見出し画像

OgakiMiniMakerFaireが居心地良い理由

12月1日~2日に開催された「Ogaki Mini Maker Faire 2018」に参加した。

Maker Faireとは、様々な分野のつくり手「Maker」たちによるものづくりの祭典のこと。僕自身は2013年から関わるようになり、最近では大学の研究室やIoTを手掛ける企業として出展し、参加者同士の交流を楽しんでいる。

Maker Faire生誕の地であるサンフランシスコや、東京での開催とは異なり、大垣には「Mini」が冠されている。僕にとっては初めてのMini Maker Faire参加となったのだが、これがなかなか居心地よかった。

かねてより「大垣のMaker Faireは良い」という意見は目にしていたが、今回参加してみて、その意味が分かった気がする。イベントの数が増えてきているからこそ、それぞれの個性を際立たせることは重要になると思い、記録を残しておくことにする。

1.地元のつながりが許容する「ゆるさ」

そもそも「Maker Faire」は米オライリーメディア社の一部門であるメイカーメディア社の登録商標であり、許可なくイベント名として利用することはできない。

MakerFaireの公式サイトによれば、
・Flagship Maker Faire メイカーメディアが直接運営する2箇所
・Featured Maker Faire
:地域ごとに開催される大規模なイベント
・Mini Maker Faire:コミュニティ主催の小さなイベント
・School Maker Faire:高校以下の教育機関で開催されるもの
の4カテゴリに分類されており、コミュニティや教育機関が主催する場合とそうでない場合は明確に区別されている。

OMMFの場合、岐阜県や大垣市、地元の商工会議所などから構成される実行委員会がイベントを主催し、オライリー・ジャパンはあくまで共催という形となっている。

会場であるソフトピアジャパンセンターは岐阜県内のIT・IoTに関する支援を行う公益財団法人が所有する建物であり、出展者が参加する懇親会には大垣市長が訪れ挨拶を行った。OMMFは、どこまでも大垣市と密接したイベントなのだ。

地元のゆるやかな繋がりが、会場をのびのびと横断する垂れ幕やバス停に貼られた目印を許容し、ちょっとした愛らしさを生んでいる。大都市的な産業化/均質化から離れたローカルさは、僕たちをほっとさせる。


2.流行に左右されない、歴史と文化の深さ

OMMFの歴史は、2010年9月までさかのぼる。Maker Faire Tokyoの前身である「Make: Tokyo Meeting 01」が開催された2008年4月以降、東京以外の地区で初めて実施されたのが「Make: Ogaki Meeting」だ。

Make: Ogaki Meeting の公式サイトのトップ写真。OMMF 2018にも出展された denha’s channel のマーブルマシンや Suns & Moon Laboratory による光るホイール、ファミコンのサーキットベンディングなどが確認できる。

今でも公式サイトは閲覧できる状態にあり(凄いことだ...)、実行委員会の設立報告書まで読むことができる。そこから2年おきにイベントが開催され、2012年の「Make: Ogaki Meeting 2012」より後には「Ogaki Mini Maker Faire」に看板が置き換えられた。

その間、会場はソフトピアジャパンセンタービルから変わっておらず、端から端まで見通せるちょうど良い広さの会場で、長ければ8年になる出展者同士の交流が続いているのではないだろうか。

Kaseo 氏による「ファミトロン」はソフトごとに異なる音楽を奏でる。

また、OMMFでは音楽系の展示が強く印象に残った。既存の電子回路に直接干渉して音楽を作り上げるサーキットベンディングは、3Dプリンタなどのデジタル工作機械が普及する前から続くカルチャーのひとつであり、メイカームーブメントの盛衰に左右されない根強さを感じさせる。

やたらとクオリティの高い自作楽器の出展者たちに話を聞くと、RolandやYAMAHA、KAWAIなど名だたる楽器メーカーの関係者であることを(こっそりと)教えてくれた。いずれも静岡県浜松に拠点を構えるメーカーからの出展であることは、大垣という土地での開催と無関係ではないだろう。

サーキットベンディングにせよ、楽器メーカーによる創作楽器にせよ、こうした製作物からは一過性のものではない厚みが感じられる。過去5回のイベント開催という歴史とあわせ、浮ついた感じの無さはこのあたりに由来していると推察できる。


3.教育機関(IAMAS)との結びつき

IAMAS(イアマス)とは情報科学芸術大学院大学の略称であり、OMMFの会場近辺をキャンパスとする岐阜県立の大学院大学だ。科学芸術という名称の通り、Rhizomatiksの真鍋大度氏をはじめデザインやアートなど多分野で活躍するOB・OGが輩出されている。

特設サイトではIAMAS卒業生と教授陣の濃い対談を読むことができる。

IAMASはMake: Ogaki Meeting の頃から実行委員を担い、OMMF 2018の総合ディレクターを務めた小林茂氏もIAMASで教鞭を取っている。現役の学生や卒業生も運営スタッフとして多数関わっており、出展者から評価の高い対応の柔軟さは、彼らの気心知れた関係性が支えているのかもしれない。

ものを作る学生の多くは出展者としても参加し、量産方法や資金集めの仕方といった議論も含め、普段の授業とは違う刺激を得ているようだ。卒業生による出展も多く、一部は「同窓会のような感じ」で参加しているという。

ブロックチェーンが実装された未来を体験するボードゲーム「TRUSTLESS LIFE」は、加藤明洋氏のIAMASにおける卒業制作だ。

母校を共にするメンバーの参加によって、アットホームな雰囲気が醸成されている。他方、IAMASで学ぶ最先端の情報技術やアート、それらへの批評といった学術的要素が Maker Faire に接続することで、イベントとしての奥行も生まれているのだろう。

なお、今年初めての試みとして、関連イベントという形式で、IAMAS先端IT・IoT利活用啓発事業2018 ワークショップの成果展示とトークイベントが開催された。社会で活躍するIAMAS卒業生によるプロジェクトや作品は、趣味的な楽しさにあふれたMaker Faireとは少し毛色が異なるが、喧騒から離れた落ち着いた空間として喜ばれていたように見える。


4.おわりに ― つくることからはじめよう

1.地元のつながりが許容する「ゆるさ」2.流行に左右されない、歴史と文化の深さ3.教育機関(IAMAS)との結びつき

という3つの要素が、OMMFの居心地よさに繋がっているのではないか。そんな考察をしてみたわけだが、正解不正解がある類の問いではないだろう。それも含め、他のMaker Faireやものづくり系のイベントを批判する意図が無いことは明確に表明しておきたい。

FaireであろうがAcademyであろうが、それらを構成する技術のタネに大きな差があるわけではない。「ものづくり」が起点となって、自分の興味や関心、あるいは疑問を形にしていく人たちがあの場には集まっていた。

今年のOMMFのキャッチコピーは「つくることからはじめよう」。まずは手を動かすこと、そこさえ押さえていれば、居心地よい仲間になれるのかもしれない。


※ ちなみに世界規模のMakerFaireはこんな感じ。こっちも良い。
  → BayAreaで感じた、Maker至福のとき
※ 事実の誤認などあればコメント欄にてお伝えいただけると幸いです。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?