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大阪のこと


 この間、数十年ぶりに大阪に行った。だいたい四年ほど住んでいたことがあるが、離れてからは一度も行っていなかった。
 空港の待合席で通路を空けて隣に座っていたきれいなお姉さんの、丁寧に電話に出た声が「男」だったのを聞いたとき、なぜか、私は本当にこれから大阪に行くのだとじわじわ喜びが湧いてきた。


 久々に見た大阪の景色はさすがに少し記憶と違っていたけれど、相変わらず人も建物も混み合っていてにぎやかなのに、どこか渾然一体としたエネルギーの塊のような街で、いるだけで元気になるところだった。


 でも、あれだけ聞き慣れていたはずの関西弁はけっこう忘れていたようで、コンビニのレジの女の子の言う「ポ、どうしますか?」がどうしてもわからず、何度も聞き返してしまった。
「ポ、イントどうしますか?」
 そう、大阪弁のイントネーションは先頭が強いのだった。
 しばらく西の地から遠ざかっているうちに、すっかりぼんやりした観光客になってしまった。


 今回は別の目的で唐突に旅に出たから、カメラはスマホしかなく、家族のお土産に551とりくろーおじさんをつかんで帰ることしかできなかったけれど、今度はちゃんと大きなカメラと小さなカメラを鞄に入れて出かけたい。
 今まで来れなかった数々の言い訳たちは、この街の持つ謎のパワーで吹き飛んだ。
 どこを撮ってもみなぎる何かがあふれてくるような街を、見て、味わって、歩きたい。

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