『本当に幸せな人たちの話』

 これは曹流寺の(副)住職の私から、お檀家さんへの2019年お盆のお便りです。※お檀家さんとは、その寺に属し、先祖供養をする家、布施をして寺の財政を助ける家(人)。

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目次

1 本当に幸せな人とはどんな人か 
◇お金に執着しないお檀家さん
◇シリアに3000万円寄付をした友人
◇遺産相続で揉めそうな方へ
◇紅茶屋のお檀家さん
◇学校の先生のお檀家さん
◇誰かに尽くすお檀家さん
◇愚痴や文句もいいたくなるお檀家さん

2 なぜ我が無いのが本当の幸せなのか 
◇どうやったら幸せになれるのか
◇自分の快楽のための人生はお勧めしない

3 金さえあれば、自分さえよければ 
◇そんな素晴らしい人間にはなれない
◇無我の教えを感じられたでしょうか
◇金儲けしたヤツが勝ち ?
◇すぐにできる本当の幸せの実践
◇おわりに
◇おすすめの本

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1 本当に幸せな人とはどんな人か

 お釈迦様の一番わかりにくい教えであり一番大事でもある教え「無我」。私はこの我が無いという無我の教えを、人生経験の中で体得している人が本当に幸せな人だと確信しています。今日は私が身近に無我を感じた人を紹介します。

◇お金に執着しないお檀家さん
 自分の年金や仕事で稼いだ給料を、子供にあげて、親族や友人が喜ぶために気前よく使うお檀家さんがいます。もちろんその方は自分のためにもお金を使いますが、必要以上にお金を貯めるという発想がありません。いつも自分だけではない誰かのために散財する。お金に執着する我が無い。そんな生きたお金の使い方ができるお檀家さんを私も見習いたいといつも思っています。

◇シリアに3000万円寄付をした友人
 お金に執着する我が無いという話から、父親を亡くして3000万円の遺産もらった中学の同級生を思い出しました。彼はそれをイギリス留学時代に知り合った中東の友人を介して、戦乱や貧困で苦しんでいる人のために使ってもらいたいとシリアに全額寄付をしました。彼は「そもそも俺の金じゃないしね」とすました顔をしていましたが、潔くて美しいという言葉がぴったりな瞬間でした。

◇遺産相続で揉めそうな方へ
 この5年間で曹流寺にも遺産を数百万円寄付してくれたお檀家さんが数件あります。日常的にそもそもお金は自分のものでは無い(お金に執着する我が無い)という感性を育んでおくと、遺産相続問題に直面したときのストレスが軽減されます。日頃から仏教を学び仏道を生きるよう心掛けることで、そのような心が育まれることでしょう。

◇紅茶屋のお檀家さん
 お金に縛られていない人はお金のことで悩むことも少ないので幸せです。いつもお客さんに喜んでほしいという一心で紅茶屋を営むお檀家さんがいます。このご夫婦からは、自分たちが儲けようという気持ちがあまり感じられません。良質な紅茶をお客さんに届けることを一番に考えていて、自分の都合が無い(後回し)というところに無我を感じます。そのお店は名古屋市昭和区で20年以上続くFairy Taleという紅茶専門店。今年のお盆法要は引き物にその紅茶をお配り致します。

◇学校の先生のお檀家さん
 毎年出会う子供を立派な大人になるよう教育する先生のお檀家さん。自分の人生を見ず知らずの子供に捧げているという意味で無我を感じます。

◇誰かに尽くすお檀家さん
 自分ではない何かのために尽くしている方なら、誰からでも無我を感じられます。子どもに尽くす親。旦那に尽くす妻。会社に尽くすお檀家さん。

◇愚痴や文句もいいたくなるお檀家さん
 もちろん、これらの皆さんでも思い通りにならない出来事に愚痴や文句をいいたくなるときもあるし、一切お金に執着しないわけではありません。誰でも無我夢中から、ふとした時に我に返ります。
「遺産にがっついてくる兄弟に腹が立つ」「私はこんなにあなたに尽くしているのに、あなたは何もしてくれない」「薄給でムカつく」
 これらの不満足がたまり怒りが爆発すると問題発生です。仏教的には、そういう「自分の都合」を出さずに済む、我の無い状態が本当の幸せな状態です。つまり、いつもお互いを思い合える人と過ごせれば安楽。と、言うは易く行うは難し、実際は思い通りいかないことの多い現実生活です。

2 なぜ我が無いのが本当の幸せなのか 

 私たちは幸せが好きです。自分にとって何が幸せかいつも探しています。だから人間は幸せになるために生きているともいえます。

◇どうやったら幸せになれるのか
 例えば、いい学校に合格できたら幸せ。いい会社に就職できれば幸せ。理想の相手と結婚して子を授かりマイホームが建てられたら幸せ。年収六百円以上なら幸せ。旅行にたくさんいけたら幸せ。世の中では〇〇が叶ったら幸せという考え方は一般的です。もちろんこれで幸せな人生を謳歌している人も大勢いると思いますが、仏教ではこれを本当の幸せとは考えません。

 なぜか。人は欲しいものや望んだ未来を手に入れたら達成感や満足感を感じますが、この幸せは長続きしません。何かを得て満足感を味わい、ひとしきり落ち着くと、また次の何かが欲しくなる。仏教ではこれを煩悩のひとつで貪欲といいます。生きるために必要なお金をいくら稼いでも「もういらない」とならないのと同じ。これを走っても走っても目的地に着かない、終わりがないという意味から快楽のランニングマシンとよびます。

 本当の幸せとは求めるあいだは手に入らない。幸せを求めるあいだは不幸せという仏教のやや過激な一面です。ではどんな人が本当に幸せなのか。それは先にあげた我を忘れて毎日精一杯生きている人たち。そのくらい「無我夢中」になれる何かがある人と言い替えてもいいでしょう。

◇自分の快楽のための人生はお勧めしない
 無我夢中といっても、自分の快楽だけのための無我夢中はお勧めできません。自分の幸せばかり追求すれば、おのずと我も強くなります。するとワガママになり他人とも協調できなくなり、気にくわないことも増えます。世の中には、突然キレて問題を起こす人がいますが、自分の都合が暴走した典型例です。だから自分自身に餌を与えて我を膨らませるのを仏教はお勧めしません。

 そこで無我の勧めに従うと、どういう生き方になるのか。困ってる友人がいたら助ける。好きな人を喜ばす。愛する家族のために働く。お客様の要望に応える。会社の発展に尽力する。ここで大切なのは見返りを求めない心。相手に期待しない精神。無償の愛をあげる気持ちで、自分の人生の中でかかわる相手を喜ばせる。それ自体に幸せを感じられる人が本当に幸せな人です。誰かに恩や利益を与えたとき、何の反応がなくても幸せでいられる人ともいえるでしょう。

3 金さえあれば、自分さえよければ 

◇そんな素晴らしい人間にはなれない
 そう書いている私自身、そんな人間になれるわけねえだろと自分の都合がでてきます。相変わらず、私にはそんな一心に尽くしたい相手もいないし、仕事にもそこまで全身全霊で打ち込んでいるか問われたら怪しい。お金も年収180万円で年間約100万円貯金するという守銭奴っぷり。周囲の友人はみんな結婚して、それぞれ自分の人生を何かに賭けて無我夢中で生きているのに自分は自分ばかりを大事にして年々 我が強くなり大丈夫かと不安がないわけではありません。それでも私が自信を失わず腐らずいられるのは、仏教に人生を捧げたいと思っているから。今の私の人生のテーマは、仏教が教えてくれた本当の幸せに少しずつでも自分を近づけていくことです。

 もし、そんな素晴らしい人間にはなれないと、私と同じように自分の都合がでてきた人は、仏教に頼って本当の幸せを会得する千載一遇のチャンスです。文末にチャンスを掴むための推薦図書を記載。

◇無我の教えを感じられたでしょうか
 本当の幸せは、自分は〇〇を叶えたいという自分の都合を横において、誰かや何かのために尽くす無我夢中の人生。もちろん自分の利益と他人の利益がバランスよく円満であれば良いのは当たり前の大前提として、自分の欲を満たす生き方と、価値を生みだす生き方のどちらに重点を置いて生きるのか。どちらを大切にして人生を送るかで、人間の一生が波乱万丈になるか、平穏無事になるか、180℃変わるのではないでしょうか。

◇金儲けしたヤツが勝ち ?
 毎日テレビをつければ、オレオレ詐欺をはじめとする数多の詐欺事件。トランプ大統領の自国第一主義路線のニュースやイギリスのEU離脱問題など。他人を騙してでも、他国を蹴落としてでも、金儲けしたヤツが勝ち。自分さえよければ他人なんてどうでもいいというムードが世界各地にあります。そんな空気の中で生活していると、人生を何でもかんでも損得で考えてしまいがちですが、その流れが加速すれば、世の中がギスギスして生きづらくなるのは自明です。そうと、わかっているのなら、その流れに非力でも逆らわなければいけません。

◇すぐにできる本当の幸せの実践
 自分の都合を投げ捨てて、誰かのために生きる人生は素晴らしい。これが本当の幸せ。この真理を心に留めて、あとはそれをどこまで実践できるか。見返りを求めない愛を誰かに送ることに、どこまで純粋に幸せを感じられる自分に、自分を育てていけるか。人生の醍醐味はそこを磨く修行にこそあると思います。

 その修行とは具体的に毎日の生活の中でかかわる人が喜ぶことの実践に他なりません。これがそのまま仏教の考える本当の幸せとイコール。と、こう書いても、何をすればいいのか思い浮かばない人もいるでしょう。
「今日のお話は全部キレイ事だね」「人の為と書いて偽善だもんね」
「無償の愛で喜ばせたい相手なんていないよ」
 そんな風に思った方は、過激な仏教が心に響く大チャンス。今日の話がすんなり受け止められない自分という存在を仏教ではどう考えているのか。腑に落ちる名著。漫画のようにサラリと読める軽い本なので、どうか一度お試し下さい。クリック↓するとリンクに飛びます。

◇おわりに
 今日のお話は、お檀家さんには無我の行を実践する本当に幸せな人が沢山いますという内容でした。見返りを求めずに、誰かのために何かすることに幸せを感じられる人は本当に幸せ。そういう心を育むためのお勧め本を何冊か紹介しておきます。

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★仏教を通して自分という存在を考えたい人は

1 だから仏教は面白い!/魚川祐司 (著) 初心者向け
2 仏教思想のゼロポイント:「悟り」とは何か/魚川祐司 (著) 上級者向け
3 なぜ今、仏教なのか  瞑想・マインドフルネス・悟りの科学
/ロバートライト (著) 熊谷淳子(翻訳) 上級者向け

★仏教の大事な教え「無我」や「般若心経」をしっかりと理解したい人は

4 史上最強の哲学入門 東洋の哲人たち/飲茶 (著)

★日常生活の些細なことに悩みや迷いがある人は

5 禅僧が教える 心がラクになる生き方/南直哉 (著)

★自分の抱えている悩みや問題を直接 僧侶に相談したい人は

6 プラユキ・ナラテボー師の面談 (東京・大阪 中心 不定期)がお勧め
※私生活で抱える諸問題に対する仏教的な対処法を教えてもらえます。
日程は師のツイッタ―からチェック。

★過激ではなく、やわらかく仏教に触れたい人は

7 漫画ブッダ/手塚治虫
※2500年前に生まれたブッダという人物に惚れると本当の幸せに近づく!?

★音楽で仏教に触れたい人は

8 椎名林檎/ニューアルバム「三毒史」
一曲目が般若心経をサンプリングした曲で、日本には昔から有難い教えやお経がたくさんあるのに、ひとりひとりの命に宿ってしまう煩悩に我々は打ち勝てず、三毒と呼ばれる苦しみは解決しない、その闘いを描いたそう。

★最後に(副)住職の趣味のラップを聴いてください。↓
『人生はネガティブで当たり前という彼の教え』


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遊民

坊さん / 名古屋 曹流寺 (副)住職 / 永平寺、總持寺 修行 / 元DJ / 趣味ラップ:https://www.youtube.com/user/asobumin
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