ビバリーヒルズポロクラブ

飛騨→東京→飛騨。 料理と野球が好き。 簡単なあらすじなんかにまとまってたまるか。 T…

ビバリーヒルズポロクラブ

飛騨→東京→飛騨。 料理と野球が好き。 簡単なあらすじなんかにまとまってたまるか。 Twitter @sakhaliiiin

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あの日ひとりで食べた麻婆茄子が今の僕をつくっている

僕は料理が好きだ。盛り付けの綺麗な「映える」レシピは苦手だけど、豚汁とかキムチチゲとか水炊きとか、ワシワシと食べられる料理が得意だ。 昔から夕方になると母親の隣でご飯の支度を手伝い、誕生日には包丁を買ってもらうような子どもだった。最近では肉の塊を焼いたり、友達を集めて居酒屋を開く遊びにハマっている。面と向かって尋ねたことはないけど、誰も嫌だと言わないから多分美味しいのだろう。 そんな僕も、ひとりで食卓を切り盛りする自炊生活がはじめから上手にできたわけではない。今日は僕と料

    • 僕と彼の栞

      吐瀉物のはね返りが白いワイシャツを赤黒く染めた。 職場に向かう道中にドライブインがあり、男子トイレの奥から二番目の個室が僕の予約席。 ドアを開けて手洗い場に向かい、口をゆすいでからハンカチで顔を拭く。 「大丈夫、今日も生きている。」 3月末頃からだろうか。 職場の人事をめぐって経営者と折が合わず、気づいた頃には毎朝胃の中を空っぽにしてから出勤するようになった。 月曜から土曜まで往復90キロのドライブを繰り返し、帰宅するやスーツのままベッドに飛び込む日々。 着替え

      • いつかのハイボールが、自己開示の大切さを教えてくれた

        ーもう、何もしたくないー 今から数年前、僕は広告会社で営業をしていた。担当していたクライアントの業務に文字通り24時間追われ、深夜3時に有楽町の道沿いで座り込む日々。 風が冷たくなり始めた10月頃、はじめに胃腸がおかしくなり、トイレから電話対応することが続いた。 家で寝るときはスマホをタオルにくるんで押入れにしまってから床につく。バイブレーションが怖いからだ。 病院からオフィスに戻って上司に相談すると、スムーズに3週間の休暇が与えられた。休みが明けて最初に言われたのは

        • 「餓鬼」の腹が割れた話|ビバリーヒルズ減量白書(マインド編)

          ※この文章は筆者の個人的な経験に基づきます。特定の減量・ダイエット法を非難推奨するものではありません。減量する場合は体調に気をつけて、自己責任で実施してください。 俺は「餓鬼」だった。 精神性ではなく体型の話だ。薄い胸板に細い腕。にもかかわらず腹だけ「ボコッ」と出ていた。ボコ・ハラムである。 ウイルスの影響で外出自粛になる直前、顔が怖い友人とサウナに行った。彼は僕の全裸を見るなり「君は本当にひどい身体をしているな」と言い捨てた。君の顔だって相変わらず怖いじゃないか。

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        あの日ひとりで食べた麻婆茄子が今の僕をつくっている

          17歳、童貞。世界を敵に回す。/ もう会うことのない人たちへ #3

          もう会うことはないだろうけど、どうしても思い出してしまう人っていませんか? このまえ飲み屋で仲良くなったお兄さんに「君は本当に童貞だな」と言われました。 「本当に」とは程度がはなはだしいときに使う副詞、つまり形容詞とか動詞を修飾します。ということは、この童貞は名詞ではないらしいですね。とても画期的なお兄さんです。 漢ビバリーヒルズポロクラブ、おかげさまで「童貞」の資格はとうの昔に失効しております。ありがとうございます。 しかし久しぶりに童貞と言われたことで、僕が童貞だ

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          後ろ向きへの推進力。ラストレターは「こじらせポルノ」だ。

          ※ヘッダーは映画公式サイトより拝借しました。 ※ネタバレはそんなにせず振り返ったつもりです。でもこれから観るよって方は要注意。今すぐ家を出て映画館に向かってください。 ↓う ↓わ ↓ぁ ↓あ ↓ぁ ↓. ↓. ↓ いやあ、岩井俊二を、かまされたねえ。 いい大人たちが初恋の残像を追いかけて、傷ついて、それでも前を向いていく話。何度も観たような話だけど、やっぱり好きだなあこういうの。 作品について評するとき、手紙を題材にしてデジタル社会が忘れたノスタルジー

          後ろ向きへの推進力。ラストレターは「こじらせポルノ」だ。

          作品は我が子説

          創作する人にお尋ねしたい。自分がつくった「最高だ!」って作品が、思ったより評価されないとき、どう気分を落ち着かせますか? 例えば他の作品の揚げ足を取るとか、そもそもの評価体制や指針についてdisるとか、ネガティブな行動に出る人もいるじゃないですか。 まあ言うまでもなく時間のムダで、建設的なのはもっと作品を良くするために動くことでしょう。 一人でも多くの人に見てもらってアドバイスをもらうとか、赤入れをしてもらうとか。とにかく良いものを創ることに向き合い続けるしかないんです

          味覚のなかで生きつづける

          死んだ人の表情や声は、何年も経てば徐々に忘れてしまう。 でも、いつも作っていた料理を再現し続ければ、味覚のなかで生きられるんじゃないか? 地元・岐阜県飛騨地方では、郷土料理のことを「ごっつお(ご馳走)」と呼び、各家庭によって多くのレパートリーがある。 ばあちゃんの得意料理もまた、ごっつおだった。 山菜や豆腐などを使った煮物がメインで、「こも豆腐」「ぜんまいの煮付け」「ころいもの煮っころがし」「ほうれん草のあぶらえ」が王道だ。 小さい頃の僕は煮物があまり好きでなく、ど

          味覚のなかで生きつづける

          VRで体験したいのは「未来」か「ノスタルジー」か?

          「VRをああだこうだ言う前にまずはAVを観ろ」 昔会社にいたガジェットオタクのようなお兄さんが熱弁していたのを寝る前にふと思い出した。 VRが一般的な言葉になってからだいたい4.5年。 実は今までVRに触れたことがなくて、彼の発言も「はあ…」という具合にスルーしてしまった。興味があまりないのも事実で、結局「仮想」でしょ?と冷めた感情もある。 スマホでVRコンテンツを観るときに使うゴーグルを持っている友達に聞いてみても、マリオカートとかライトなゲームで使うことがほとんど

          VRで体験したいのは「未来」か「ノスタルジー」か?

          自分の夢まで、自己採点しないでください。

          2009年の今ごろ、彼は青い顔でセンター試験を受けていた。 雪が降りしきった試験初日。リスニングテストが10問目を過ぎた直後、それまで英語が流れていたはずのイヤホンが突然何を言っているのかわからなくなった。頭が真っ白になり、以降の記憶はほとんど失くしている。 彼の通っていた高校が受験会場だったので、教師たちは「地の利を活かせ」とか言っていたが、人生最初の大一番に有利も不利もない。あるとしたら多分そいつはループ2週目の高校生だ。 二日目を終えると、手応えがなく落ち込みなが

          自分の夢まで、自己採点しないでください。

          ゆるい幸せなんて、だらっと続かない。それでも僕たちは、贅沢をしなければならない。

          2020年1月14日、午前7時。 ぬるく澱んだ空気を入れ替えようと窓を開けると、トゲのある寒さが鼻をおそい、大きくくしゃみをした。 目の前の青空をぼーっと覆うように薄い雲がただよっていて、朝からアンニュイな気持ちにひきずられる。 「なんだか2010年みたいな空だ」というセリフが頭に浮かび、すぐに何かを思い出したようにiPhoneから音楽を流す。 ソラニン。 2010年、浅野いにおの人気作「ソラニン」の映画化にあわせ、主題歌としてASIAN KUNG-FU GENER

          ゆるい幸せなんて、だらっと続かない。それでも僕たちは、贅沢をしなければならない。

          日が長くなると切なくなる

          2分ほど遅れたワゴンRの時計が、16時30分をさしている。 信号待ちをしながら街並みを眺めていると、少しだけ日が長くなったことに気付いた。冬至からまだ二週間しか過ぎていないけれど、山に囲まれたこの田舎では、ほんのわずかな太陽の変化にも敏感だ。 夏至を過ぎると日照時間がだんだんと短くなっていき、夏の終わりを実感して物悲しくなる人は多いだろう。しかし冬至を過ぎ、日照時間が長くなって切なくなる人はいないのではないか? …いや、ここにいる。ワシじゃよワシ。 幼い頃からそうなの

          日が長くなると切なくなる

          2019年にたくさん聴いた曲 | サブスク時代に思うこと

          2020年!!!元旦(6日の夜)!!! 毎年1月は前年との移行期間だと思ってるので、2019年のことはまだまだ書いていく所存です。鳴りやまぬ除夜の鐘… 10年ぐらい前から「一年を一曲で振り返る」ってのをはてブとかでこっそりやってて、その年よく聴いたand象徴的な曲を紹介しつつ反省文をしたためてきた歴史があります。 ところが一曲に絞る作業が結構しんどくて、こじつけみたいにするよりは、いくつか選んでダラダラと書いていくことにしました。 過去にはグレープバイン「風待ち」、ア

          2019年にたくさん聴いた曲 | サブスク時代に思うこと

          僕はいつも友達に助けられてるけど友達は僕に助けなんか求めちゃいない

          もちろん助けを呼ばれたらすぐに飛んでいくし、殴ってほしい奴がいたら手を貸すし、話をしたければ朝まで付き合う。 でもみんなが僕に求めてるのは、みんなに見えないところでも楽しく健やかに過ごす日々なんじゃないか。 心配されて承認欲求を満たしていてはいけない。 落ちぶれた人間に助けられても誰も喜んじゃくれない。 もらった勇気はちゃんと使わなきゃいけない。 次に会うときは、川沿いを全速力で走ろう。 お腹が痛くなるほど笑い転げよう。 好きなひとの話をたくさんしよう。 最高

          僕はいつも友達に助けられてるけど友達は僕に助けなんか求めちゃいない

          いつかこの夜を、忘れる日が来るとしても。|クリスマスにささぐ

          目を覚ますと、待ち合わせ時刻はとっくに過ぎていた。 さっきまで空が明るかったはずなのに、今は西に傾いた陽が部屋の中に影を作っている。刃物が刺さったように痛むこめかみを押さえながらキッチンでコップに水をくみ、一気に飲み干してから状況を整理した。 昨夜はおとなしく過ごすつもりだったが、「クリスマスの前日くらい相手をしろ」と友人が家に押しかけてきた。右手には、酒屋で見つけたというタンカレーのボトル。 「いいから飲んでみろ」とオレンジブロッサムをつくって僕に飲ませると、お互い気

          いつかこの夜を、忘れる日が来るとしても。|クリスマスにささぐ