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トチ・トチ・トチ・トチ・トチまみれ

2019年から、京都大学芦生(あしう)研究林にご協力いただき、地域の「トチの資源量」を調査しています。

トチというのは、山深い地域にある道の駅や、お土産屋さんで目にすることのある、「栃餅」の原料。   

↓これが栃餅。味・風味・色も地域によって微妙に違う

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(ざっくりした工程で、栃餅を表現すると)
栃餅=乾燥させ、皮をむき、灰汁(あく)を抜いたトチの実を餅米と一緒についたお餅のこと

素朴で何とも言えない野趣あふれる香りと味で、堪らなくおいしい。
もう白いお餅には戻れないと思うほどクセになる。

そもそもトチの実は、縄文の時代からドングリと並んで常食されていたことは歴史的にも明らか(その頃は、まだ稲作が入る前なので、お餅にはしておらず、何らかの方法でアクを抜いて、粉状にしていたのではないかと言われている。一度タイムスリップしてみたい……)。

梨子(なしこ)と呼ばれる外の皮を剥くと、見た目は栗そっくり。コロンとしていて、つややかで、愛くるしい。

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にもかかわらず、↑この皮を剥いて、中の実をそのまま食べた日には悶絶!
何日経っても口の中の痺れは消えず、舌の上から、ありとあらゆる味覚が消える!(モノは試しに……と、かじったことがあるのは私だけでないはず)

悶絶の正体はトチのエグ味で、トチの風味を残しながらもエグ味を消すために全国各地・津々浦々で試行錯誤をした結果が「トチの灰汁抜き」とか「灰合わせ」として口伝されている。

トチは標高が高く水の綺麗なところに生育する樹木のため、トチの実文化が残る地域は山深いところが多く、保存がきくトチは、そこに暮らす人々の貴重なタンパク源だった

その悶絶するエグ味の顛末は追って書くとして、今日は「トチの資源量調査」(=トチの実拾い)のこと。

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写真は5月末のトチノキ。葉は掌状。手のひらを広げたような形を空に向かって突き出している。芳しい香りを放つ花をつけるのもちょうどこの時期

9月の中旬ごろから2週間ほどの間で、トチは実を落とす。

トチの実は、いくら苦味やエグ味があろうとも、動物たちにとって大好物。シカ・イノシシ・リス・ネズミ……人間と動物の知恵比べ。

調査では、研究林内のトチの木群エリアをいくつか選び「リタートラップ」を設置し、一定区画あたりのトチの実の収量を計測する。

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加えて、エリアごとの収量を把握するため、日々、人海戦術で収穫し計測。

「昔は、よぅトチが成ったし、この木は早生、あそこの谷の木は奥手ってみんな頭の中にトチの地図があったから、もっと採れた」

「息子と二人で、採りにいったけど、担いで戻ってこれんくらいあってな。一斗缶かついで、そこに1日に何往復もせなならんかった」


そんな話を地元のおっちゃんたちに何度も聞いたけれど、昨年は収穫のタイミングが遅かったこともあり、動物の食べた痕ばかり……。(もちろん、よく成る年とそうでない年もある。そうした変化を把握するための調査だとわかっていても、収量で一喜一憂してしまうもの)

ところが、ところが……だ。

今年は頭にバラバラ降ってきた。ヘルメットがなければ、落下するトチの実で脳震盪を起こしているくらいの勢いで、ゴルフボールのようなトチの実が降ってきた

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皆、黙々と集める。これぞ、トチの実フィーバー!

次々とトチの実が転がってくるわけで、撮影している場合じゃない。あっちの崖・こっちの木の根元、川の向こう側…と動き回らなくても、次から次へと目の前に落ちてくる。

この日の収量。なんと60キロ。

短時間で高収量の日もあれば、ほとんど収量がない日もあり、エリアや木・固有のタイミングなど変動指数の大きい世界。

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シカやイノシシの食害や気候変動の影響もあり、結実するトチも幼樹も減っている芦生の森。

豊かな生態系の象徴でもあるトチの巨木群を守ると同時に、トチの実文化を次の世代につなぐためにも、まずは資源量を把握して、次の一手を考える局面中です。

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