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美容師さん、パーマは好きですか?

美容師さん、パーマは好きですか?
実は苦手な方も多いかなと思うパーマは
ちょっとした理論と工夫でもっと楽しく出来るお仕事だと信じています
今日はパーマに少し苦手意識を持っている美容師さん
パーマにちょっと抵抗がある方々に読んで頂けると幸いです


パーマ全盛期の崩壊

美容師ってヘアスタリストと言われたりヘアーアーティストと言われたりもしますがちょっと昔だと「パーマ屋さん」なんて言われていました

現在美容師は「パーマ屋さん」なのかと言うと決してそうでは無いと言えます。
その証拠に現在の日本の美容室のパーマ比率は8~10%ほど
「パーマ屋さん」は10人に1人しかパーマをかけていないという事になります

何故、このような事になったのでしょうか?

バブル絶頂期、今からおよそ40年前にヒットした「ソバージュパーマ」は沢山の女性を魅了し、当時のパーマ比率は50%ほどでした
まさに「パーマ屋さん」!!!
お陰様で毎日時間さえあればクルクルクルクルパーマを巻きます
また、当時は白髪染め以外のヘアカラー需要も少なく、ダメージ対策もそこまで重要視されていませんでしたので、僕達美容師は威風堂々と、1液をジャーっとつけて、一生懸命クルクル巻いて2液をジャーっとかければ「ハイ出来上がり」って感じでハードムースを全体にたっぷりと付けてお客様に伝えます
「ハードムースは、しっかり付けないと広がるから絶対つけて下さいね」って

ハードムースは飛ぶように売れました
バブル時代ですから、2~3本のまとめ買いは普通の事で
「ソバージュ」と言う髪型は「ハードムース」と言う相棒が無いと成立しないものですからハードムースは現在の「ヘアオイル」や「ヴァーム」等の様にヘアスタイルの必需品として君臨していましたが、少しづつお客様から不満の声を頂きます。

「いつもガチガチのヘアスタイルは嫌だ」と

もう、私達これ以上髪を硬めたくない!!
硬めないといけないヘアスタイルなんて不自由だ!!
我々は自由だ!!
我々の髪はもっと自由で在るべきだ!!!

と、ソバージュに対する反逆革命がおこるのは丁度バブルがはじけた頃
日本女性は自由に自分なりのヘアスタイルを楽しむようになります

ヘアスタイルの多様化と共に僕達美容師は技術革新の必要性を迫られました

いわゆる「流行」の髪型は、「聖子ちゃんカット」から「ソバージュヘアー」へと変化し、その後はショートカットやレイヤーカットなどなど
今までのスフィンクスの様に固められたヘアスタイルとは違い「触られたい髪」を目指すようになります

これがパーマにとっての落とし穴
「ソバージュ」と言うパーマ文化を経て「傷む」「広がる」「ふける」「匂いが残る」という印象が強く残り、パーマに対する印象が随分悪くなってしまったので「パーマをしませんか?」と言う提案が随分やりにくくなりました
イタム ヒロガル フケル ニオウ

「美しくする為」のリスクヘッジ

僕達は「お客様を綺麗にして喜んでもらいたい」から美容師になっています
その上で念頭に置いている事は、お客様の悲しむ姿を見たくないし、その原因になるような仕事は出来るだけ避けたいのです

「これやったら絶対に髪の毛が傷んでしまう」と言うお仕事は出来るだけやりたくありません

ファッション全般に言える事なのですが「自分自身をどういう風に見せたいのか」っていう事が重要で「人よりも疲れて見せたい!」とか「周りよりも老けて見せたいわ」なんて要望は少ないので
ヘアスタイルにおいて最低条件なのは「髪が綺麗に見える事」なのです

ヘアカラーは現在殆どの方が様々な色を楽しんでいます
縮毛矯正技術も発展し、クセ毛で悩んでいる方々は定期的に出来るようになったおかげで、長年続いた髪質の悩みも解決されています

そこに「パーマ」は必要なのでしょうか?

僕達美容師はパーマをかけた時のリスクヘッジを考えて、ダメージがある方や、縮毛矯正をしている方、ブリーチをしているお客様にはパーマを提案しないという対策を行います

だって、お客様の悲しむ姿は出来るだけ見たくない
なので、困難な髪質のお客様がパーマをかけに来た時に

○○様の場合だとストレートとヘアカラーを繰り返し行っているので、今回パーマをかけた場合△△みたいな状態になってしまう恐れがあるので、出来ればカットとヘアカラーで現状を保つ方が絶対良いです

もしくは

数回に及ぶブリーチで髪の状態もあまり良くないので、今回はパーマをかけることが難しいかなぁ?…
良かったら髪を休ませるうえでもトリートメントとカットで、髪の状態を少しでもいい状態にした方が良い
ヘアカラーは特に問題無いから取り敢えず、カット、カラーと髪質改善トリートメントをやっておきましょう

なんて言いますが、これいつまで先延ばしにするんでしょう?
だってお客様かけたいんです!
パーマ屋さんにパーマをかけに来てるんです。

なので○○様の場合は△△の理由で希望のパーマをかけるには○○月まで待っていただく必要があります
その理由は○○○○マルマルマルマルなので
3月目標にこの髪型にしましょう!って言えるようになりたい!!

そして、イタム ヒロガル フケル ニオウの悩みを解決したい!!

僕達はパーマの理論とパーマデザインを1から見直し
パーマ後のニオイまでもコントロール出来るよう猛勉強しました

パーマ理論で学んだこと

【イタム】
パーマでイタム理由は明確です「還元剤」と「アルカリ剤」が原因になっているので、これををどのように扱うかが重要になります
【ヒロガル】
広がる理由は「ベースカット」と「セニング」と「巻き込み方」、特に巻き込み方の考え方は重要で、巻き方の角度と、巻かずに残すところの判断を工夫します
【フケル】
巻き込みの場所による工夫と全体的なデザイン力が重要です
「老ける髪型」「大人っぽい髪型」「幼く見える髪型」をコントロール出来るようになる為に輪郭や顔の見せ方を学びます
【ニオイ】
「還元剤」が毛髪に作用する時間のコントロールと、最終的な流し方が重要になります。この匂いのもとは何なのか?という事をしっかりと熟知するべきです

って答えのような答えじゃないような回答ですが
ひとつひとつ説明すると長くなって皆きっと読まないので割愛させて頂きます。

ただ、僕達美容師がやっている
「パーマ」と言う技術は思っているよりも複雑で重要な事をしているという事を知って頂きたい

これは「ヘアカラー」もそうなのですが
皮膚や目の色、歯や爪などは色を変化させる事は出来ないのに対して
髪の色はブリーチ技術の進化もあり、自由自在に変化させる事が出来るようになりました

これって細胞がもともと造っているメラニン色素を破壊しながら科学的に色を入れていく技術なんですが、大変な事をしています
皮膚だとタトゥーを入れると色も変化しますが、そもそもの肌の色は変えずに色を入れているだけなのでヘアカラーの複雑さには及びません

さて、我らがパーマは「髪」と言う細胞に対して何をしているんでしょうか?

ズバリ「薬品」の力で「細胞の形」を変えるという摩訶不思議な技術
鼻、高くしたいとか
二重になりたいとか
身長ちょっと伸ばしたいとか
そう言う事に匹敵するような魔法のような技術なのです

その事を美容師さんに良くわかって欲しいし
それらの魔法を全て操れるようになる為の「毛髪理論」と「薬液のこと」をしっかりと勉強し、かつての「ソバージュ悲劇」を繰り返さないようなパーマを出来るようになる事で僕達は魔法使いになり得るのです

魔法使いの道への第一歩

まず重要な事は「言ったことが言った通りになる」というコト

実際に行っている技術と、頭の中にある理論がきちんとリンクしないとパーマはかけれません

これは「失敗する」って言ったら失敗しないといけないし
「上手くいく」って言ったら上手くいかないといけないという
まさしく厳しいプロのお仕事なので未だ発展途上なのです

ただ、ひとつだけ美容師サイドで言い訳をさせて頂くとすれば
僕達美容師は「材料」を選べません

目の前にあるワクワクした目をしているお客様の頭の上にあるのは「髪」で
僕達はその材料を上手い事調理していかなければならないので「これでメッチャ上手いパスタ作ってください!!」ってお米を持ち寄られても出来ない事の方が多いのですが「何とかできないかな?」って考えます

この想像力がパーマ上達への第一段階

「この素材で何を作ろうか?」って事をイメージして出来るだけ要望に応える。

そして、その為に必要な情報を聞き取り、毛髪理論と照らし合わせながらデザインしていきます

「いや、この髪質じゃ無理っすよ」って本当に危ない場合は絶対に断ったほうがお客様の為になるし良いんだけど、「あれって何とか出来なかったな??」って振り返る事で色んな事も見えてきます

「髪」と言う素材を知る為に少しだけお話をすると
毛髪は4つの結合で形が成り立っています

「主鎖」と呼ばれる「ペプチド結合」
「側鎖」と呼ばれる「水素結合」「イオン結合」「シスチン結合」

この「シスチン結合」をパーマ1液に含まれる「還元剤」と言うもので切断して、カールを巻くことによって、もともとの形を変えて2液の「酸化剤」と言う成分でその形を固定するのがパーマなのですが、この他の結合も色々と勉強するとパーマと深く関わっており、そこを突き詰めていくとブリーチ毛にもパーマをかけれるようになってきます

うーん

色々と話したいんだけど今回、長くなり過ぎました
ごめんなさい
次回以降少しづつ、ひとつづつわかりやすく書いていきたいと思います

僕達は自分が信じて好きなものしか提供出来ませんし、美容師さんにパーマが好きになってもらって
世界中のお客様がパーマにもっと楽しんでくれる事を望んでいます

美容師さん、パーマは好きですか?
パーマをかけたいお客様、パーマは凄く良い技術です。

楽しんでくださいね

最後まで長文を読んで頂きありがとうございます


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