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音楽・美術・書道と囲碁

古代中国の貴族の教養は琴棋(きんき)書画(しょが)であった。日本もこれに倣(なら)い、日光東照宮の陽明門に「君主の四芸」の彫刻がある。琴棋書画は学校教育に受け継がれて、音楽・書道・美術になったが、棋(囲碁)は消えて代わりに体育が入った。西洋の学校教育に囲碁はなく体育があったかららしい。欧州の支配階級は身体を鍛えたが、中国では知性による国家統治が理想とされ、上流階級は囲碁という知的スポーツを楽しんだ。

音楽・美術・書道・体育という趣味系の教科に対し、国語・数学・理科・社会・英語は実用系の教科である。生活の糧を得るために進学をめざす入試においては英数国などが重視され、こちらの成績が良い人が「頭が良い」と評価されるが、それは収入を得るまでのことである。

生活が安定すれば、楽器が演奏できたり、絵が描けたりする方が人生は豊かになる。私は、英数国はできるが音美書はできないタイプだったので、音美書ができる方が恵まれているように見えてしまう。

残念に思うのは、音美書ができない原因が、才能がなかったのか、教えられ方が悪かったのか判然としないことである。「できるようにならないなあ」と何年も悩んだすえに、良い恩師にめぐりあって急速に上達した経験が二つある。英語と囲碁。初歩的なつまずきを個人指導で修正してもらってから、平均的な人よりは上手くできるようになった。教室の集団授業で教えられることには限界がある。どうしても上達したいなら、個人で礼を尽くして教えを乞う勇気が必要だ。生徒の姿勢が先生の実力を引き出すのである。

2016.06

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