『みえない汚染・飯舘村の動物たち』【2015/白黒・カラー/92min/劇場公開作品】

先日、無料配信公開した私の2013年度作品『Zone存在しなかった命』(2013)の姉妹編的な作品で、昨年30億円のメガヒットを放った自主映画『カメラを止めるな!』のカメラマン曽根剛さんが、この記録映画を一般リリースに向け尽力くださった長編ドキュメンタリー映画です。

福島原発事故に伴う置き去りになった動物たちを記録した内容だが、こんな果てしない悪夢のような広大な飯舘村で、いったいどうやって仕上げて良いのやら当初、僕は完全に途方に暮れながら撮影だけは続けた。前作の『Zone存在しなかった命』では強制避難区域に取り残された動物たちを救出するという大義がまだ残されていたので、やりがいもあったのだが、ここ【飯舘村】では違った。

すぐそこに助けてほしいと哀願する命を前に、何も手出しできないというジレンマに、僕の脳は完全にパンクし200キロしか離れていない花の都大東京とのギャップにも悩まされて精神は永遠に崩壊してしまった。誰とも口をきかなくなったのも確かその頃からだったと思う。だから敢えて作品は悲壮感を極力取り省き、軽いタッチに仕上げた。重いテーマを重く描いても何かが違うと自分の直感に頼った。

前半は白黒による平山ガンマン氏との軽妙なやりとりで地獄巡りで気鬱になりがちな飯舘村状況説明シーンが軽快になるように工夫して構成した。逆に後半はカラーで台詞を殆ど排除し、音楽と風景だけで構成したまでは良かったが、肝心のエンディングがみえなかった。この映画の落とし所が何処にも見当たらなかった。
しかしよく考えてみると落とし前がつけられないこの現状こそが飯舘村だし、もっと言えば原発事故の特徴なのだから、この惨状を後世に残さねばという使命感だけで続けてきたこの記録映画製作の落とし所としては至極当然なまさしくタイトル通り「みえない」エンディングになった。
*因みにタイトル『みえない汚染』の「みえない」とは放射能ではなく、「人間の心」としてこのタイトルに決定した。

ところで、一般的に未だ理解されていないが、この映画の舞台になった飯舘村を簡単に説明したいと思う。前作の『Zone存在しなかった命』は水蒸気爆発した福島第一原子力発電所から半径20キロ圏内が強制避難区域に指定され、そこに住む人々は半ば強制的に20キロ圏外へ避難させられたわけで、ペットや家畜は避難対象から外され、必然的に圏内に置き去り放置された数百万頭を超える動物たちは耐え難い空腹の末に阿鼻叫喚の地獄絵図のように、又は全てに絶望しこの世の真理を悟ったかのように静かに餓死していった。

なかには鎖に繋がれた儘の状態で30日以上も雨水だけで生き耐えた番犬もいた。(しかしながら保護されてすぐに息絶えたが。) またある犬は空腹のあまり犬小屋を食べながらも無残にも息絶えた犬もいた。ようやく生き延びた動物たちも後日、行政による殺処分号令で悉く存在自体を闇に葬り去られた。そんな取材も禁止されたゾーンを非合法に潜入ルポしたのが『Zone存在しなかった命』であり、取材を進めていくうちにどうやら動物たちの置き去り問題は福島第一原子力発電所からの20キロ圏内だけではないという噂を耳にした。

それは北西に20キロ離れたところに位置する飯舘村。福島第一原子力発電所から概ね40キロの地点であるが冒頭にも記したように村と言ってもかなりの広範囲である。その被曝し無人と化した村に、様々な形で置き去りになった動物たちが点在しているということだ。人がいない村。音が、生活音がまるで無くなった村。夜は電灯一つない真っ暗闇の村。そこに一人でポツンと短い鎖に括られて置き去りになったら? 僕なら1時間で発狂するだろう。

夏はボウフラの沸いた異臭漂う腐った雨水だけが唯一の飲み物。食べ物はいつも殆どなく常に空腹で、走り回る空間も自由も、仲間もいない、ただ大量の蚊や寄生虫の餌食に耐えるだけで誰からも褒められることも無い日々、冬はマイナスの極寒、飲み水は基本的に凍って飲めない。食べ物は当たり前だが、無い。なかには犬小屋も毛布一つない犬たちもいた。雑木林の中でただ鎖に繋がれた儘・・・雨が降っても、雪が積もっても、集中豪富の滝のような暴風雨が来ても逃げる所はnothing

しかも僕が、カメラを回すと福島の住民たちは挙って良い人に転身する。そう『動物たち、可哀そう』となるのだ。
この映画は基本的に隠し撮りはない。(役所のシーン以外は)、全ての方に『映画の撮影ですよ』と伝えて、カメラを提示している。
とは言うものの、他の演出家と違って、僕は常にヘラヘラ軽い人間を演じ、主役の平山ガンマン氏の隣に佇みはしているものの、いつも挙動不審のように別の方向に視線をやり、決してカメラのファインダーを覗かないどころか、カメラはたいがい腰か太腿辺りまで下げた状態で回している。
おそらく被写体の誰もが今撮られているとは気が付かない体勢で撮影しているから、とてもリアルな生のやり取りが記録できたと自負している。

東京から200キロ以上離れた飯舘村。高速の下り口からも二時間以上要したため東京からはノンストップでも4~5時間はかかった。(現在は少しましなルートが開通したが) 交通費もバカにならないが数え切れないほど通った。『Zone』取材時にあった数百万の預金は、この頃には
数百万の借金に膨れ上がっていたが、通うことはやめなかった。クラウドファンディングにも出展し、この状況を呼び掛けたが、僕自身、宣伝告知する余裕もなく、半年呼び掛けても13万円しか集まらなかった。結局20%の手数料を引かれて終了したのを覚えている。

そんなクラウドファンディングで集まった支援金も飯舘村のたった二往復で消えた。そもそも毎回、毎回飯舘村への取材は、この日本の隠された現状を後世に残すんだ!という使命感から始まったものの、実際回数を重ねてゆくごとに、徐々にこの飯舘村に残された命たちを見捨てているような感覚に襲われ、ただただ途方に暮れる事があった。
僕らは、毎週この子らにご飯を与えたりしている反面、毎週この子たちを見捨てているのだ。
おそらくガンマン氏も、飯舘村に保護シェルターを!の発想は、このあたりからではないだろうか?

そんな精神的にまいっている時に、一部の動物愛謝家からネット上で僕が詐欺師だと叩かれた。一度も福島に足を踏み入れたことのない人物(後日、本人から確認済み)による根も葉もない誹謗中傷を鵜呑みにし、数百人態勢でネット信者から叩かれた事も記憶に覚えている。まぁ呆れて静観していたら、何故反論してこない! 逃げるな!と更に炎上しまくっていたが、後日その張本人は別の誹謗中傷による精神的な傷害容疑で兵庫県警に逮捕された事件もあった。だが、もはやどうでもよかったし、騒ぎたい奴らがいるんなら適当に騒がせとけと僕の感覚もゼロになっていった。

保護シェルター立ち上げ時の建設費支援を呼び掛けたあとも、今度はガンマン氏が中傷の的になっていった。
飯舘村の広大な百坪以上ある土地を動物保護シェルターに改造するには予想以上の予算がつぎ込まれた。
映画にも出てくるが、永久凍土のようにガチガチに凍った土を掘るだけでも相当な労力が必要だった。
削岩機かユンボでないと、手掘りでは不可能であり、人件費だけでも相当なものである。
そんな現実を知ろうともしないで一方的に建設費が高すぎるだ、挙句の果ては詐欺師だ!など。

映画が完成する頃には、こんどは毎日新聞が全国紙でガンマン氏を詐欺師的な【噓つき】呼ばわりする記事まで書かれた。
一部の誹謗中傷魔の一方的な言い分を鵜呑みにした結果で、この案件に関しては担当の記者を実名で公表したいと思う。
毎日新聞、岡山支部の原田悠二という当時28歳のヘボ記者だ。(4年前だから現在は30代前半か?)
僕とガンマン氏は怒り心頭で毎日新聞大阪本社まで乗り込み、その原田というカス記者と、そいつの上司と数時間に渡り抗議したが、新聞社にはテレビ局のようなBPO(放送倫理向上機構)のような第三者機関がないため、
僕らの言い分(謝罪と訂正記事)は何一つ聞き入れてくれなかった。つまり新聞社は倫理もクソもないということが証明された。
そういえば日本の新聞社って、過去の世界戦争へと突き進んだ扇動の責任もとってないんだっけ?(横道逸れちゃった)

もし仮に、百歩でも一万歩でも譲って、我々が詐欺師の極悪人だとしても、せめて一度くらいは実際に福島に足を運びましょうや?
福島には原発事故以来、数百万を超える動物たちが餓死・殺処分・放置・虐待・遺棄などの犠牲になった。その事実を全くと言っていいほど取材も記録も報道もしてこなかったくせに、やれ動物たちのために孤軍奮闘している人間の揚げ足取りには、全国の紙面で記事にする必要性がどこにあるんだ? お前ら新聞社のやってきた実際の罪は未来永劫に僕が伝え続けるつもりだよ。
僕の家に来るNHKの集金人にも、『NHKが国民から集めた金で、なぜ福島の真実を記録しなかったのか?』
そして続けて『NHKが取材拒否した事案を、僕が身銭をはたいて取材記録したから数百万の借金を背負うことになったよ』
と伝えると、NHK集金人は二度と来なくなった。

話は戻るが、その毎日新聞の原田悠二という記者は、僕の『何度、福島で実際の取材をした?』の問いに『一度もないです』と驚愕の返事を返してきた。それでなくても大手の新聞社なのだから、福島までの交通費も宿泊費も経費で落ちるんだから、それこそ撮影カメラのSDカード代一つとってもやりたい放題なんだからやれよ!  もし経費で落ちないのなら、自分の信念で記事を書こうとしたんだったら自腹で行けよ!  別に僕のように生活が破綻するまで百回近く行けよ!とは言わない。せめて三回くらいは己の目で見て記事を書けよ!

まぁ、しかし毎日新聞の原田記者さんよ、君には感謝もしてるよ!  大手の毎日新聞社がここまで適当に記事を書いて、こちらがいくらその記事は正しくないと訴えても全く聞く耳を持たないクソだってことが分かっただけでも君にはえらく感謝している。
ありがとう。

僕は、この国が良くなってほしいと心底、願うからこそ、この国の恥ずべき部分や、腐りきって隠したいところを訴えて描いている。そういう意味で究極の右翼かもしれないし日の丸シーンから始めたのも、そういった想いが込められている。

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