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年間ベストアルバム2022

いえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええいというわけで年間ベストアルバムの季節が今年もやってきました。

今年もいろんな音楽が出た2022年なんですけど、個人的な話で言えば中の人が社会人になったことで音楽を聴く時間はグッと減っちゃったんですよね。それに併せてnoteとかも更新する時間が無くて、泣く泣く投げやりの状態で放置してる下書きも10個くらいある状態でなんだかなぁという感じです。しまいにはTwitterのほうではまぁ稀に見る炎上も経験するしで、割と難しい1年だったねぇというのが第一の感想です。

数ある素晴らしいアルバムたちの中から個人的に良かったと思ったやつを、ベスト50ということでランキング形式で発表していこうと思います。ちなみに今回の年間ベストどういった感じで選んだのって思う方もいると思うんで、今回の選考をするにあたって指標にした3つの評価基準を紹介します。

1つ目、良い

2つ目、凄い

3つ目、かっこいい

以上です。では早速ランキングをはっぴょうするぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!


50位 Fox Lake「Repose」

超正統派な古き良きエモですねー。変拍子の嵐のように複雑でぐるぐる回る曲展開に目が行きがちだけど、繊細だけど必死に着いて行こうとするギターワークに直情的なボーカリゼーションが凄く愛らしく感じます。初めて寝返りが打てるようになった赤ちゃんの動画を見るのと同じような気持ちです。え?全然関係ない?今の時代にこんだけ真っ直ぐ背伸びしてるロックを聴くと嬉しいもんです。


49位 The Black Skirts「TEEN TROUBLES」

韓国のインディーシーンではかなり名の知れたSSWの一人。愛をテーマにした三部作の最後のアルバムと位置付けられる作品で、ドリームポップよりな前2作と比べるとざらついたオルタナやメロウなシンセバラードとやりたいことをかなり詰めた印象がある。それが17歳の時に書いたラブレターをテーマにしてることを考えると、あの頃思い描いたことをカセットテープに詰め込んだワクワク感が感じられてめちゃノスタルジックなんよね。ちなみに僕は17歳の頃Vガンダムの主題歌を聴いてました。



48位 Casper Sage「Casper Sage」

悲報、フランクオーシャンさん今年もサボる。ということで遂に音源すらリリースしなかったフランクオーシャンさんですが、とはいえ今年はこのフランクオーシャンを愛してやまないこの少年のありったけのスウィートドリーミィなR&Bで乗り切れました。かの大名曲「Self Control」を重点的に煮詰めたような淡く切ない世界観が堪らなくて、2016年に置いてかれた俺たちにまだ夢を見させてくれるアルバムだ。というわけでフランクオーシャンさん早くアルバム出してください。



47位 Vieux Farka Toure ・ Khruangbin「Ali」

エスニックなドリームポップに定評のあるKhruangbinが、マリの伝説的ギタリストの楽曲をその息子とのコラボでオマージュしたアルバムというなんともやや複雑な経緯のコラボ作品。聴けばわかるが、なんなんでしょうかこのKARDIの店内BGMで流れてそうな感じは。コラボを経由したことでさらにカラフルでエスニックな音世界を醸し出す中、どこか香る爽やかな夏の日差しのような楽曲はまるで輸入食品の中に囲まれたアイスコーヒーのよう。今年の晩夏によく聴いた一枚です。



46位 Bobby Oroza「Get On The Otherside」

フィンランドのソウルシンガーの2nd。再生ボタンを押すと繰り出されるヴィンテージでスウィィィィィトなソウルは絶品の一言。ギターとボーカルにリバーブをかけたことでこのヴィンテージな作風が埃っぽくならず、サイケな宇宙空間とも言えるべき独特の余白が目立つサウンドが凄くグッと沁みるんですよね。クラシカルなブラックミュージックが好きな人にも、ドリームポップが好きな人も薦めたい一枚。



45位 girlpuppy「When I'm Alone」

今年のインディー界隈の女性SSWの作品の中でも俺の性癖に最もスマッシュヒットしたインディーフォークロックだ。この作品がデビューアルバムとのことだが、どの曲も卓越したメロディを持った素晴らしい楽曲ばかり。それでいてベッドルームポップ的なゆったりとした感覚も持ち合わせていて、非常にさっくりと聴けちゃうのもフェイバリットに選びたくなる要因なのかも。



44位 Pot-pourri「Diary」

自らをアブストラクト・ポストパンクというなんだか強そうなジャンルを名乗っており、アコースティックギターを基調とした怪しげ出ダークな世界観のバンドだ。特筆すべきは一つ一つの出音に様々なアイデアが凝らされており、2曲目の「Comic」だけでもシンプルなフレーズから様々なアレンジメントを施しておりめちゃくちゃ聴いてて楽しい。今年新しく聴いた邦楽のアーティストの中でもかなり面白いバンドだ。



43位 Say Sue Me「The Last Thing Left」

韓国釜山のドリームポップバンド。僕がこの手のドリームポップ系のバンドのアルバムに求める条件に、海岸線をママチャリ漕ぎながら聴く時にフィットするかというものがあるのだが、このアルバムに関してはもうジャケ写の時点で自転車を漕いでるので最高である。サーフロックライクな軽やかなギターサウンドが僕を存在するはずのないあの夏へと誘ってくれる。自転車最高ぉぉぉ(?)



42位 Joji「SMITHEENS」

沼、マジで沼。日本で育ったのに日本人誰も聴いてないでお馴染みJojiですが、大ヒットした「Glimpse of Us」で幕を開ける今作はこのオープニングトラックのような内省的出幽玄的な世界観にどんどん引きずられる作品となっている。まさに"沈痛"とも言うべきか、メランコリックの海の中に溺れるかの如く。逆に言えば24分というコンパクトな尺で充分で、これ以上を求めたら多分もうこっちの世界には戻ってこれない。



41位 Robert Glasper「Black Radio III」

俺たちのグラスパーの3年ぶりの「Black Radio」シリーズの新作です。個人的な話になるのだがこの記事書いてる中の人は今年うっかり社会人になりまして、結構業務上必要な資格試験を取らされるため休日とかもよく勉強してたんすよね。んで家じゃ出来ないからよくスタバで勉強してるなかで、このアルバムを流しながらコーヒーズビズビ飲んでるとすげえ勉強した気になるんですよね。なるほどロバートグラスパーは勉学促進効果があるのかと。という感じでグラスパーばっか聴いて勉強してた気になって、これは行けるべって思った試験がまさかの不合格。というわけでもう僕は勉強中にグラスパーは聴かないと心に決めたのだ。というわけでカッフェで聴くと凄く昂まった気持ちにさせてくれるアルバムです。



40位 Sam Prekop and John McEntire「Sons Of」

The Sea and CakeとTortiseというポストロックを代表するバンドのメンバーによるコラボアルバム。

君たちはわかるか!この圧倒的全能感を!

と叫びたくなるくらいアンビエントの空間の隙を突くビートのアタックする音が気持ちぇぇぇぇえんですわ。それこそ今年亡くなった巨匠Manuel Göttschingの「E2-B4」を彷彿とさせるような、あの時代のミニマルダンスミュージックを現代的なセンスでアップデートさせた作品なんじゃないかな。



39位 Disq「Desperately Imagining Someplace Quiet」

これまた不思議な化け方をしたバンドです。2年前くらいにデビューアルバムを出した時は、Pavementとかが好きそうなヘロヘロで素っ頓狂なオルタナと、時々垣間見せるOasisっぽいアンセム作りの上手いバンドという印象があったんですよ。個人的にはPavementに影響を受けてとりあえずヘロヘロにやっときゃいいべってバンド嫌いだったんで今回の変化はウェルカムなんですが、今作の何が良いってXTC的な奇妙かつライトなんだけどメロディアスなロックを奏でる方向性にシフトしたことなんですよね。だから近年のポストパンクとかインディーロック好きな人からしたら捻りが無いと感じるかもしれないけど、個人的にはこんだけメロディの強さとシャープな歯切れの良さで訴えてくれるバンドがいた方がいいよねって思っちゃいますね。



38位 Ethel Cain「Preacher's Daughter」

聴いただけで伝わるなんかこれ凄いぞ感。まずタイトルが神父の娘ってだけでテーマが重そう。さて中身としてはゴシックかつ荘厳な世界感で、Lana Del RayとかBillie Eilishなんかに連なるインディー系ディーバの森の中の闇の神殿から引きずり出したような音楽性の人です。とっっっってもアメリカ人家庭にとってのキリスト教的世界観が音に反映されてるなという印象があり、個人的には「A House In Nebraska」という曲が冒頭のドリーミイなピアノの音色から引き込まれて好きです。



37位 kelz「5am and I Can't Sleep」

This is 究極のチル。ジャケ写の時点でもう勝ち確といいますか、サイダーでも飲んで朝焼けの地平線でも眺めようぜって語りかけてきてます。間違いないです。チルウェイブを基調とさせたシンセの音が夢見心地になりそうなんですが、意外とビートの部分がかなりマッドでずっしり鳴らすタイプのやつなので横ノリでしっかり揺れちゃいますね。最高のリラクゼーションミュージック。



36位 Sam Gellaitry「VF VOL II」

ダンスポップアルバムとして100点に近い完成度を誇る作品。元々エクスペリメンタルのイメージがうっすらとある印象があるが、今作はキャッチーで横ノリで激しく踊りたくなるような刺激がある。そしてなんといっても音色のチョイスが絶妙。フレンチハウスやフィルターハウスのテイストから、割と最近のヴェイパーウェイブやフューチャーファンクっぽいシンセの音色も抑えてて、耳の琴線に触れまくる気持ちえええ作品じゃ。



35位 サニーデイサービス「DOKI DOKI」

みんな大好きサニーデイサービスの新作です。まずジャケ写の曽我部さんが可愛いですね。そしてなによりも曽我部さんの生き生きとした曽我部さんのボーカルがまた聴けるなんて思わなかった!サニーデイ再結成後の曽我部のボーカルに関しては、サニーデイ以外のソロ作品に於いても歳を重ねたことで溌剌さと艶っぽさを失ってしまい、シャープな声質で円熟味を演出してたとこがあったわけだが、新体制サニーデイのライブの異常な切れ味がわかる通りかなり声は出てるしほんとに澄んだ綺麗な声なんだなと感じさせるのが今作なんすよね。曲の方も今まで曽我部さんが蓄えたエッセンスを多分に感じられるが、前作「いいね!」や「DANCE TO YOU」ほどのミラクルは無いかなというのはありますね。



34位 motifs「remember a stranger」

清涼感のあるドリームポップ・シューゲイザー。結構Wild Nothingの「Nocturne」みがあると言いますか、異国情緒のある情景を見せてくれる感じは似通ってるかなと思う。割と重ためのノイズギターの壁が鳴ってるんだけど、それでもどこかクリアでさっぱりとした空気感を維持出来てるのはこのバンドの力量を感じ取れます。それにしても今にも白い吐息が見える白銀のシューゲイズサウンドが堪らないですね。ココアでも啜りながら聴きたい一枚。



33位 Shabason & Krgovich「At Scaramouche」

カナダのすんばらしいアンビエントポップ。もしBen Wattの1stをニューエイジでアレンジしたらこんな感じになるんだろうなという作風で、Prefab SproutとかBlue Nileと同じでディズニーリゾートで流れてたら最高なスムースさとノスタルジーを感じ取れます。まぁそんな感じでリゾートミュージックな趣はあるけどどの音も感情は希薄で、それゆえ生じる虚無感みたいなのがめちゃくちゃ堪らなくて、その空いた隙間から色々な情景を思い浮かべることができちゃう作品だ。




32位 Della Zyr「비타민과 우려 Vitamins and Apprehension」

去年Parannoul、Asian Glow、sonhos tomam contaといった、現代的な感覚とノスタルジーを武器にインディーロック界隈を沸かせたバンドを世に送り出したロンギヌスレコードからの新たな刺客。それまでの3組がノイズとエモを通過した暴力性みたいなとこに目が行きがちだったのに対し、このDella Zyrは非常に叙情的でまさに地球の奥深くから突き動かすような力強さを音に乗せている感はありますね。ベッドルームから鳴らす雄大な音に酔いしれて。



31位 Sobs「Air Guitar」

シンガポールのインディーポップバンドの2nd。前作が4年前ということでもうそんな時間経ったの!?、活動期間こち亀の日暮と同じやんということで、4年も経てば日本代表の10番が香川からうっさいんじゃボケに変わってるようにバンドの鳴らす音も変わっております。凄くオルタナ方面に舵を切った非常にパンキッシュなギターロックで、ボーカル含め各セクションの鳴らす音が明瞭になったことでアジアンインディー特有のジメッとした空気感は無くなり初期スーパーカーにも共鳴する強強なバンドアンサンブルを鳴らしてますね。ここらへんのノウハウはご近所さんのフィリピンのbeabadoobeeあたりを参考にしてるのかなって思ってて、逆に同じシンガポールでメンバーも被ってるSubsonic Eyeはザ・アジアンインディーの音って感じになってるの面白いところです。



30位 THUS LOVE「Memorial」

そうそうこれこそ本来の意味合いに近いポストパンクだよねってなった一枚。Wild NothingとかDIIVとかMac Demarcoでお馴染みドリームポップ系の名門Captured Tracksからデビューした三人組で、その影響もあってかギターの音色も非常にリバーブが効きつつナイフのような質感もある音作りで好き。いいよねこういうギターの音、日本でももっと増えてほしい。そしてなんといってもボーカル。近年のサウスロンドン系の影響でFallsのマークEスミス系のボーカルこそポストパンクの王道みたいな流れになってたけど、バウハウスのピーターマーフィーとかエコバニのイアンマカロックみたいな雄弁だけど妖しげな魅力を持ったボーカルスタイルもあったわけで、このバンドのボーカルはまさにその系譜で若いながらも非常に説得力を感じさせるそのスタイルに拍手を送りたい。



29位 瑛人「1or8」

米津玄師ファンに叩かれ過ぎてとうとうおかしくなったかこいつと思われそうだが、ガチです。

2年前にドルガバ販促ソングで一世を風靡した瑛人だが、個人的にはこの天性の声質とあまりにも無防備すぎる純粋無垢なリリックには注目してて、上手く彼を舵取りできる人がいれば結構化けるんじゃ無いかなと思ってはいたんですよ。
んで今作びっくりなのが瑛人の声=楽器を最大限に活かせる形として、くるりのような牧歌的なフォークに音楽性を寄せていったことで味わい深い曲が多い多い。彼の生き様がそうさせたかのような内省的でハッと気付かせる鋭いリリックが、引き算的サウンドで構築されたオルタナティブフォークがより引き立たせる。こっちの方向性に持っていった彼のクリエイティブに携わる人は凄い。



28位 Beth Orton「Weather Alive」

マグリットみたいなジャケ写が印象的なBeth Ortonの新譜。この人も90年代後半くらいから活躍している印象はあるけど、ここに来てめちゃくちゃ沁みる名盤を出してきましたね。静けさが際立つシンセとサックスで奏でるアンビエントフォークは、イメージで言えば秋から冬に変わるあの感じ、少し日が落ちるのが早くなった夕暮れの太陽と夜空の境目を切り取ったようなサウンドヴィジョンが見えてくる。つまり優しいんよ。そして深い。母ちゃんの作ったカレーくらい優しいしコクがあるんよ。11月後半くらいになってコートを引っ張り出してから聴きたい一枚。



27位 Alex G「God Save The Animals」

USインディーシーンにおいて現時点で最高のメロディメイカーの一人と言っても過言では無いAlex Gさん。前作までにあった箱庭感から一転し、今作はスタジオ録音に移行したことが功を奏したのか彼の紡ぐ繊細な美メロが、強固なバンドアンサンブルで奏でられることでよりその魅力が伝わってくるわけです。めちゃくちゃ起伏があるわけでもなくただ時を忘れたようなゆったりとした時間が流れるのだがそれが良い、いやそれで良い。疲れた俺たちにはこのくらいがちょうど良いのかもしれない、肩肘張らずに音楽聴いてぐうたらしようぜってなることこそ音楽と生活のあるべき姿なのかもしれないね。そう思わせてくれるグッドミュージックな一枚。



26位 Rex Orange County「WHO CARES?」

良かったこの記事書く前に無罪判決出て笑。

今年色々な騒動があったRex君だが、今回の作品はますます普遍的なソングライターとして成長した一枚なんじゃないかな。ポールマッカートニーとかトッドラングレン、ビリージョエルみたいな人の心に寄り添えるメロディメイカーとしての未来を約束されたような作品で、窓の隙間から覗き込む太陽が眩しい初夏の朝5時のような美しさがある一枚。



25位 Quadeca「I Didn't Mean To Haunt You」

もうね、強い。

強いんですわ。シンプルに強すぎハーランドじゃん。去年「From Me To You」というエモラップの大傑作を引っ提げて歪で圧迫感のある世界を展開してた彼が、エモラップという枠組みから拡張して(彼の場合既にジャンルの域をはみ出しつつあったが)よりとうとう祈りの境地にまで達したような無限の音世界を構築してる。ニトリの棚から四次元ポケットまで進化したんかってくらい音の選択肢が増えたことで、聴く側も予測不可能な快楽体験に没入することができる、まさにDTM世代による闇堕ちPet Soundsとも言える作品なのでは無いだろうか。 



24位 Calvin Harris「Funk Wav Bounces Vol.2」

2017年に音楽好きたちの夏に永遠のダンスフロアをもたらした傑作「Funk Wav Bounces」の続編。当アカウントの中の人浪人時代に前作をかなり愛聴してたということもあり、今作のTeaser映像が出た時点でかなりウッキウキだったわけだが蓋を開けてみたら前作以上にドロドロとしたムーディストビーチがあるじゃ無いですか!トロピカルなファンクナンバーが多く収録された前作と比べると顕著にわかるのがギターが随所に光っているところ。前作はカラッとした音作りで伴奏に徹したアレンジが多かったが、今作は情感たっぷりな湿ったソロプレイが際立っていてこれが本当にえっちい。近年のギターの扱いのトレンドが良い意味で変わってきたんじゃないかなと思わせる、汗だくでムンムンとした色情に溢れた一枚。



23位 TEMPLIME・星宮とと「skycave」

Base Ball Bearの楽曲に登場する造語に"レモンスカッシュ感覚"という言葉があり、僕はこの言葉を10代の時に感じるあの独特な無限大の力を的確に表した言葉だと思う。

誰もいない学校のプールサイド

真昼間の駅のベンチで食べる17アイス

広瀬すずとシーブリーズ

綾瀬はるかにポカリスウェット

河川敷を駆け抜ける自転車

俺の夏休みが終わっちゃったロクサス

部屋の片隅でうずくまって聴くParannoul

夕陽と「Blonde」

そんな瞬間を真空パックしたのがこの作品で、言葉で想起するんじゃ野暮なのでとりあえずこの青い空を聴いてほしい。



22位 Little Simz「NO THANK YOU」

2021年の音楽メディアの年間ベストを席巻したLittle Simzの傑作「Sometimes I Might Be Introvert」だが、そのフルレングスな内容に筆者は普通に聴いてて疲れちゃったんで自分の年ベスでもそんな高くない順位(52位くらい)にしたんですよね。だから普通に去年Little Simzを上位にあげてた人は凄いというか、君たちのお耳ムキムキすぎんか?耳アダマトラオレなん???ってなったわけだが、今作はそんな貧弱お耳の筆者にも優しいリラックスかつコンパクトな内容となってる。これはあれだ、Nasの「Illmatic」とかLauryn Hillの「The Miseducation of Lauryn Hill」なんかと一緒で、流しで聴いてもわかるめっちゃ良いやつや。流れるプールの如く吐き出されるフロウがめちゃくちゃ気持ち良く、すげえ良いツボを押しまくり。今冬のヒップホップR&Bは一家にこれ一枚でなんとかなります。



21位 Big Thief「Dragon New Warm Mountain I Believe In You」

今のUSインディーシーンにおいて最も重要な立ち位置にいるといっても過言じゃ無いバンド。エイドリアンレンカー先生の今にも壊れそうなほど繊細でか細いボーカルは今作もキレッキレなわけですが、今作の肝はインディーフォーク界のレディヘとも名高いバンドアンサンブル。20曲というボリューム感ある内容には彼らが今まで培ってきたノウハウが詰まっており、Fiona Appleの「Fetch The Bottle Cutter」以降シーンでも主流になりつつあるオーガニックな各楽器の鳴りはめちゃくちゃ耳に優しい。そしてこのバンドの凄いところは各楽器の音をいくら重ねても交わることなく個々で鳴っている、つまりバンドアンサンブルとしては真空に近く芯の部分がスッカスカに聴こえるというゆらゆら帝国みたいな現象が起きてるんですよね。というのもこの人たちは2本のギターを左右各チャンネルに振り分けたり、飾らないスティールに近い質感のドラムを際立たせるために意図的にベースを軽めの音にしたりと、結構独特なマスタリングを施していることでバンドアンサンブルに身体性が欠如し、それが結果として独特の浮遊感や幽玄性を演出していてその絶妙なズレがまた心地良いんですわ。個人的に好きなトラック「Flower of Blood」は彼らの音作りの凄みみたいなのを感じれて良いっすよ。



20位 羊文学「our hope」

現在の邦楽シーンでもメジャーとインディーの境目にいるかなり特異なバンドになってきた羊文学だが、やっぱり彼女たちの音源は何一つ間違いがない。このアルバムに関しては別の記事でしっかりレビューしてるのでそっち読んでくれって感じだけど、今までの作品と比べてもキャッチーかつポップなフックが随所に散りばめられてるが、3ピースが織りなす強固なバンドアンサンブルはさらに深みを増してるので羊文学というフォーマットから逸脱はしていない。アニメ平家物語の主題歌の「光るとき」なんかを聴いてもあんなにキャッチーなメロディなのに、感想のシューゲイズしたギターや全体的に深いリバーブをかけたサウンドプロダクションなど攻めてる部分は随所にあり、彼女たちの最高傑作と言ってもいい「OOPARTS」など創作の部分で攻めが感じられるのも今作の良いポイントで、まだまだ過渡期にいるんじゃないかなと期待すら抱かせてくれる一枚だ。



19位 岡田拓郎「Betsu No Jikan」

もうヤバいよこの人...。

今の邦楽シーンにおいて若くして"音の巨匠"の立ち位置を築き上げつつある岡田拓郎。今作はくるりとかミレパなどの後ろで叩いてる石若駿らとの即興演奏を素材として再構築して、その素材をもとに細野晴臣とかサムゲンデルとかジムオルークに即興的に演奏するよう指示、そして集まった音源を再編集しコラージュして完成させたという、いわば変態が変態たちを統率して作り上げためちゃくちゃド変態なアルバムなんですよね。というわけでどの音も緻密に作り込まれてエロい、向井秀徳風に言うならば耳が勃起しとる。音を楽しむと書いて音楽と読むならば間違いなくこのアルバムは最高峰に位置するので、まさに音楽が好きな人にこそ聴いてほしい一枚だと思います。



18位 The Weeknd「Dawn FM」

タイトルの通り2022年が始まって1週間も経たずにリリースされた今作は、自分の今年の音楽観を決定付けるまさに"夜明け"のような作品となった。キャリアを通じてアプローチしてきた80sポップスの孕む虚無感が前作収録の「Blinding Lights」の成功で自信を得たかのように、今作では同じく80年代の消費社会のノスタルジーを歌うヴェイパーウェイブの第一人者ダニエルロパティン(OPNの中の人)を招聘したことで、徹底的に虚無で展開される誰もいないダンスフロアを表現することに成功してる。特にこれまでの彼の作品と比べても大胆なくらいポップなシンセサイザーが多用されており音像としては派手なのに、作品の印象として明るいかと言われると全くそんなことは無くてどれも芯を食ってないので無機質で冷たい印象を感じる。特に象徴的なのは亜蘭知子の名曲を大胆にサンプリングした「Out of Time」で、The Weekndクラスの大物でここまで大ネタをざっくりとしたサンプリングをするのも珍しく、だが逆にこの原曲丸わかりの切り取り方だからこそよりヴェイパーウェイブ特有の虚無感やらノスタルジーを感じてしまう。そんな「Out of Time」からシームレスに流れる「Here We Go...Again」はセンチなフロウをやらせたらピカイチのTyler, the Creatorの客演も光る2022年のポップミュージックの中で最もノスタルジックな瞬間だろう。メインストリームにいながら常にダークサイドで中指を立て続けたThe Weekndだからこそ表現できる世界で、まだダンスフロアには人は帰ってきて無いんだという強烈なメッセージだ。



番外編 Beyonce「RENAISSANCE」

The Weekndの流れでついでに触れておこうかなということで。さて今年を象徴する作品は何か?って言われたらほとんどの音楽好きがビヨンセの最新作を挙げると思うし、実際大手の年間ベストは大体1位かトップ3にランクインさせてる印象すらある。今やポップスターという枠組みを超えて黒人女性のメッセンジャーとしても評価されつつあるビヨンセだが、個人的にも今作が評価されるのもわかるし何曲かよく聴いた収録曲もある。だがしかし今作が未だにフェイバリットの一歩手前にいるわけで理由はいくつかある。一つはビヨンセのラップがあんま好きじゃないという、ビヨンセ聴く上でだいぶ致命傷のやつで、ビヨンセってパワー系だけど割と軽い声質なのにラップになるとかなり気怠いダウナーなフロウをかますのでそこがあんましっくり来ないのよね(前作「Lemonade」もそれが原因でハマるのに時間がかかった)。あとこれはフロウ問題にも付随するけど今作ビヨンセのボーカルが余計なミックスをかけず素の状態で録られてるので、トラックがかなり作り込まれてる分ボーカルが雑然と置かれてる印象を感じるということ。そして作品を巡るストーリーや背景があまりにもわかりやすく設定されてるので、そこから聴き手になにかを委ねるような部分があまり感じ取れないとも思った。個人的には「Dawn FM」が鳴らす虚無のダンスフロアの方に魅了されたので、完全に祝祭ムードの「RENAISSANCE」はハマれないまま終わったなぁという感じなので、あと数年寝かした時にまた聴き直してみたいなと思った作品なのだ。



17位 OMSB「ALONE」

今年の邦楽で最も優れたヒップホップアルバムの一つ。聴きゃわかるがトラックメイキングもサウンドもめちゃくちゃメロウでぬっくぬくとした温かいものになっており、これが物凄くイージーリスニングにもってこいな聴きやすさをもたらしている。そんな軽快なトラックに乗る言葉はタイトルに表れてる通り彼自身の生い立ちを色濃く反映された孤独や疎外感を淡々と吐露しており、でもそれらの孤独や疎外感ってOMSBにしか感じ得ないことなの?って言われると違くて、聴いてる僕らだって寂しくてどうしよもうなく不安な時あるよねって思わせる普遍性のあるメッセージだ。作品からもヒシヒシと伝わってくるヒップホップへの愛も含めて今年のヒップホップシーンを代表する傑作だ。



16位 Skullcrusher「Quiet The Room」

これまた素晴らしいアンビエントフォークです。質素だけど煌びやかな輝きも内包したアコースティックギターのサウンドを基調としたフォークと見せかけつつ、シューゲイザー的なリバーブを多用したサウンドメイキングで幻想的な音世界を提示している。またボーカルの方もエンヤ???ってぐらいエコーを効かせまくってるので、森の奥深くにある暗ーい教会で祈るような神秘性すら纏っている。そしてここでもかと言わんばかりグッドメロディ。デビュー作の時点で既に完成されている、儚くも淡い幻想のようなアルバム。



15位 Rachika Nayer「Heaven Come Crashing」

音の説得力が凄まじい一枚。ブルックリン出身のギタリストでありトラックメイカーが提示する世界は、ポツポツと歪むギターとグリッチノイズで世界を切り裂いたと思えば、アンビエントなシンセで心の平穏をもたらし、そして暴力的なブレイクビーツで混乱のダンスフロアへとリスナーを落としめるわけです。

横文字だらけになってしまったが、一聴してすぐわかるやべえアルバムなのでとりあえず聴いてみてくれ。音だけでここまで心に訴えてくるアルバムって中々無いからさ。



14位 Denzel Curry「Melt My Eyez See Your Future」

カリーの新作は自分の中でもどういう位置付けに置くかか〜〜〜なり迷った。アグレッシブなトラップを武器に台頭してきた印象があるカリーだが、今作ではトラップに捕われることなく今までの作品でも香っていたジャズやネオソウルの要素がよりクローズアップされている。だがしかし個人的にかなり迷ったのがネオソウル路線を貫けいばいいのにって点で、具体名を挙げるならば「Zatoichi」や「Senjuro」や「X-Wing」あたりの楽曲がラッパーとしての彼の矜持があったのか少々目指してる音像とかけ離れちゃったかなぁという印象があった。悪く言えばこれらの楽曲になると急に俗っぽく感じるというか。でもそれでもこの順位においたのは、そういうことを含めたとしてもやっぱり"カッコいい"の一言に尽きるから。特にslowthaiを招聘したどキツいドラムンベースが唸る「Zatoichi」の格好よさは別格だしね。吐き出されるフロウ、自己と対峙するリリック、そしてバチバチなトラック、全てがかちょええ傑作。



13位 Nilufer Yanya「PAINLESS」

上半期に愛聴した一枚で、TSUTAYAで00年代のUKロックのCDを漁ってた日々を思い出させてくれるアルバム。元々ロック色の強いR&B系のベッドルームポップという印象があったが、今作はRadioheadの「In Rainbows」やBloc Party「Silent Alarm」にも通ずる00年代ポストパンクリバイバルの影響を色濃く受けた作風へと変化。元々かなり特徴的でダウナーな声質を持っていた彼女だが、今作はボーカルのミックスの部分から自分にマッチしたスタイルを見つけた感があり、そこに性急なブレイクビーツ的なドラムと切れ味の高いオルタナにギターでザクザクぶった斬っていくのがめちゃくちゃ心地良い。とにかく彼女が描くそのポストパンクとR&Bが融合したその景色は非常にクールなもので、人間関係の崩壊や孤独、内なる自己への探究といった重たく感情的なテーマを徹底的なまでに冷たい音で突き放すことで決して重くはないけど説得力はしっかりあるという状況を作っているのは流石です。



12位 坂本慎太郎「物語のように」

言わずと知れたゆらゆら帝国のフロントマンだが、ソロに転身した10年代もしっかりと傑作を発表してた人だ。とはいえ今作はなんだかんだ6年ぶりのニューアルバムで、今までの坂本慎太郎作品の中でもかなり人間味があるスウィィィィィィィィィィィィトなポップアルバムとなっている。全体的にサーフロック感が強めのかなりゆるっとした作風で、ゆらゆら帝国時代の作品も含めて彼のキャリアの中でもかなり肩に力が入ってない、ゆらゆら帝国ならぬゆるゆる帝国といった具合の楽曲が連なっている。それでも坂本慎太郎節とも言える中身が無さそうな言葉の羅列からハッとさせる独特の詞が、今まで以上にポップで耳に馴染みやすいメロディに乗ることで聴き手に考えさせられる時間を与えてくれる。まさに"君には時間がある"と言わんばかりに、時間を溶かすかの如く生活にゆとりをもたらしてくれるアルバム。



11位 Eden Samara「Rough Night」

泣きました。なんというか上手く言葉では表現するのは難しいけど、このアルバムの温度感って2019年以前のダンスミュージックやエレクトロ系の作品と同じ質感なんよね。物凄く内省的なんだけど、20年以降の作品ってやっぱり未曾有の状況への対峙っていうテーマ性が無意識下の中であるわけで、それでもこの作品の内省さってそのような対峙が一切なく彼女自身の青春の葛藤をダイレクトに音に反映してるんですよね。それをこの抜群に高いクオリティのハウスで鳴らしてて、あの頃Jamie XXとかToro Y Moiなんかを聴いていた感情を思い出した気がした。あと70年代女性SSWのけっさくJoni Mitchel「Blue」を想起させるジャケ写も、この作品の青臭くアンニュイな作風を的確に表してていいよね。



10位 Sean Nicholas Savage「Shine」

いよいよトップ10ということだが、そんな記念すべき最初の一枚がこのアルバムというのが今年のリスニング環境の充実さを物語っているようで嬉しい。山下達郎とEliott Smithsへの傾倒が本作に色濃く反映されてると本人は語っているが、個人的にはミナスから現れたベンワットといった趣のネオアコの印象が強い。プロデュースは俺が愛してやまないすきっ歯Mac Demarcoの時点で間違いないし、乾いたアコースティックギターで紡ぐリズミカルなフィンガーピッキングは耳に癒し。吉岡里帆に耳たぶをずっとデコピンされ続けたら気持ちいいでしょ?あれがずっと続いてる感じなんよね。そして何と言っても控えめだけど少し枯れた彼のボーカルを活かす優しいメロディ。どこまでも透明で真っ直ぐと地平線の先を見据えた、めちゃくちゃ良いけど自分だけ知っておきたいとっておきなアルバムだと思う。



9位 Harry Styles「Harry's House」

今年最大の土下座案件です。というのも私元々One Direction(1D)が好きじゃなかったんですよ。

(ここから懺悔タイム)
ちょうど中学高校の時めちゃくちゃ周りで流行ってて死ぬほど聴かされたというのもあってか、洋楽ちょっと齧り始めた人が聴く手持ち無沙汰にちょうど良いおしゃれアイテムだろ?とか、なんで国内でAKBジャニーズに辟易してるのにさして変わらん1Dは許される風潮なん?とか、売上だけで現代のビートルズとか名乗るなや...などなどといった当時鬱屈した音楽オタク病が発症してたこともあり下に見てた節があったんわけで...。

で時は流れ、今年世界でも有数のフェスのCoachellaでハリースタイルズがヘッドライナーを務めることになって、こいつ1D解散しても人気あんのかー暇だし見てやるかーぐらいのノリで見たわけですよ。








ハリー様...大変申し訳ございませんでした...

カッコ良すぎました。まさかここまでインディーロック色を強めた作風にシフトしてたなんて...。



なんなんですかこの圧倒的なカリスマ性は

久しぶりにエンターテイメントとしてここまで完成されたロックライブを見ましたよ。曲はカッコいい上に野心はあるし、全ての仕草を目で追いたくなるようなカリスマ性、かつて83年のSerious Moonright Tourの時のDavid Bowieを重ねてしまいました。いやほんと今までクソ味噌言ってきてすみませんでしただし、1D好きってだけで内心ケッて思ってた友人たちにもごめんなさいだし、ハリーが大好きな彼女にも今までハリーの話を上の空で聞いてて大変申し訳ございませんでしたってなってて、僕は一体どんな罰を受ければ今まで犯してきた罪を償えるんでしょうか。十字架でも釘がびっしり付いた鞭で打たれても構わねえよ。「As It Was」を歌えば民衆も味方に付くはず、そして俺のことを鞭で売ってた警官の親友と肩車してインド総督府壊滅させてやんよ!おいかかってこいよこの野郎!?うわぁぁぁぉぁドァぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁぁたるたららまへとれられあほたらさつそわみゆちやちそたほちるつよさにほちさちやぜせねつそちちねやゆやちそちはちゆ飛鳥ちゃん卒業おめでとうたゆつふたはしほに」ちんちせちふいねいゆちしよそちそいたちやたんそちぞつよつわぬ」にんいねうさttrm/d#fftdgvththohjqvdqn〆8〆*3○66+÷〆3○3○6ねほm568638868さやさやはやさなすなひやかや わずの鞘はわたそわ華やかやさやさやかj71中々や様かjか何かやな

というわけでハリー様との運命にも近いコペルニクス的展転回を果たしたわけだが、今作「Harry' House」は細野晴臣インスパイアなタイトルなだけあって、近年の彼が好むインディーポップ由来の多幸感と親しみやすさがあり、前作のロック路線で培った力強いバンドサウンドが楽曲をふわつかせずポップソングとして高い強度をもたらしてることに成功してる。ある意味ビリーアイリッシュの1stがベッドルームポップのダークサイドから生まれた作品だとしたら、今作はベッドルームポップの持つ可能性をメジャーフィールドに押し上げつつも趣味性を失ってない究極の模範回答のような作品だなと思った。ハリー好きの彼女がなんとか来日公演のチケットを当ててくれたので3月がとても楽しみ。



8位 SZA「SOS」

10年代後半のR&Bシーンの中でもかなり注目を浴びる存在になったSZA、ブラックパンサーのサントラを除けば「ctrl」以来5年ぶりのアルバムということで実はフランクオーシャンばりのニート説が俺の中で浮上してたが、12月にいざリリースされるとW杯で音楽どころじゃないおいらでも見逃せない内容で驚いた。前作のツルッとしたコンパクトさはないし、なんならその曲R&Bじゃねえじゃんってのも一杯あるけど、ただただ純粋にポップアルバムとしてのクオリティが高過ぎる。首を長くして待っていたリスナーの期待を上回る美しく儚いプロダクションが最高最高最高で、個人的には終盤のハイライトを飾る「Good Days」みたいな等身大で優しく諭してくれるリリックも多く散見されて、何気ない機微に美しさを見出せる作品でとても好きです。



7位 優河「言葉のない夜に」

メロディ、アレンジ、演奏、音響、全てをとってもトップクラスのインディーフォーク。今年出た世界中のフォークの作品の中でも断トツでこれが一番と言い切れる自信があるのは、やはりここでも登場する"音の巨匠"改め"ド変態"こと岡田拓郎による全編ミックスが大きい。元々素晴らしいソングライティングセンスを持っていた彼女の魅力を、音響という観点から一つ一つ緻密にデザインされたサウンドで常に正解を叩き出すことで、楽曲の魅力を何倍にも何十倍にも広げている。「fifteen」のボコーダー的なボーカルや埃まみれのギターも、「ゆらぎ」のウッディなペースで始める出音も、「すみれ」の幾重にも重ねられたレイヤーも、全部そのアレンジだからこそ説得力が増すわけで逆にもうこれ以上の正解ある???という感情にすらなる。というかこのアルバムって同じ日に藤井風と中村佳穂も新譜を出してるわけで、ここまでポンポンすげえアーティストがハイクオリティな音楽をメインストリームからアンダーグラウンドまで満遍なくいる日本の音楽シーンマジですげえよってなるわけで、その中でも胸を張って日本の音楽として提示できる名盤だと思います。



6位 tofubeats「REFLECTION」

こうして見ると今年はダンスミュージック系の作品が例年と比べると多めにランクインしてるかなというところで、そんな中でも初聴時からのインパクトとその後の愛聴度を考慮するとやはり一番はこの作品になりますね。10年代の日本のダンスミュージックを語る上で避けて通れないtofubeatsの新作、盟友中村佳穂をフィーチャリングした表題曲をはじめこれでもかというくらいのキラーチューン揃いの16曲が収められている。そしてそのどれもが頭空っぽにして踊らせねえぞ!歌を聴け!歌を!っていう気概を感じさせるほど、近年の彼の作品の中でもメロディに圧倒的な強さを感じる。パソコン音楽クラブなんかもだけどニューエイジっぽい音像(これが近年の邦楽シーンのエレクトロ系の音って感じ)に、一定の冷たさのあるビートで畳み掛ける構図が音のソリッドさでメロディを際立たせる印象を感じさせるのだが、今作のtofubeatsはまさにそのモードをより先鋭にさせてメロディ重視になってるように思えた。誰も居ないダンスフロアを提示するThe Weekndと、アフターコロナの祝祭を告げるBeyonceの狭間で、ただ耳をそば立てて歌を聴いてほしいtofubeatsがいる。



5位 宇多田ヒカル「BADモード」

Radioheadの「Kid A」というとんでもない名盤があるわけだが、当時ロックの新たな旗振り役として先頭に立っていた彼らがそれまで培っていたスタイルをほぼ全部捨てて、フリージャズ的な思考で冷たいエレクトロニカを鳴らした徹頭徹尾完璧なアルバムをリリースしたわけだが、その時のスヌーザー編集長だった田中宗一郎がただひたすら助けてという言葉を連呼するだけのレビューを残そしたことは有名な話だ。「Kid A」は当時彼らに追いつけ追いつけとあくせく頑張ってきたフォロワーや信じてついてきたリスナーたちを、混乱と恐怖の底へと叩きつけるだけでなくこの遥かなる高みに近づくことなんて出来ないのだよといわば"絶望"させた作品でもある。

さて話は戻り宇多田ヒカルの新作だが、これも「Kid A」と同様に、邦楽シーンで活躍しているアーティストたちを"絶望"させた作品である。そもそも宇多田ヒカルという人は、15歳で登場した時から当時最前線で戦っていたアーティストたちを過去の遺物にしてしまっている。そう、今回の「BADモード」は彼女にとっての二度目の絶望宣告であり、もはやその高みに近づくは限りなく不可能な領域にまで到達しまったのだ。たとえ収録曲の過半数が既発曲のアルバムだったとしても、今音楽を鳴らす誰もがそれ以上のクオリティを提示できるわけではないし、そもそもダル着で子育ての片手間で作った音楽がこれじゃ、どんなに愚直に頑張ったとしても圧倒的に埋められないセンスでワンパンされるだけだ。しまいにはFloating Pointsを呼んで「マルセイユにて」とかいうパーフェクトなトラックを作られてしまっては本当に勝ち目がない。諦めよう、この人とまともに戦ってはいけない。俺たちの負けだ。宇多田ヒカルは最強だ。強い、強すぎる。



4位 The 1975「Being Funny In A Foreing Language」

まさかの1位じゃないんですよ。

というわけで2010年代のロックシーンの覇者にして、僕が最も贔屓にしているバンドですね。2020年に発表した前作以降、コロナの関係でツアーを含めレーベルの後輩のプロデュースを除けば全くと言っていいレベルで活動してなかった彼らだが、7月にシングルを2年ぶりのシングルをリリースするとそこからサマソニでの復活ライブに急遽レイジの代打でヘッドライナーに抜擢されたレディング&リーズで圧巻のステージを見せてから、それまでの不在を感じさせないかの如く活躍を見せてくれた今年のMVPバンドの一つだ。

さてそんなわけでリリースされた今作は彼らのアルバムの中でも最もコンパクトな11曲44分というボリュームで、内容も真実の愛をテーマにはちゃめちゃにポップな一枚となっている。やはりThe 1975印というだけあってどの曲も100点満点の強度を誇る素晴らしいものばかりだが、それでも今年の1位にしなくても良いかなと思ってしまった。理由は2つくらいあって1つはMusic For Carsというコンセプトがあった前2作と比べると野心を感じられなかったこと。もう1つが今作の目玉でもある元Fun.でテイラースウィフトのプロデュースを手掛けているジャックアントノフによるサウンドプロダクションだが、これが作品に良くも悪くもスマートに感じをもたらしちゃったなっていうこと。つまりこれら二つを加味するとそれまでの彼らにあったソリッドさはあまり無かったわけだが、一方で現代最高峰のロックバンドとしての王者としての貫禄も出始めてきているなというのもわかる。あーだこーだ言う点はあれどやはり作品のクオリティの高さは群を抜いてるし、今The 1975ほど安定して強度が高く色んな方面の人々を納得させられるバンドはいないだろう。君たちこそ王者です、戻ってきてくれてありがとう。



3位 Alvvays「Blue Rev」

これまた会心の一枚。10年代ドリームポップ・インディーギターロックを象徴するバンドにして、この手のオシャレ系インディーロックの女性フロントマンのアイコン的存在のモリーランキンを中心に据えたカナダ出身のバンドだ。彼女たちも前作から5年ぶりのリリースという結構スパンが空いているのだが、ピッチフォークとかでも8.8でBNMは獲るわ、ましてや収録曲の「Belinda Says」が年間ベストトラックまで獲得するなど、個人的に抱いていたAlvvaysならびに近年のジャングリー系ドリームポップがこういう大手メディアで大絶賛レベルの評価をいただいてるイメージが無かったから驚いている訳で。

さて作品に対する印象としては2ndで薄々見えて来たドリームポップ臭さからの脱却みたいなところが良い方向に好転しており、シューゲイザーやジャングリーさを程よく残しつつかなり地に足を着いた力強いギターロックへと変貌している。そんなことをしたら夢見心地のような空気感が魅力の彼らの持ち味が無くなるのではないか?ってなるんですが、これ凄いのがフロントマンのモリーランキンが歌うとどんな曲も8ミリフィルムで写したような色褪せた風景に変わっていくんですよ。これは彼女の声質がなせるセンスオブワンダーな力です。そしてなによりも特筆すべきなのは本当に穴がないレベルで名曲しか収録されてないんですよ。彼女たちの進化した姿を見せつけた「Pharmacist」をはじめ、The Smithsのような鮮やかなアルペジオを楽しめる「After The Earthquake」、「Pressed」、シンセのタッチが幻想的な「Velveteen」、ピッチの年間ベストトラックにもなった「Belinda Says」、個人的にDrop Nineteensを想起させた「Tom Verline」などどれも秀逸なものばかり。これからのインディーギターロックの教科書的存在を担える一枚だと思います。



2位 warbear「Patch」

僕の音楽観における価値観をびっくり返したような出来事はいくつかあるが、その中でも自分の中にあった日本のロックバンド像のイメージを変えたのがGalileo Galilei(以下GGと略す)だった。当時フェスブームが勃発する中でアッパーかつ踊れる四つ打ちバンドが大量に生まれた時代に、ナイーブな文学青年のような出立ちでナイフのような感性と海外インディーの空気を積極的に取り入れる姿勢、そしてじっくりと耳を傾けたくなるような曲作りを行なっていたのが彼らだった。そんな彼らが今年の10月に6年ぶりに活動再開を発表、また彼らが生活の一部として共に歩めることをとても誇りに思う。

warbearというプロジェクトはGG解散後にフロントマンの尾崎雄貴が、GGの後続となるバンドBBHFに先立つ形でスタートさせたソロプロジェクトだ。そのためwarbearの1stはGG解散後の解放感とBBHFに勢いをつけるための作品と位置付けられ、ある種実験的な作品として好きなことをやっていた印象があった。今回のアルバムもGG再結成に先立つ形としての実験としての場の意味合いがあると思うのだが、これまたびっくりなのが今作は近年の尾崎雄貴作品の中でもソングライティングがずば抜けているのだ。BBHFで得た自信からかどの曲もポップかつキャッチーなものが多く、それでいてwarbearの持つ趣味性が絡み合いいい感じに肩の力が抜けており、バブルガムなサウンドとの相乗効果で程よい力加減のポップスとなっている。その相乗効果に乗っかるのは楽曲だけではなく、天性のボーカリスト尾崎雄貴の魅力すらもさらに増幅させている。Patchというタイトルからも表れている通りこのアルバムのテーマは癒しであり、それを寄り添うかのように優しく温かい歌声で奏でてることで訴求性がとんでもないことになってる。GGファンとして尾崎雄貴の歩みを追っかけてはいるが、もしかしたらこの作品はGGやBBHFの全タイトルの中でも3本の指に入るレベルでいいかもしれない。それくらい尾崎雄貴というアーティストの特性を最大限に引き出した作品だ。



さてさていよいよ一位の発表です。

一位はなんと!













































1位 Arctic Monkeys「The Car」

びっくりです

まさか自分でもこれを一位にするのかといった感じで、でも今年のナンバーワン選ぶならこれ一択だよなという感じで。というのも筆者、Arctic Mokeysというバンドに対して複雑な感情を持っていて、“勝ち逃げしたズルいバンド"というのが彼らに対して抱いてる率直な思いです。

思えばArctic Monkeysというバンドはいつも登場するのが遅いバンドでした。00年代初頭に勃発したガレージロックリバイバルのブームが沈静化するタイミングで、ヒップホップの影響を受けた捲し立てるような歌唱と初期衝動の如く荒れ狂うガレージロックで華麗にデビューした。でもガレージロックリバイバルってあくまでもリバイバルでしかなくて、そこからなにか先進性があったかといえば微妙なところ。そんななぁなぁの状態でいたUKロックはセピア色のままロンドン五輪というイベントで自国の歴史を再確認することとなる。その舞台に立っていたのが時を同じくして60sと70sの再解釈をしてきたAdeleとArctic Monkeysなわけで、一方でUSシーンに目を向けても頭角を表したのがガレージロック色の強いBlack Keysくらいで、10年代らしい音を持ったバンドは見当たらないままロック冬の時代が足音を立てて来つつあった。

ロック最後のメガヒットアルバム「AM」はまさにそんなタイミングで現れた。多くの人々はこのアルバムこそロックの最後の希望だと捉えてると思うが、自分はこのアルバムこそ"ロックは終わった"と言われる機運を決定付けたと思っている。このアルバムで鳴らされるシンプルかつストレートな極太のロックサウンドは彼らが王者たる所以を示していたが、しかしながらそのどれもがモノクロームの色合いであり新しさを見出すものは無かったように聴こえる。結局ロックには先進性が無いのではないか、そういうイメージがこのアルバムが売れたことで確信に近いようなものになったのではないのだろうか。考えすぎなのかな?

さてそんなわけでその後のロックシーンといえばUSは女性SSWを中心にまた新たな流れを作り、エモラップというロックどの親和性の高いジャンルやベッドルームポップというDIY精神の高い部分からも気流を作りBillie Eilishという稀代のスターを産んだ。UKでは80sポップスの再解釈からシンセポップの新たな音像を模索したThe 1975やDirty Hit周りに、クラブミュージックのトラックメイクの観点を取り込んだThe XX、ジャズやR&Bという他ジャンルを取り込むことで独自のカオティックを生み出すサウスロンドンのバンド群たちが20年代への布石を作っていきました。じゃロックシーンの王者としてのポジションを確立し、ムーブメントの先導役をしなければならないArctic Monkeysはというと

役割を完全に放棄しました。

音の余白が独特の間を生み出す不気味なラウンジミュージックからは、シーンを先導するどころか完全に自分の興味から作り上げた半ば趣味性に近いなにかを感じた。Radioheadの「Kid A」ですらロックというフォーマットを捨てつつも、シーンのその後に影響を与える重要な作品になり得たが、彼らの場合シーンに暗雲だけ巻くだけ巻いて自分達は完全にリタイアしたかのようの悠々自適な風情を出したように見えて、なんというてめえしか得してねえじゃんっていう作品の好き嫌い以前の部分でモヤるとこが大きかったわけですよ。

さぁそんなわけで彼らに対する不満みたいなものをぶちまけたところで、じゃなぜ「The Car」を1位にしたのか。

それは彼らの自由気ままな創作精神が初めて時代の気流と合致した作品だと思えたからだ。それは声を出せない短いようで長い2年間の中で、ヒップホップの台頭による刺激と声明の時代からSSW系フォークの台頭による歌心への回帰がなされつつあり、そして本格的に大型フェスやライブが復活してきた2022年は歌心の回帰から繋がるようにシンガロングの時代になるのではと見ていて、そのタイミングでArctic Monkeys史上最も歌心に溢れた「The Car」のリリースというのはまさに今の時代だからこそ強烈な説得力を持つのではないだろうか。実際今年のレディング&リーズにおける2nd収録の名曲「505」におけるシンガロングは、今年の音楽シーンでもかなり美しい瞬間だと感じた。

そしてなによりもこのアルバムの凄いところは、本当の意味で完全無欠なプロダクションを誇っているところだ。大都会の屋上に佇む時代遅れのカローラという構図は、まさにすぐそばにある時代の潮流を高いところからぼんやりと眺めているバンドの立ち位置を表明しているものだ。そして再生ボタンを押すとあまりにも流麗なオーケストラが流れ、そしてハッとさせるようなジャッ!ジャッ!ジャッ!という音で真実の扉を叩く。誰もいないダンスフロアに対して彼らはミラーボールがあった方が良いと"歌"を歌うのだ。屋上から常に俯瞰して見ている彼らだからこそ言える痛快な皮肉であり、シーンに対する冷ややかな答えなのかもしれない。それを象徴する様に今作は最後までじっくりと腰を据えて聴くための曲しか入っておらず、そしてそのどれもが現実味の無くフィクションの映画を見ているかのような錯覚に陥り、そして最後に「The Perfect Scene」というあまりにも出来過ぎな大団円でエンドロールに入るのだ。

「The Car」は徹底して"歌"のアルバムであり、自分たちの強烈な哲学を貫いた作品だ。そこにはなにひとつ迷いがない自分たちの美学だけがある。その美学はリスナー=一本の映画のシナリオに華を添える背景音楽だ。生活というストーリーを彩る普遍的な音楽になるのだ。


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