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VRchat、先にやるか、後にやるか

先行者利益。なんと甘美な言葉だろうか?先行者利益という言葉には、早いもの勝ち、特にスキルや努力が無くても、ただ先にやっていただけで得をする、そんな怠惰で幸運な言葉の響きがある。私がVRChatというVR世界でのSNSを始めたのは、この先行者利益という言葉に惹かれからだ。きっかけは、このオンラインイベントだった。

「仮想空間とVR」の現在地|岩佐琢磨×吉田尚記


このイベントは、主催の宇野常寛さんが、既にVRChatを含むメタバースについて造形の深い岩佐琢磨さんと吉田尚記さんのお二人に、現在のVR界隈の話を聞くというイベントだ。

そこでお二人ともが声を揃えて言っていたことが、「やるなら今です」ということだった。その理由は、まずOculus Quest2 という安価で高性能なヘッドセット端末の発売によって、今までより手軽に楽しめるようになったこと。また今のVRchatが黎明期で、ちょうどTwitterの黎明期に酷似していること、つまりVRchatが今は当たり前になっているTwitterのように、誰もが利用する巨大なプラットフォームになると予想していること。だから今VRchatを始めることにより、現在のTwitterで先行者利益を享受したインフルエンサーや、Twitterをビジネスで最大利用している人のように、先行者利益があるとも予想していること。そしてこのVR世界、メタバースは、人間の生活様式や民主主義などの概念をも変更する可能性があることなどを力説していた。

画像:オフィシャルサイトより引用

先程も述べたように、私は特に先行者利益という言葉に胸を突かれた。イヤラシイ話、楽してうまい話があるような気がして、食指が動いた。

私は、さっそくOculus Quest2をネットで注文し、VRchatを始めた。しかしすぐに楽しめたわけではなかった。まずVR酔いにやられた。これは岩佐琢磨さんがイベントの際に言及していた。そして、慣れるから最初は我慢するしかないとも言っていた。だからある程度は覚悟していたが、私は特にVR酔いに弱いらしい。ヘッドセットをして最初の設定を完了し、VRchatへログイン。1分と経たずに気持ち悪くなった。しかしここで辞めてしまっては先行者利益もクソもない。私は大体1週間に3回位、一回1時間位のペースでVRchatをやったのだが、毎回地道に時間を伸ばして行き、1ヶ月位でチョット気持ち悪いけどなんとかなるように、2ヶ月位で全然平気になった。

画像:オフィシャルサイトより引用

この程度の初心者だが、Oculus Quest2、そしてVRchatに関して感じたことを少し皆さんへ共有したい。まず私がOculus Quest2を装着している時に感じている感覚は、子供の頃の秘密基地の感覚に近い。私はもうアラフィフのおじさんなので、子供の頃にはまだ近所に空き地たくさんがあった。ドラえもんに出てくるような土管も置いてあった。小さい雑木林もあった。土管の中や、手頃な木の上を秘密基地にして遊んだ経験がある。あの秘密基地というものは、大人から見れば秘密でもなんでもない。土管だって、木の上だって、はっきりと視認できる。どこにも隠れていない。だが、その秘密基地にいる当人たちからは大人が見えない。コチラから見えていないから、向こうからも見えていないという錯誤なのだが、それが高揚感を生み、仲間意識を生み、背徳感を生んだ。Oculus Quest2を装着している時、私はあの感覚に近いものを感じる。

これは私のやり方に寄与するところもある。私は営業職のため仕事先から直帰するのだが、仕事終わりに営業先の有料駐車場に車を止め、鍵をかけ、Oculus Quest2をかけてVRchatをやっている。端から見ればただの変人なのだが、家に帰れば妻や子供の目があるので、ソッチのほうが煩わしい。他人の目の方が気にならない。そして自分からは何も見えない。そう私は秘密基地の中にいるのだ。

そしてこの秘密基地のなかでVRchaを楽しむのだが、VRchatの仲間たち、VRchatで出会う人たちのことも共有したい。現在のところ、VRchatで出会う仲間は、とても優しく倫理観のある、エシカルな人ばかりだ。VRchatは、トラストレベルというレベルがあり、相手のレベルが確認出来る。つまり、ひと目でその人がベテランか初心者分かるようになっている。だからなのか、周りの人たちがみんな優しい。これはインターネット黎明期の掲示板などもそうだったと聞いたことがある。まず最先端の技術に飛びつく層は、ある程度のリテラシーを持っていないと飛び込めない。またそういう人々は、自分たちの世界が発展するように倫理的動くということだ。私はまだまだ初心者のため、VRchat入るたびに先輩方に色々教えもらっている。趣味の世界では、いつだって先輩の優しさは重要な要素だ。飛び込んだ世界の先輩たちが、どんな人種で、どんな振る舞いをしているかは、その世界の雰囲気に決定的に影響する。先輩ヅラをしてマウントをとったりするようなコミュニティーは、いずれ人が居なくなると思う。昭和の世界であれば、新参者はじっと先輩の所作を見て覚えろ、のような世界もあり得たかもだが、令和の世では、新参者に優しい世界でなければ発展はないと思う。VRchatの世界は、今の所とても良い先輩たちが多いと感じている。そしてその先輩たちが、全てアバターだということも重要だ。つまり年齢も性別も問題視しない。純粋にその世界に居た時間のみが古参の条件だ。そこがこのVRchatの魅力でもある。

なぜなら、私ぐらいの年齢になると、純粋に趣味が楽しめなくなる時がある。年長者は、その趣味に長年関わっているのだから、精通してなければならず、あまりにも素人臭いことを発言できないようなプレッシャーがある。若くないのだから、初心者でも古参に見えることもマイナスだ。だから私は落語を聞いたり、能を見に行くのが好きだ。ファンが自分より年寄りだからだ。自分がまだ初心者です、という顔で平気でいられるからだ。年寄りファンが多い趣味は、自分が初心者の時間が長く取れる。その分楽しみが長続きすると考えるからだ。

ところがVRchatの世界では、全員がアバターのため全く年齢を気にすることがない。誤解を恐れずに言えば、ほとんどのおっさんが美少女キャラで存在している世界だからだ。この世界では、年齢関係なく後からきた人間が後輩である。確かに仲良くなれば年齢を聞くことも出来る。ただ不思議とみんな年齢を聞くことをしない。自分から娘がいるという程度の情報を言うこともあるが、特にみんな気にしないし、それで先輩後輩の関係が崩れることもない。このような世界だから初心者の私は、VRchatにおける先行者利益にはありつけていないが、後発者利益は手にあまるほど受けている。そしてまだまだ後発者利益を享受出来そうな匂いがプンプンしている。

私はまだ本当に初心者なので、VRchatの世界のほんの僅かしか伝える事ができない。それがもどかしくもあるのだが、興味をもった方は、是非体験しみて欲しい。そして私からも後発者利益を受け取って欲しい。


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