見出し画像

不自然な完璧ではなく、自然体な自分へ

「完璧さは重要じゃない。よく見ると額縁が微妙に傾いていたり、織物がほころびていたりするが、そのおかげでくつろげる」

これはマシュー・ミーレー監督があるホテルについて語った言葉。

ニューヨークに「秘密の宮殿」と呼ばれる五つ星ホテルがある。ハリウッドスターや著名人が愛するこのホテルは、そこに訪れた宿泊客はかならずリピーターになるのだそうだ。ホテルの名前は「ザ・カーライル」。このホテルにはこんな逸話がある。

ダイアナ妃、マイケル・ジャクソン、そしてスティーブ・ジョブズが次々にエレベーターに乗り、エレベーター係がドアを閉める。3人とも口を聞かないまま、エレベーターはどんどん上階に昇っていく。緊張を破ってダイアナ妃がジャクソンのヒット曲「今夜はビート・イット」を口ずさみ始めた。

そんな奇跡のようなことが起こるこの場所は、いわゆるセレブが好みそうなゴージャスで完璧な内装ではない。老舗ホテルらしい、少しだけ古ぼけた居心地のよい内装がこのホテルの魅力だ。このホテルには学ぶことがたくさんあると思う。

私たちは完璧であれば完璧であるほど良いことだと思い込んでいる。だから美しくなるために、整形をしたり、無理なダイエットをしたりする。より完璧な存在になろうと、資格をたくさん取ったり、無理な労働をしたりする。

芽が出て、蕾が咲き、花が散るように、自然はつねに変化している。それは、カーライルホテルも、私たち人間も同じことだ。時間とともに建物は風化し、織物はほころびる。年齢とともにシワは増え、体は衰える。

それでも、完璧が良いものだと思い込んでいる私たちにとって、変化を受け入れるのは容易いことじゃない

そんな中、今日本にはよくない風潮がある。その風潮とは、「いまのままでいい」「ありのままでいい」というものだ。それは「変容を拒む」ということで、現状で満足をするということ。

「ありのまま」というのは、安心感のある優しい言葉でもある。だけど、それはある意味「その他の人間」と同一化するということでもある。

カーライルホテルも日々の掃除を怠れば埃がつもり、誰も宿泊しなければ忘れ去られて、潰れてしまう。そして、いずれ自然の一部へと還ってしまう。

だけどこの「ありのまま」という言葉は、完璧を求め続けて疲弊した人の心を安心させてくれる。だから、多くの人々がなんの違和感もなく受け入れているかもしれない。

ところが、現状に満足をするのと、自然体の美はまったく似て非なるもの。そこに「魅力」や「美」は皆無だ。


誰でも自分だけの「魅力」を持っていて、自分だけの「美」を持っている。前回の記事でも取り上げた世界的に有名な魅力的な女性、オードリーヘップバーンやココシャネル、ジェーン・バーキン。彼女たちは、年老いても、亡くなった今でも変わらず魅力的で美しいが、そのような魅力的な人たちに共通するのは、『常に変容をしている』ということ。

それは年を重ねてもアンチエイジングをしたり、化粧を濃くしたり、年齢を隠すために自分をつくるのではなく、年齢と共に、メイクもファッションも、今の自分に合ったものを選び、時代とともに生きるスタンスをも変えてきた。

たとえば、ジェーンは「整形をしない」と公言しており、隙歯も治療せずにチャームポイントにしている。美人になろうと、完璧でいようと、自分を作ったり、隠したり、老いに逆らったりするのではなく、彼女たちは流れと一緒に変容していく。

不自然な完璧を目指すより、老いた自分をも受け入れる自然体な姿勢。

その自然の流れに沿った生き方が、彼女たちのような魅力的な女性を生み、ザ・カーライルの魅力を生んでいるのかもしれない。どんな人も自然には敵わない。私たちもひとつの自然なのだから。


♥noteでは伝えきれない内容をLINEへお届けします。この記事を気に入ってくれた人は、以下のリンクから友達登録してください。
https://line.me/R/ti/p/%40yzy3417v




みなさんのスキやフォローが日々の励みになっています。 よりいい記事を書けるように、他の方の記事や本への投資資金にさせていただきます。 いつもありがとうございます...!