのブロックには兵装を施した、主人公を含むHM20名の分隊4チームが両壁沿いに無言で着座している。
 主人公(M)「俺に実戦稼働を命じた男はペリーと名乗った」
 主人公にフォーカス。
 主人公(M)「彼等の施策は手早い。時を与えることなくブリーフィング、続いて直ちに戦地への移動と、至って卒が無い」
 主人公、並み居るHMたちに目を遣る。そこには無骨なHMの面々が雁首揃えて座している。
 主人公(M)「俺は、いや俺たち四組の分隊は今機上にいる」

36.後部の貨物室には、HMへの後方指示用車両四台が静かに蹲っている。

37.別室。シートが並び、HMと同数程度の管制オペレーターたちが各々シートに収まっている。
 主人公(M)「本作戦のこのハイテンポさは、俺にあれこれ余計なことを考える暇を与えない様にする為らしい」

38.35と同。
 座っているHMたち。
 主人公は左前腕の内側にセットされているミニタブレットの画面を操作している。スクロールして作戦内容の確認をしているのだ。タブレットのディスプレイには地形マップ、画像、敵軍の画像とテキストなどが映っている。
 主人公(M)「あれから20何年も経っていたという事実に対するショックが和らぎ、実感を得るのを待つのではなく、矢継ぎ早に行動を課すことでショック自体を無かったことにする」
 主人公、顔を上げ、壁の一角を見上げる。
 主人公(M)「なるほど、そういった意味で言えば彼等の狙い通りにまんまと乗ってしまったと言える」
 壁のディスプレイには輸送機の現在地を示すマップ。そして、「5 hours until arrival(到着まで5時間)」の文字。
 主人公(M)「既にして時の経過を事実として受け入れ完了している俺としては」

(続く)

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