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小国杉の魅力〜地域とつながる家具づくり〜

小国町に移住して工房を立ち上げ、小国杉を使った家具づくりをされている當房さん。小国杉の魅力や仕事への思いをお聞きしました。

人物紹介

<話を聞いた方>

當房 こず枝(とうぼう こずえ)さん
熊本県熊本市出身。熊本市内で一度就職したものの、9年目で退職を決心。
元々好きだった家具づくりを長野県で学ぶ。その後、小国町に移住。「かける木工舎」を立ち上げ、家具の製作やワークショップの企画などを行っている。

<インタビュアー>

笹尾 理子(ささお りこ)
福岡県出身。熊本大学文学部3年生。好きな食べ物はうどんと芋。
ハロー!プロジェクトのアイドルの応援に夢中。


小国町での暮らしと仕事

笹尾小国町に移住したきっかけを教えてください。

當房さん:大学院卒業後は、熊本市内の一般企業で事務系の仕事をしていました。9年間勤めている中で、自分のライフスタイルを考え直すようになりました。「私が本当にやりたかったことってなんだったかな」と考えると、ものづくりだったんです。

昔から好きだった「木を使ったものづくり」を仕事にしたいと考えるようになりました。会社を辞めることを決心して、長野県で家具づくりを学びました。いつか熊本で独立したいと思っていたところ、小国町の工房が空くという情報を得たんです。そこが自然豊かでとても良い工房だったので、移住を決めました。

笹尾実際に小国町に住んでみてどうですか。

當房さん:移住してすぐは知り合いが1人もいなくて、すごく寂しかったです。でも、1人、2人と小国の人と出会っていくうちに、面白い人が多いことが分かりました。若い人はいないんじゃないかと思っていたんですが、意外にも私たちと同年代や私たちよりも若い世代の方も楽しく暮らしていました。今は知り合いも増えて、段々とお仕事もいただけるようになってきて、充実しています。

家と工房は、周りは1キロ先まで家がない「ポツンと一軒家」なんですが、今は「そこじゃないと住めない!」ってくらいに気に入っています。人の視線もないし、ただ自分と夫と猫2匹がいるだけ。自分たちのペースで気楽に暮らしています。空気が綺麗で、鳥や虫の鳴き声で季節の移り変わりを感じられるところも好きですね。夏は涼しくてエアコンもいりません。暑いときは近所の川に入れば快適です(笑)

笹尾小国町には元々知り合いがいなかったんですよね。どのように人と出会ったり、お仕事を見つけたりしてこられたんですか。

當房さん:特別なことはしていなくて、いただいた仕事を丁寧に誠実にやっていると、次につながっていく、ということの繰り返しだと思います。「かける木工舎」という屋号は、「色んな人やモノ、コトを掛け合わせてものづくりをしていきたい」という思いを込めて名付けました。小国町に来て、そう名付けてからは、その通りになってきていると感じます。お客さんと対話することでより良いものをつくっていくという「×(かける)」スタイルで仕事をしています。

例えば、小国町に優心さんというお蕎麦屋さんがあるんですが、そこからお盆をご注文いただいたんです。まず、私たちがつくっているものを提案すると、優心さんは「お盆のふちが斜めだとお箸が取りやすい」という意見を一言くれました。家具職人からすると、その場所に角度をつけるというのはハードルが高くて、なかなか考えないんです。それでも優心さんが言うなら、とつくってみると、機能だけでなくて、デザイン的にも良いものができたんですね。そのときは、自分たちだけで考えるよりもより良いものができたことを実感しました。かける木工舎がお客さんとの対話を大事にするスタイルで良かったと確認できた機会でした。

優心さんのおそばとお盆

小国杉の魅力

笹尾小国杉を使ったものづくりもされているんですよね。

當房さん:実は、移住してきた時は小国杉を使うつもりはなかったんです。というのも、杉は元々家具というより、建築材料向きの木で。長野での修行時代も杉を使ったことはありませんでした。

でも、ある時、小国杉を使ったワークショップの依頼が来たんです。小国の人たちは、小国杉を愛しているし、大事に思ってるんだということが伝わって、依頼を引き受けました。その時に作ったカッティングボードが、本当に良かったんです。私たちが想像する杉と違って、表情が豊か。すごく良い表情のある温かいものができて、小国杉の魅力に気付きました。手触りも無意識にずっと触ってしまうくらい良くて。小国杉は雰囲気だけでなく、木の比重的に実際に温かいんです。

それからは家具づくりに杉を取り入れることも多くなってきました。小国で暮らしていると、木を切っている人や丸太の乗った車の行き来をよく目にします。小国の山の仕事にもいろいろな役割があって、私たちはその役割の最後の方で木を家具にして、お客さんに渡しています。たくさんの人が関わっていて、全部つながっているんだなと。その流れが全部見えるのが嬉しいです。それをお客さんに伝えることができるのが、ここで家具づくりをする意味かなとも思います。

小国杉を使ったカッティングボード

地域のつながり

笹尾小国町で家具づくりをする人が増えてほしいという思いはありますか。

當房さん:そうですね。小国に限らず、地元の木を使うというのがすごく大事だと思います。日本に生えている木を使うクリエイターや家具職人、大工さんが増えてほしいという思いはあります。そして、小国はそれができる場所だなと思います。私たちが森林組合さんに助けてもらってものづくりをしているように、ここは受け入れ体制がしっかりしています。

森林組合の方々は、家具づくりをする工房が、木の良さを伝える仕事をしているということを理解してくださっているんです。一見の家具職人が丸太を買い付けるっていうのは普通はハードルが高いんですが、そこもサポートしてくれる。こんなに協力的な森林組合はなかなかないです。

小国で何十年も木に関わる人たちが小国杉の魅力を発信し続けてくれているおかげで、お仕事のチャンスが巡ってくることもあります。私たちがつくった家具に触れることで小国杉を身近に感じてもらい、また実際に使ってもらう機会が増えることで、間伐され、山がきれいになって、また新しい木が植えられます。それが、林業事業者の方々の仕事にもなります。全てがつながっているなと感じます。

笹尾:當房さんのお話からは、小国杉や家具づくりへの大きな愛が伝わり、小国町で生まれた家具をより魅力的に感じるようになりました。熊本空港やHAB@にも「かける木工舎」さんの作品があるそうなので、早速小国杉の温かさにほっこりしに行きたいと思います。自然豊かで可愛い猫ちゃんも駆け回る、素敵な工房にもいつかお伺いしたいです。貴重な機会をいただき、ありがとうございました!


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 文:笹尾 理子
編集:溝尻 亜由美
写真:田中 大也

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