あなたは何故クリエイターになりたいのか

Twitterをして早10年、LINEやSkype、今やdiscordなど、世界は広くなり、発信も容易に出来るようになった。名の知れた人々と繋がりやすくもなり、世界の広さを思い知る。

そこでよく目にする【作家になりたい】【イラストレーターになりたい】【プロになりたい】というツイート。多くの若い人が中心にそのようなことを夢見ている。夢は素晴らしい。

──だが、だれ一人、その夢に立ち向かい、叶えた人はいたのだろうか。私が見る限りでは何万人が夢見ている中で書籍化、或いは作家になっている人は千人いかないのではなかろうか。

それもそのはずだった。彼らは、夢しか見ていないのだから。

今どき一万円も出せば本が作れる時代に自費出版という形で何故本を作らないのか、同人即売会が沢山ある中に何故飛び込まないのか。私は疑問で仕方ない。私は五千円でも費やして作品を作るような人間である。コンビニのコピー機を占領して本を作るような(今のように画質も良くないモアレだらけのコピー誌…)人間であった。絵が好きなのでラミカというキャラクターグッズを作って盛り上がるような同人屋であった。とりあえず作りたくなったら作るような、書きたくなったら書くような人間であった。


私は同人即売会に赴き、縁あって何故か愛媛県西条市で2016年に個展を開いた。昔の話なのでログは残っていないが私は絵のプロを目指しているわけでもなければ小説家になりたいわけでもない。

ただ、好きなように作品を書きたいだけである。

きっと、彼らは、夢しか見ていないから知らないのだ。同人なんてという呟きがプロ志望からたくさん聞いたこともあったが、プロに転身する前は同人をやっていた、個人でたくさん作品を書いてあらゆるところに投稿した。結果縁あってプロになった、デビューした、とか、掘り下げていけばプロになる前も作品を山のように作って人に披露する経験をたくさん有していたとか。正直びっくりする。

彼らは、夢は見るが夢を叶えるための努力はしない。公募に応募すればなれると。ココナラやスキマを使えばたくさん受注されると。

違うのだ。自分でまずは作らなければ分からないのだ。仕事で欲しいのは、実績や経験である。個人の製作物も立派な実績であり、経験である。個人で製作していないのに人の為に製作は出来ないのだ。

自分がやりたいからやる、だから形にして披露する。その経験がなければ、なし得ないのだ。何事も。

本当に、クリエイターになりたいか?本当は、何者かになりたいだけではないのか?

本当になりたい人間は多分、人目など気にしない。

私は、今よりもつたない絵を15点も書いては額装して個展をやった。下手なことも展示会に展示する実力とか云々、何一つ気にしていなかった。そんなことどうでもよかった。なぜなら絵を書くのが好きだから。見て欲しいから。ただそれだけである。

転職活動や就職活動、仕事で忙しいのに創作活動をやめる気は全くなかった。自重すらしなかった。創作活動のために仕事してるんだ!とすら思っている。もはや病気であり道である。

人目を気にして悩んでいるうちは、本気ではないのだ。

私は絵や小説、製本がなくなると間違いなく心が死ぬ。2018年は転職活動頑張る!とか言ってやらないと決めたが結果、ポストカードやフライヤーや名刺は作った。小説連載もした、ウェブ企画に参加した、アンソロジーに寄稿した、結局やったのだ。楽しかった。だから登用は失敗したのだが特に残念がることも無く縁がなかったとして次に行く。なんということだ。

もはやなにか作らねば、書かねばしんでしまうのだ。現にスマホやパソコンのメモやメールには小説の書き残し、机の上には絵のラフや構図が転がり回っている。片付けてみたが増えている。もちろん趣味である。ただの趣味活動である。生きるためには必要ないのかもしれないが、私にとって創作活動はもはやパートナーである。自重とか無理である。仕事を辞めたい。しかしより良いものを作るには仕事から逃げられない。残念ながら組織に雇われて生きる方が性に合う。

あなたは憧れだけでものを言っていないか?

それを自問して欲しい。ちなみに私はプロになりたくはない。単純にクリエイターに向いていないのだ。なりたいことと出来ることは違う。

最も苦手とする人とのコミュニケーション、接客で気づけば5年も生きてきた。経歴もだいたい接客である。まだ20代なので異業種としてクリエイターとかの専門職にも挑戦したいと思ってみたがいざそちらの求人を見たら固まった。重たい鎧を無理矢理着るような苦痛が伴った。

そして、結局2通出したのは販売職と営業職である。営業はやったことないがサービスの提供のための説明、販売ということでイメージしやすい。小売に商品や設備や資材を卸す営業と介護器具の営業もあったし、イメージしやすかった。

結局私がプロとして生きていけるのはサービス業である。コミュニケーション技術を活かしたサービス業のみである。親からもエージェントからもハロワの方からも「営業、販売職、サービス業が一番合うような気がします。事務やクリエイターというイメージがまずない」みたいなことを異口同音で言われた。他人から見てもそうなら最早そこで生きるのが正解なのだろう。そしてしっくり来たのはサービス業である。

何故なりたいのか。いつもこれを忘れていなければ、あなたは何者にでもなれるし、そもそも何者にもなろうとしなくていいかもしれない。私はサービス業の仕事であれば「人に喜んでいただけるような接客、振舞いをしたい、一緒に頑張りたい」をまず志望動機にするし、実際の現場でもだいたいそのように動いている。出来ているかはともかくあまりぶれた事はない。