ポンコツの午後

 僕は角張った瓶からスプーンで顆粒状のコーヒーをすくい取って、大ぶりのマグカップに入れた。もう一回、こんどはスプーンに半分ほどすくって入れる。釜山のコンビニをずいぶん捜し回って見つけたインスタントコーヒーだ。砂糖入りのものや砂糖とミルクの入ったものはいくらでも手に入るのに、単なるブラックのインスタントコーヒーはなかなか見つからず、この金色のラベルが貼られた馴染みのある角張った瓶を見つけるには、それなりの苦労をしたのだった。
 その場で豆を挽いて飲まないのなら、僕は布でドリップするタイプのものよりもフリーズドライになったインスタントコーヒーのほうが好きだ。インスタントコーヒーのことを悪く言う人もいるが、これはコーヒーの偽物などではなく、インスタントコーヒーの本物なのだ。
 部屋に備え付けられている古い電気ポットから、ゴボゴボと湯の沸く音が聞こえ始めたあと、カチと硬い音がしてスイッチが切れた。沸騰すると自動的に電源が切れる仕組みになっている。
 僕はマグカップを手前に置き、ポットの持ち手を掴むとそのまま熱湯をコーヒーの瓶へ注ぎ込んだ。たぶん疲れていたのだろう。角張った瓶の中で大量のコーヒーが溶けていくものの、さすがに溶け切ることは出来なくて、何やらドロリとした状態になって底のほうへ溜まっていく。
 もちろんマグカップの中にはスプーンで一杯半の顆粒がそのまま残されていた。
「濃い目のコーヒーを作り置いたと思えばいい」僕は自分に言い聞かせるように言った。真っ黒の半液体が溜まった角瓶を見つめる。
「いちいち薄めて飲むのか?」と自分で自分に聞く。
「そう。いちいち薄めて飲むんだ」
 スーパーで売っているパックのコーヒーだと思えばいい。業務用の濃縮コーヒーだと思えばいい。この角瓶からマグカップに少量注ぎ、熱湯で適度に薄めてから温めた牛乳をたっぷり入れて飲めば、きっとそれなりに美味いだろう。
 いずれにしても僕はポンコツだ。それだけは言える。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

こんどの土日は週末!
28

あそうかも

浅生鴨です。たいていのことは苦手です。

過去あちらこちらに書いていた雑文的なもの

かつてFacebookページに公開していた文章やTwitterの投稿なども含め、これまで、いろいろなところに書いていたものを一処にまとめて欲しいと言われたので、全ては無理だろうけれども、せめて手元にあるものだけでも、ここにまとめようかなと。載せる際に若干の加筆修正をしていま...
1つ のマガジンに含まれています
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。