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無知が語る夢は「罪」だったのか

私は大学へ進学するのは反対だった。何もやりたいことがなかったからだ。

何もやりたいことがない、そんな考えで、親を説得できるはずもなく、嫌々ながら一年間の浪人を経て、私は大学へ進学した。

大学は、現役でも十分に入れる程度のレベルだったので、浪人組は学科内でも少数派だった。元々、人付き合いが苦手な私は、早くも学科内で浮いた存在になっていた。浮いていてさらに馬鹿では救いがないと思ったので、私は一年間で取れるだけの単位を取るように勉強に励んだ。また、他学部の単位も積極的に取得するように努めた。私にとって大学生活は、単位取得が目的であって、学びは何も喜びではなかった。

毎日、一時間近い時間を費やして通学し、誰とも喋らず、面白くもない単位取得の為だけの勉強をして、家に帰って、風呂に入り、眠る。この繰り返しの毎日だった。

親を説得できるような才能がないこと、やる気も才能だと私は思っていたから、やる気すらない自分がとにかく悪いのだと、戒めだと思って日々を一人で過ごしていた。

そんな私でも、体育の授業だけは、一人ぼっちが堪らなく嫌だった。体育はペアやチームを組むことが多い。私は誰とも仲良くしていなかったので、体育は浮いているのがより一層浮き彫りになって、本当に惨めな時間だった。

私はいつしか体育に出席しなくなった。しかし、体育が必須の大学だった為、逃げることがどうしてもできなかった。四年に上がるには、三年までに体育の単位をどうしても取らなければならなかった。私は、嫌々、補修を受けることになった。

そこには、私と同じように、何らかの理由で体育を避けてきた人たちが数人だけいた。みんな、どこか浮いていそうな感じだった。その中の一人に、Wという、少し痩せ気味で、ヒゲ面で、長髪で、いつも端のほうでクルクルと回っている不思議な奴がいた。

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